UK(unkokasu:named by Akirin、スキマー採取物)

 スキマーで濃し取られる、物質は一体どんなものでしょうか?この事はNaturalSystemでスキマーを設置している人の共通関心事だと思います。本当は物質分析までして、水槽から取り除かれる成分の定量評価を行い、それによって、添加剤所要量を決めたいのですが、そこまでの能力はなく、単に「UK」の検鏡観察のみです。それでも、スキマーを考える一助になれば、と思い、このページとします。

 対象は1)ベルリンスキマーXL、(以後BSと略)2)ダウンドラフト、リーフデビル、(以後DDと略)、3)HSA500(以後HSAと略)ですが、BSとHSAは取れたばかりの「UK」ですが、DDの「UK」のみ遠方からの輸送後、という条件ですので、その影響があるかも知れないことをおことわりしておきます。
 
 DDの「UK」をご恵与下された、上田章夫さんに深謝申し上げます。

1)BS「UK」
Table1

 Table1のaは針状結晶とデトライタスの400倍像です。結晶はこのようにベンツ状の形をしているものが多く見られました。デトライタスは強拡大しても構造が認められず、破砕物と思われます。いぜん、「UK」をアルコールで抽出し、濾紙に吸わせたところ、はっきりしませんでしたが、対象とした植物すりつぶしアルコール抽出物と同じバンドになり、クロロフィルなどの植物色素が主と思われました。デトライタスの「茶色は」藻類色素が多く含まれていると思います。

 Table1のbは球形藻類の100倍像です。このように生きている藻類も数多く視野に認められました。スキマーで多くの浮遊性藻類を集めていると思われます。

 Table1のcは球形藻類の400倍像です。

2)DD「UK」
Table2

 Table2のaはDD「UK」のデトライタス100倍像です。デトライタスの質感はBSでもDDでも同じですが、BSでは沢山含まれていた球形藻類がほとんど認められませんでした。BSでは100倍で一視野に数個はあるのが、DDでは一視野に1/10個ほどの少なさです。bは見つけた球形藻類の400倍像

 そのかわり、DDで特徴的なのは、BSやHSAで認められなかった生きている大型動物(といっても100〜1000μm)でした。cは線虫で数視野に1匹はいて、動き回っており、ほとんどが生存していました。
 cはゾウリムシの仲間です。共に400倍です。

3)HSA「UK」
Table3

 Table3のaはデトライタスの100倍像です。黒褐色の点は全て球形藻類です。また、bのようにベンツ状結晶もBSと同じく認められました。DDで見られなかったのは結晶ですので、輸送中に溶けたのかも知れません。

 cは球形藻類の400倍像です。種々の大きさ、形があります。色が薄いのは小さい傾向があります。

 dは甲殻類ですが、死んでいます。他にも甲殻類が数匹認められましたが、DDとことなり、これら大型生物は皆死んでいました。なお、線虫類はまったく死骸もいませんでした。

 eはおそらく珪藻、fは微塵貝の殻と思われます。HSAの「UK」では生きた植物プランクトンが多く、動物プランクトンは少なく、大型のものは生物遺骸のみでした。(極く小さなゾウリムシと思われるものは生きていましたが、DDで見られたような大きなゾウリムシは存在しませんでした)


考察)
 最初にお書きしましたが、DD「UK」は長距離輸送後なので、その影響があるかも知れません。植物プランクトンが少なかったのもその性かも知れません。

 ところで、スキマーの仕組みは、界面活性作用のある物質の収集です。水という分子内に電気的偏りがある倍体と空気(酸素分子、窒素分子)という分子内に電気的偏りのない倍体の境界では空気側に疎水基、水側に親水基を向ける物質が並びます。すなわち界面活性作用のある物質が泡の表面に集まる事を利用して濃縮採取する方法です。泡同志が集まると泡の内側:空気側に疎水基、泡の境界に水を挟んで外側に親水基が並びます。泡同士が癒合して表面積が下がると、含まれる水分も減り、界面活性物質はどんどん凝集されていき最後に乾いた感じの泡となり、容器表面にこびりついたり、濃縮液体になります。

 界面活性作用のある物質はタンパク質、鹸化された脂質(ナトリウムやカルシウムと結合した脂質)などやそれに類する物質で覆われたバクテリア、微少プランクトンなどです。
 一般に、高分子ほど分子内に疎水基と親水基の両者を持つことが多くなり、界面活性作用を持ちます。このような物質が泡形成、その癒合で収集・濃縮されます。
 ビールの泡が戻った液体が、もとのビールよりずっと苦いのは、苦みをもたらすホップなどの蛋白成分が泡で濃縮されるためです。この泡による濃縮原理はベンチュリでもダウンドラフトで同じですが、泡の形成過程、及びそれに伴う泡の挙動、大きさには違いがあります。
 
 ベンチュリは水流に細かい泡が揚力で注ぎ込まれ、それがシリンダー内で上昇するエアー(泡)、下降する水流として対向流になります。この時、水に含まれる界面活性物質は泡表面に移行します。対向流であるだけ、その移行もスムーズと思われます。また、形成される泡もダウンドラフトより一般に細かくなります。BS「UK」はDDに比べて、細かい植物プランクトンを多く集めたのはこの泡の細かさによるかも知れません。細かい泡ほどより小さいものを高濃度に濃縮します。

 ダウンドラフトは全ての水が大小様々に泡沫化されます。このため水中に含まれる比較的大きな成分まで濃し取る対象になり、線虫などの1mmスケールの生きた生物まで、UKとして採集されたと思います。BSやHSAは新鮮なUKであったにもかかわらず、生きた大きな動物プランンクトンはほとんどいませんでした。

 ベンチュリは細かい物質の高濃度の濃縮、ダウンドラフトはやや大きいものも含んで大量の処理に向くスキマーというのがおおよその性格かと思います。HSAは両者の中間で調整によりBS的にもDD的にもなります。処理量はポンプを大きくすればDDなみになります。

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