天然海水

2000年3月5日

モモさんたちの話を聞いていて、天然海水を使いたくなりました。以前より、人工海水はフッ素が少ないなど「微量元素がやはり天然にはかなわないな。」と思っていましたし。
ただ、日本海は今、波が高い、本日も2.5メートル。かといって秋田港やその付近では汚そうで汲みたくないし。

男鹿半島は日本海につきだしているので、夏は黒潮の分流、対馬海流に洗われます。また、半島の南側は八郎潟干拓湖の影響があるでしょうが、北側は大丈夫でしょう。夏に戸賀(男鹿水族館のあるところ)で海水を取ったら結構綺麗でした。

男鹿の漁協に尋ねてみました。漁港には大概海水を汲み上げているポンプがあるはずですから。しかし、漁協の海水は港内から汲み上げている事が多いので、本当の外洋海水ではありません。港内に河川水の影響がない、かつ、海流に洗われやすい男鹿の北浦漁港に電話して海水を汲ませてもらうことにしました。
 
北浦へは秋田市内から約1時間です。昨年「なまはげロード」ができてから、だいぶ早く着けるようになりました。特に冬季は訪れやすくなりました。(旧道は雪と風のワインディングロード、上り下りです。)漁港につき挨拶し、海水汲み上げ場所に案内してもらうと、構内の作業場に5cm径のホースが海水を滔々と流しながら、転がっていました。車も横付けできるし、簡単に海水を頂けます。18リットルのポリタンク八個(144リットル)に流し込みました。300リットルの農業用タンクを買った方がいいかな?

帰りは男鹿水族館にしばらくぶりで寄ってきました。淡水魚や大型海水魚はあまり変わってませんが、中・小形魚はメンバーがだいぶ替わってました。珍しいところでは、オーストラリアのオールドワイフがいました。また、ハタハタが通年飼育できるようになって、人工孵化魚が展示されてました。サンゴはキサンゴが一種とオレンジが一部残ってるイボヤギがいただけでした。好日性サンゴはなし。

男鹿水族館は今、その駐車場になっているところに新築移築する予定になっています。ここでは「自然のシステムを活かしたサンゴ水槽」を置く予定だそうです。モナコかな?ベルリンかな?
本日は水族館で職員の姿を見ました。いままで、ほとんど見かけなかったのですが。昨年はバックヤードツアーも行ったようで、だんだん、意欲的になってきたのでしょうか。

ところで、汲んできた海水ですが、夏に比べていまいちでしたが、一応使うことにしました。下に結果を示します。

 

NO3-N

PO4

KH

Ca

Mg

比重

北浦(3月)

0.11

0.03

7.5

423

1425

1.66(98.8%)

1.0237

戸賀(8月)

0.03

0.00

     

1.68(100%)

 

A水槽

0.04

0.00

7.0

412

1470

1.27(75.6%)

1.0238

B水槽

0.02

0.00

6.5

402

  

1.27(75.6%)

1.0235

クリスタルリーフ

0.13

0.01

8.5

   

1.31(78.0%)

 

RO/DI(淡水)

0.03

0.00

         

物質濃度:[ppm] 全て24℃にて測定
 (注1、比重と硝酸濃度は温度によって変わります。)
 (注2、天然海水はフッ素1.4ppmでどの海域でも一定のはずですが、この試薬は塩素と重炭酸によって影響を受けるため、誤差を生じます。%で見て下さい)
 (NO3-N、PO4、FはSMARTColorimetr吸光度法、KHはテトラ、CaはLaMotteホビー用、MgはSalifertで計りました。) 

 
A、B水槽とも今まで、クリスタルリーフを使用してきましたが、水換え用の新海水より、元の水槽の海水がNO3-N、PO4とも低値で綺麗だと言うことです。クリスタルリーフは原料が岩塩ですので(ほとんどの人工海水はそうです、一部海水を濃縮して作っているメーカーもあります)、そこに含まれる硝酸、リン酸が出てしまうのでしょう。水槽は脱窒によってNO3-Nをより低値に、吸着や沈澱によってPO4もより低値に浄化しています。すなわち3%の換水は海水が汚れたためでなく、微量元素補充の目的で行っています。

しかし、その微量元素の一つフッ素が初めから天然海水に比べて低いのです。全ての微量元素を計ることはできませんが、他にも人工海水は高品位とうたっていても天然海水に比べて、過不足があるかも知れません。これが天然海水を使用しようと思った理由です。

また、RO/DIでもNO3-Nは全て取り除いてはいません。(もう一度別の機会に測定すると0.02ppmでした)

あと、うちの比重計で24℃で1.023の後半台は淡水の混じってない(河川水の影響のない)海水のようです。これは他のところの海水でも確かめました。
戸賀、北浦共に近くに川はありませんが、比重から見ても大丈夫のようです。
河川水が混じっていると、NO3-N、PO4、SiO2が大量に含まれている可能性がありますので、比重の低い水はサンゴの水槽用には使用しない方が安全でしょう。

夏に戸賀の海水を計ったとき、NO3-N:0.03ppm、PO4:0.00ppmと結構綺麗だったので、これは天然海水を使えるぞ、と思ったのですが、北浦は漁港ということもありNO3-N:0.11ppm、PO4:0.03ppmちょっと汚れているようです。でもNO3-NはRO/DIで溶いた人工海水より低値なので、問題ないでしょう。水槽内で脱窒してくれるはずですし。ただ、リンの方はちょっと気になります。それほどの値では無いですが、リン酸吸着剤を使用した方がいいかも知れません。

では、なんで、綺麗な戸賀の海水を使わないか?
ここは、今の時期は近寄るのが命がけなのです。外洋から波がザブーンと押し寄せ、岩に砕けています。良くてずぶ濡れ、もたもたしていると波に持っていかれます。
妻の父、先代の時のことですが、レントゲン技師が冬の海釣りで、ここの海にさらわれて亡くなっています。

戸賀の海を見ながらの夫婦の会話:
私:「まあ、保険にも入ってるし、それが下りれば借金も払えるから、戸賀で海水を汲もうか」
妻:「海で死ぬと、(遺体が)上がって来るまで保険が下りないから駄目」

とこで、天然海水の使用結果。
24℃に暖めた海水を18リットル分入れてみました。
「ミドリイシ君、ハナヤサイさんどうですか?」
入れて二日後ですが、あまり変わりありません。いつもモジャモジャポリプは同じ程度モジャモジャだし、あまり出さないサンゴが出すようになったわけでもありません。6%換えたくらいではあんまり効果無いかな?
これから毎週、18リットル入れてみて、しばらく様子を見てみようと思います。

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