インタラクティブ配信規定の認可申請における音楽著作権の取り扱いについて
2000.8.27

この8月17日にプレスリリースとして、JASRAC(社団法人日本音楽著作権協会)NMRC(ネットワーク音楽著作権連絡協議会)がインタラクティブ配信の規定に対して合意したとし、JASRACがこの規定に関して文化庁長官に認可申請したとの発表がありました。この規定は、インターネットや携帯電話等のネットワーク上の利用についての使用料を定めるもので、個人開設の無料サイトで使用するMIDIデータについても課金されるというものです。この認可が下りると、JASRACの著作権保護管理下にある楽曲に関しては、そのMIDIデータであってもサイト上の掲載やBGM利用のためには、全てJASRACに申請して月いくらかとの使用料を支払わねばならなくなります。

音楽著作権はその曲の作詞者、作曲者が有する権利です。著作権の有効期間は作詞者・作曲者が存命中は勿論ですが、没後もその後50年までは著作権保護期間となっており、欧米では戦争時の期間を考慮して更に20年が加えられます。こうなると所謂欧米のポピュラーソングについては殆どの曲、そして日本の歌謡曲についても戦後の殆どの曲は、楽曲として著作権を有しているということになります。録音物についてはその演奏者に隣接権が発生し、その録音物からのコピーやその音源自体の配信については各種の利権がからんで来ます。また自分でMIDIデータに加工している場合は、作詞者、作曲者の他にその加工者が隣接権者となります。
今回の一連の内容につきましては、下記のURL(何れもJASRACのサイト内ページ)にて確認出来ますので、ご参考までに記載しておきます。
JASRAC トップページより
「インタラクティブ配信に関する著作物使用料規定を認可申請」
http://www.jasrac.or.jp/contents/top.htm
8/17プレスリリース全文
http://www.jasrac.or.jp/contents/press0817.htm
使用料規定(認可申請分)
http://www.jasrac.or.jp/doc/ninkakitei.htm
使用料規定の解説
http://www.jasrac.or.jp/doc/reason.htm


JASRACが今回文化庁に認可申請した規定では、有料サイトと無料サイトによって課金ケースが分れていますが、無料サイトへの課金もいくつかのケースに分かれています。ここでは個人のサイト、それもMIDIデータを使用したサイトへの課金について書くことにします。個人サイトでもそのサイト内に置いたMIDIデータがダウンロード方式ストリーム方式かによって、料金形態が2つに分かれていて対応が変わって来ます。

まずストリーム方式について述べますと、これは曲の数に関係なく一律年1万円となってています。これは最近のプロバイダの傾向として、料金が月2000円位のものが多いので、年間でプロバイダ接続料の年間トータルを超えないように配慮したのだのそうです。ダウンロード方式のでは10曲あたり年1万円となっており、これは所謂MIDIサイトの場合、曲数が多いサイトになればなるほど大変な負担になります。


ただ個人のサイトにおいて、ダウンロード方式とストリーム方式の区切りをどこに置くのか、これが非常に曖昧な記述になっています。例えばBGMとしてMIDIを使用している場合は、多分ストリーム方式と解釈してよいのでしょうが、MIDI等をページ上にデータとして掲載しているサイトの場合は区分けをどうするのか。ダウンロードのリンクボタンの有無が区分けのポイントになるのか、コントロールパネルの表示自体が区分けになってしまうのか、その辺が今回の発表では読み取れません。商用サイトは商売で運営している訳ですから、ストリームとダウンロードをはっきり区分けすることは可能でしょうが、個人の無料サイトにも全く同じ区分けを摘要しようとすれば無理が生じるのは当然とも言えます。また、数曲のMIDIデータをBGMにしか使っていないサイトでは、曲数に関わらず年間1万円というのは納得できない金額でしょう。

また、個人の無料サイトといっても、広告料を得ているかどうかによって課金を変えるようなので、その点注意が必要です。例えばサイト内にバナー広告を掲載して、それへのアクセスやクリックの数に応じて多少の金額が入手できるシステムなんかがそれに当たり、その場合は、それが個人サイトであっても広告料収入があるサイトとして一般サイトとは区分けされてしまい、ダウンロード方式の場合は10曲あたり年6万円、ストリーム方式の場合は収入の3.5%あるいは月5000円のうち多い方の金額を課金するという案が現在出されているようです。

そしてJASRACは、今回の文化庁への申請が承認されればすぐにこれを公示し、来年度、つまり平成13年4月頃から実施するつもりのようです。その場合、JASRACの保護管理下にある音楽著作物を含むサイトは、その著作物の使用にあたってJASRACに申請をしなくてはならなくなります。とは言いましても、音楽著作物を含んだ日本中のサイトの申請をまとめるのですから、遅延、混雑、罵詈雑言、どのような事態になるのか想像もつきません。
 

弊サイトは所謂MIDIサイトではありませんが、サイトの色付けとしてMIDIデータを使ったりもしております。ただ元々配信はせずにBGMオンリーという使い方をしていたのは、基本的にMIDIなしでも成立するサイトであること、もう一つは今回のような著作権問題が起こったときに対応がし易いように、という考えによるものでした。ですからMIDIサイト、あるいはMIDIデータ絡みのコンテンツを持つサイトの皆さんにとって、今回の問題はサイト存続に関わる切実な問題ですが、ウチのようなサイトでは取り合えず逃げ道はありそうです。

