Tathrella sp (シャコガイの吸血巻き貝)

写真1

写真2

写真3

最近、シラナミガイと1,2個のヒメシャコガイの外套膜の開きが悪いなぁと思っていました。
貝の縁からちょこっと伸びるくらいだったり、水平ではなく外套膜を斜め上方に伸ばしていたりしました。

ときどき、数日間、外套膜を少ししか開かないことはシャコガイに良くあるので、しばらく気にしていませんでしたが、ある日、ふと見ると殻のヒダのあいだに何かお米のような白いツブツブが見えます。
よく見ると、長さ1.5mmほどの細い巻き貝です。
これが、数個からシラナミガイには数十個ついており、ついている数にしたがってシャコガイの外套膜の開きが悪いのです。
「これは、有害生物だ!」

記憶にあった、TRA(THE REEF AQUARIUM Vol.1 p305〜)で調べてみました。
Tathrella spという巻き貝で、シャコガイの外套膜から体液を吸血してしまう貝のようです。
吸血されるので、外套膜が伸びなかったり、避けようとして斜め上方に外套膜を持ち上げていたのでしょう。

TRAによると、すぐにシャコガイを殺してしまうことはないが、2mmほどの成貝は毎日、120個入りのジェリー卵塊を2,3塊産み続け、卵は3日ほどで孵化するそうです。
大変な増殖力です。
たくさんの貝に吸血されたシャコガイは小さいものほど早く殺されてしまうようです。
(小さいシャコガイは数日、大きなものは数ヶ月)

その夜、岩ごと水槽から出せるシャコガイは岩ごとだし、そうできないものは、注意深く足糸を切り、水槽外に取り出して、歯ブラシとピンセットで、この巻き貝を(およびその近くの粘液物)を掃除しました。
徹底的にやったつもりですが、次の夜にも数個の巻き貝がシャコガイについており、三夜ほど、ゴシゴシの結果、一応成貝は見あたらなくなりました。
吸血巻き貝を取り去ると、シャコガイは以前のように、のびのびと外套膜を伸ばし始めました。

なお、TRAでは「Tathrella spは夜行性で、昼は貝の下などに潜む」ということでしたが、うちの水槽のものは、照明時は貝と付着した岩のあいだに少数、シャコガイの殻の襞の隙間には多数が隠れていました。

写真1:
ヒメシャコガイの殻、上方の襞に白い米粒のようについています。
大きさは、長さ1.5〜2mm、幅0.5〜0.7mmほどです。
卵は肉眼では見えませんが、ジェリー様物質が巻き貝の周囲にありましたのでそれかもしれません。

写真2:
その拡大図
外形はキセルガイに似ており、縦縞があります。

写真3:
低倍での顕微鏡写真。

なお、この吸血巻き貝は、シャコガイの吸血だけで、サンゴに悪影響は無いそうです。

写真4

吸血貝をブラッシングしただけでは、また、卵から孵った貝が再出現するでしょう。
やはり、この巻き貝の捕食者の水槽導入が必要と思いました。

TRAによると、Thalamita simaというカニが補食するそうですが、このカニは小さいシャコガイも食べるとのこと、これは論外。
サカナでは、Halichoeres属、Pseudocheilinus属のベラが食べてくれるそうです。
そういうわけで、写真4:ニセモチノウオ Pseudocheilinus hexataenia を水槽に導入しました。

ベラは目つきが悪いですね。
こっちを窺いながら、たまにサンゴをつついています。
ただ、つつく回数が少ないのと本気に食べようとはしていないので、サンゴが剥げるというような被害はありませんが。
しかし、ベラはケヤリムシなどは好物なので、それを入れている水槽では被害が出るかもしれません。

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