RTN(Rapid Tissue Necrosis)

 

 水槽では、いろんなトラブルや、病気に見舞われることがありますが、その中でも恐ろしい物の一つにRTNがあります。98年の6月にBタンクにこの病気が発生し、ほぼ終息するのに3ヶ月ほどかかりました。この病気につき、1ページ書きます。

 

 RTNはミドリイシ、ハマサンゴなどの小ポリプに発生する感染症です。ミドリイシの中でも、オヤユビミドリイシや、ホソエダミドリイシなどの枝の短いタイプが弱いようです。アメリカなどでは、しばしば以前より話題になっていたようです。THE REEF AQUARIUM Vol.2 Page442〜449に載っています。

 

  症状 
 
 初発症状:
 ミドリイシの日陰部分に、小さい白点が出たり引っ込んだりします。夜間に広がり、照明中は広がりにくい、あるいはもどります。光量不足の白化に似ていますが、この広がったり、引っ込んだりが異なるところです。この時点では、治療、条件によってはまだ助かる可能性があります。

 進行期:
 ストッキングが熱であぶられたように、組織に穴があき、縮まるように死んでいきます。白骨に黒い網をかぶせたようになり、数時間から二日ほどで、一つのコロニーが全滅してしまいます。
 茶色くぶよぶよになって死んでいく、Brown Jelly Diseaseとは違います。
 また、BJDは水質の悪化、サンゴへの外傷で発生し易くなりますが、RTNは良好な水質でも、成長している元気なサンゴでも突然発生します。(もちろん、水槽にはそれまで、ストロンチウム、モリブデン、ヨー素の添加はやっていたのですが)

  原因
 RTNは細菌感染症、Vibrioが疑われています。

  治療、予防
 TRAではサンゴが隔離できれば、クロラムフェニコールによる薬物用法を勧めています。日本ではクロラムフェニコールは手に入りにくくなっていますので、ニューキノロン系抗生剤が有効かも知れません。
 健常部を2,3cm犠牲にして強力なハサミで病変部を切り離し、隔離しておくのがより手早い方法と思いますが。

 TRAでは予防、初期治療には、強い光、強い水流、UVを勧めていました。しかし、90cmの水槽に450wまで照明を上げても直射面以外は防止できませんでした。水流も、吹き付けているところは出にくい程度で、あまり強く死すぎるとサンゴによっては、水流の害が出ます。殺菌灯を再設置しましたが、200リットルに16wでは予防できませんでした。

 どうも、高Redoxの酸化環境では、菌が増殖しにくいようなので、最初過マンガン酸(Redox+)の使用を考えたのですが、森川さんのアドバイス:「アメリカでは、KSMを使用している水槽ではRTNが出ない、使ってみたら」を受け、9月はじめより使用してみました。
 使用初期と、その後に一個ミドリイシをRTNで失いましたが、10月からRTNは出なくなりました。なお、使用はじめに、軽度の硝酸塩の上昇がありましたが、添加を一ヶ月続けているうちに元のレベルにもどりました。現在、300リットルの水槽に小キャップ1/4。200リットルの水槽に、小キャップ1/5を毎日入れています。

 KSMは抗菌薬ではなく、海草抽出物、ストロンチウム、モリブデンの合剤だそうです。におい以外は、プロティンスキマーの廃液に似ており、添加によって廃液量が増えます。おそらく、スキマーで濃し取られる成分の補充となって、サンゴの細菌への抵抗力を上げる結果となっていると思います。

 RTNは恐ろしい病気です。私は到着時状態が悪かったサンゴを除き、ミドリイシを初めてこの病気で失ってしまいました。

 

RTN初期症状(この時点では、条件によってはまだ助かります。このサンゴは1/4切除と照明と水流強化、KSM添加によって助かりました。)

 


進行期、このサンゴはこの日のうちに全ての共肉が下の様に縮み穴があき、死んでしまいました。