フッ素(Fluorine)

 1999年6月25〜28日の石垣島旅行の時、TheReefAquariumの著者、Delbeekさんの講演がありました。この時、「ハナガササンゴ:Gonioporaは水質の良い水槽でもうまく維持できないサンゴとして有名だが、スウェーデンの研究者の報告ではフッ素の問題らしい」とのお話がありました。

 このお話を聞きそっそく、フッ素測定薬を取り寄せましたが、ようやく最近になって入手できましたので、測定知見をお知らせします。

 なお、フッ素の自然界の濃度は1.4ppmで比重が大きく異なる海水でないかぎり、どこの海でも値に大差はありません。また、今回入手したフッ素測定薬は鋭敏ですが、塩素イオンで大きい値、重炭酸イオンで小さい値に誤差を生じます。海水にはどちらも高濃度で含まれていますので、天然海水のフッ素を計り、表示誤差を見極めようと思いました。
 男鹿半島の川の流れ込みのないところで採取した海水を計りましたところ、F:1.68ppmでした(cf 比重:1.0229 25℃)。およそ20%ほど高く表示されます。このページの海水データは補正前の生データで書きますのでご注意下さい。
 また、人工海水を溶いたばかり溶け残りの炭酸塩が少量舞っている状態ですと、不自然に低い値になります。それで、サンゴに吸収される前の人工海水のフッ素値として、サンゴを入れていない隔離水槽の海水でそれを代表させました。

結果

F:ppm

比重

男鹿海水(天然海水)

1.68

1.0229

A水槽(2ヶ月前全量換水)

1.27

1.0234

B水槽(2ヶ月前全量換水)

1.27

1.0231

C水槽(5ヶ月前全量換水)

1.12

1.0230

隔離水槽(吸収前の人工海水)

1.31

1.0234

 A水槽はミドリイシ主体でハナガササンゴはいません。B水槽はハナガサ1個(Mサイズ)、アワサンゴ1個(Mサイズ)がいます。
 B水槽ではフッ素を極少量含んだ、薬品を使用しましたが、海水中の100分の1以下です。ただし、念のため解析対象からは外しました。

1)全量換水より2ヶ月:1.31→1.27ppm:0.02ppm/M減
2)全量換水より5ヶ月:1.31→1.12ppm:0.038ppm/M減

平均:0.026ppm/M減(1.98%減)

結論
1)およそ月当たり2%のフッ素が失われる(吸収される)
2)人工海水(リーフクリスタル)は元々天然海水の78.0%しかフッ素を含んでいない。

参考
 フッ素を微量に含む歯科で使われるフッ素ジェルをB水槽のハナガササンゴ、アワサンゴの共肉で覆われていない、底の部分に塗ってみました。水槽全体には影響のない量です。元々状態は悪くないサンゴでしたが、気のせいかややポリプの伸びが良くなった気がします。

考案
1)一例であるが、人工海水にはフッ素の低いものがある。もしフッ素が測定可能であれば、大量換水時、フッ化ナトリウム等で補正した方がよいかも知れない。
2)サンゴに吸収される2パーセント/Mは初期に充分量フッ素が含まれていれば、持続投与しなければならない値では無いと考えられる。

 なお、フッ素は水槽に加え過ぎたら、取り除くことはできません。また、天然海水の2倍になってしまうとサンゴへのフッ素過剰症による害が生じる危険があります。
 また、フッ化ナトリウムは酸とまざると強い腐食性(ガラスさえ溶かし、肌に触れると内部の組織まで壊してしまう)のあるフッ酸が生じます。フッ化ナトリウムは化学的知識、設備のある人のみの使用が勧められます。

 過剰症の心配、薬品としての危険性がない点でフッ素ジェルが今のところ勧められます。ただし、濃度と使用量の事前チェック(計算)は必要です。フッ素ジェルの主成分は水とキシリトールなどの糖分で、これは水槽内で分解されます。
(いうまでもないことと思いますが、フッ素が入っているからといって、「フッ素入り歯磨き」などはご使用なされないよう)

もどる