餌としてのイースト菌

 

 今、サカナのための林という考えで広葉樹の植林が注目されています。落葉から出るフルボ酸が土の鉄を溶かし、フルボ酸鉄となって海に注ぎ、植物プランクトンや海草を育み、その結果カキやサカナを豊かにするという発想です。
 しかし、このフルボ酸は石灰藻やサンゴなどのカルシウム骨格形成作用を阻害してしまうのです。だからこそ石灰藻で磯焼けした温帯の海には有効なのですが、サンゴの水槽に入れるわけには行きません。
 熱帯、亜熱帯では淡水が直接注ぎ込むところにはサンゴ礁は発達せず、そこにはアマモなどの海草が繁り、ここで生まれた、プランクトンがサンゴの発達する海域に流れ込んで、栄養になるというステップを踏んでいるようです。
 また、近年の研究ではサンゴの餌は動物プランクトンよりnanoplanktonと呼ばれる植物プランクトンが主であると分かってきました。
 水槽でも植物プランクトンは発生するのですが、スキマーが付いているとほとんどそこで回収され、サンゴの口には入りません。その代用として最適なのが、大きさがそれに近く、タンパク質、リン、ビタミン、鉄を含んだドライイーストなのです。
 イースト菌は液体餌にも含まれていますが、水に触れたイーストは発生を初めてしまい、すぐに死んでしまいます。死んだ細胞はすぐに体内のリンを放出してしまいますので、液体餌は低リンを保たなければならないリーフシステムには不向きでした。
 生きた状態で売られているドライイーストは水槽にリン負荷をあまりかけずに、サンゴや貝の餌とすることができます。

 

投与方法

1) Giant Clams(Daniel Knop)では6000リットルのサンゴ、シャコガイの水槽にヘーゼルナッツ大(小スプーン一杯)ほどを隔日で与える例を紹介していました。

2) 今私が行っている方法:消灯1,2時間後、メインタンク300リットルに耳掻き1,2杯分のドライイーストを海水に溶き、スキマーとメインポンプを止め、週一回与えています。投与後、濁りが消えたらスキマーをつけ、水槽を攪拌しながらゴミと摂取されかったイーストをなるべく回収します。
 週一回としたのは、グレートバリアリーフのサンゴ礁では週に1,2回プランクトンで海水が濁るときがあると聞いたからです。一回の量が少な目なのはover feedingを恐れてです。リン酸が0.01ppm以下にコントロールされるならもう少し増やすかも知れません。
 サブタンク200リットルは4年前から餌の投与を行っていないので、これからも投与せず、メインタンクとサンゴ、シャコガイの様子を比較して行きたいと思います。

3) 妻の行っている方法:110リットルの底面上部濾過水槽で、ティースプン1/3ほど毎日やっています。この水槽はハードコーラルがおらず、ヤギなどの褐虫藻を持たない動物の餌として与えているので大量です。以前、液体餌では2ヶ月持たなかったフレームスキャロップ(ハネミノガイ Lima scbra)が、9ヶ月飼育できました。1日3回イースト投与を行えば、もっと長期飼育できるかも知れません。フレームスキャロップへ

補)SPS、シャコガイの餌としてもっとも望ましいのは、スキマーのないマングローブ水槽で増殖させた植物プランクトンを与えることだと思いますが、そこまでできない場合はドライイーストが今のところ簡便で、有効な餌だと思います。