先日JASRACに問合せしました。内容は2点。まず弊サイトのようなBGMのみでMIDIデータを使おうとしているサイトは、ダウンロード方式、ストリーム方式のどちらの規定下におかれるのか。ストリーム方式だろうとは思いましたが、明確な記述がなかったので確認のために問合せました。これについては、BGM使用であってもソースを読まれて直接ダウンロードされてしまう可能性について、またコピー防止の処理の有無などは規定上何かの影響があるのか、といったことも合せて問合せましたが、回答は「ストリーム方式です。」だけでした。


もう1点は、所謂パブリックドメインと呼ばれる曲や、JASRACの保護管理下にない(または外れた)曲に関しては、もしそのMIDIデータを使用する場合はその作者、すなわち著作隣接権者の許諾が得られれば、そうした楽曲のBGM使用については今回の課金対象範囲外にあるという解釈でよいのか。つまりJASRACの管理外の楽曲のみで、そのMIDIデータ作者の許諾を得て、データ配布ではなくBGMでの使用のみをサイト上で行なう場合、しかもそれが非営利サイトであれば、今回の発表された内容のようにJASRACへの申請も必要ないし、ましてや使用料金を取られるような対象にはならないと考えてよいんですね?という問合せをしたんですが、これについては「おっしゃるとおりです。」という1行だけでした。あっさりしたもんです。

しかし、短かろうが何だろうがこれはJASRAC(ネットワーク課)の回答です。したがって弊サイトはこれからJASRACの保護管理外の楽曲のMIDIのみをBGMとして使用致します。別に大した変身ではありませんが、近日中に整備を行い、全てのBGMを入れ替えます。元々この件に関しては、アクセス数が増えてくると思われる11月頃からは、妙な横やりを入れられないように上記のような処理を行なうつもりでした。それが早まったのと、その処理がパーマネントなものになったというだけのことです。JASRACの担当者はうちで使ってるようなBGMの曲名なんて本当に分るの?そんな「音楽好き」の人なんているの?とか基本的な疑問もありますし、今回の一連の不透明な動きに関する個人的な気持ちもありますが、それはまた別問題として、この「インタラクティブ配信の規定」に関して弊サイトは当面上記のような対応をした上で、動向を見させて頂きます。

今回の問題は、MP3の普及や「ナップスター」等のファイル交換システムの登場によって慌てふためいた、関連業界等の利権者の思惑が優先され、著作権の本質そのものとはどこかズレたものになっている印象は否めません。MIDIの問題なんかはどちらかというと後回しにされるのではないかと考えていましたが、インタラクティブ配信という名のもとに、全て強引に、しかも無理やりまとめられてしまった感があります。私自身は、自分のサイトを保護するため、今回の問題はMIDI使用という現実的な観点でのみ捉えましたが、本当はもっと議論されてしかるべき問題です。


なお、今回の問題については下記URLにて詳細レポート(順次追加あり)が掲載されています。ぜひご覧になって下さい。
音楽著作権の動向について
JASRACとのQ&A集
※本情報は「ふくちゃんのホームページ」からの発信です

また、文化庁は今回のJASRACからの申請には一般個人ユーザーの意見が含まれていないとして、9月22日まで一般個人ユーザーの意見を募集するそうです。ご意見のある方は「文化庁長官官房著作権課 著作権審議会使用料部会」宛てに、“(社)日本音楽著作権協会著作物使用料規程の一部変更認可申請に関する意見”とでもいったタイトルで意見書を、テキストファイルの添付という形でお出し下さい。詳細は下記URLを参照願います。
文化庁著作権審議会
http://www.monbu.go.jp/singi/chosaku/00000333/

サイトとは本来全く関係のないはずのページに最後までお付き合い頂きありがとうございました。本ページは基本的にサイトの主旨とは何ら関係ないものであります。問題の重要性は別としても、関係ないコンテンツを設置してサイトを澱ませるのは私の本意ではございません。一定期間の掲示以降は1、2行の簡単な記述に留め、浄化するつもりでおりますことを、予めお断り申し上げます。(from Web Master)

[ おまけ]
今回の問題とは少しずれますが、雑誌にプリンス(元・元プリンス:
祝改名)が自身のサイトで、「ナップスター」支持を表明したとの記事が載っていました。その内容は、ファイル交換システムは、商業的意図で音楽をコントロールしようとするレコード会社に対する、音楽愛好者の不満の表れである。真の音楽愛好者は優れた音楽を自分自身で発見することを好み、気に入った作品はそれをよりよく知るためにオリジナル作品を手に入れようとする。だから彼らにとってファイル交換システムは、好きな音楽を探す上での画期的なツールだというのにすぎない。音質の劣ったコピーファイルで満足するのは、レコード会社がターゲットとする“音楽消費者”だけだ、というもの。殿下、あなたが正しい。
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