(番外編)春の里山 2000
2000年5月1日
Marine Aquariumを始める前は、私は基本的に「海より山」の人間でした。昆虫(主として蝶)を趣味として20ん年になりますので、キャリアはこちらの方がずっと長くなります。もっとも最近はサンゴにかまけて、虫はちょっと「おさぼり」気味ですが。
ゴールデンウィークのこの季節、私のふるさと盛岡へと、秋田から帰省する道中は、山々が春の花々で一斉に飾られる季節です。4月29日、30日で秋田-盛岡を往復いたしました。往路は雨もよいの天気でしたが、秋田へもどる30日はここ数日でもっとも良い天気に恵めまれ、途中で春の女神「ヒメギフチョウ」を採取し、いくつか花の写真を撮って来ましたのでこのページとします。
場所は秋田に接する岩手西部の「湯田町」湯本です。沢内村、湯田町一体は落陽広葉樹林帯で、山裾に近寄れば北東北の「里山」の景色が広がります。特に山野草の名所でなくとも、そこかしこにカタクリを初めとしたSpring
Ephemeralが咲いています。
Spring Ephemeralとは「春のはかない命」の意味で、雪解けと共に芽吹き、急いで葉を展開して光合成を行い、花は受粉して種を残し、木々が葉を茂らせ、光が林床に届かなくなると、地上部は枯れ、翌年の雪解けまで地下で永い眠りにつく、早春のみ観察できる植物を指して名付けられました。
ギフチョウやヒメギフチョウもこういう植物に一年のサイクルを合わせ、カタクリが咲く頃、サナギから羽化し、急いで子孫を残し孵った次世代は梅雨の頃はサナギになり、来春までの永い眠りにつきます。
多くの虫屋(昆虫愛好家)にとって、ギフやヒメギフチョウとカタクリなどの植物の取り合わせが、全身で春を感じる原風景となっています。
帰省帰りのほんの2時間ほどでの、しかも採集の片手間の写真ですが、皆様にも「春」を感じて頂けたら幸いです。
カタクリの花
カタクリはその花姿からも分かるようにユリ科の植物です。
天気の悪い日は花弁を閉じています。
カタクリの群落、
上でも書いたように、湯田、沢内では山裾には規模の大小はありますが、そこかしこに咲いています。
アズマイチゲ キンポウゲ科の植物で純白の花を付けます。
Spring Ephemeralは植物体に比し、大きな花を付けるのが特徴です。
キクザキイチリンソウ、同じくキンポウゲ科の植物
キンポウゲ科の植物は一見、葉も花もキク科植物に似ていますが、両者はずいぶん系統が離れた科です。
キク科は双子葉植物でもっとも進化した群であり、
キンポウゲ科は顕花植物誕生の頃の特徴を残す原始的な分類群です。
また、キンポウゲ科は有毒植物を多く含みます。
Spring Ephemeralではありませんが、同じく春を感じさせる ゼンマイの芽吹きです。
春の女神 Luehdorfia puziloi ヒメギフチョウ♂です。
今年は春が遅く、4月30日では羽化したばかりのオス5頭のみで、メスはまだ見られませんでした。