失策

 1999年10月28日(木) 早朝、「水槽が濁って、30℃超えているよ!!!」の声で飛び起きました。いつもは低血圧のため、正気を取り戻すのにしばらくかかるのですが、ただならぬ声にすぐ飛んでいきました。サブタンク(B水槽:200リットル)が白濁し、すでにミドリイシの一つが溶けています。水面からは腐敗臭も感じられます。しばらく、茫然自失。クーラーは冷却中のグリーンのランプが点灯していますが、作動していません。揺すると動きますが、10秒ほどで止まってしまいます。「クーラーの故障か?」

 予備のクーラーとの交換と全量換水が必要と判断しました。300リットルのたらいを持ち出し、2台のROで水作り。あわせると今の季節なら30リットル/hrで貯水できるので、夕方には200リットルは確保できるでしょう。その後、駄目になったミドリイシを取り出しましたが、クーラー交換までは時間が無く、後ろ髪を引かれる思いで仕事へ。メインタンク、その他は異常なし。

 昼にクーラーをチェックすると、なんとセンサーが空中に出ていました。「思いっきり失策」です。サンプ(Plenum)の深めに固定していたのですが、どうしてこうなったかは、不明。海水でコードが堅くなり、何かにコードの途中が押されたとき、先が跳ねたのでしょうか?センサーを戻すとクーラーは正常に作動。「クーラー君、疑ってごめん。私のドジでした。」

 水温はこの時、31℃。他のサンゴも思いっきり具合悪そうに縮んでいます。その上、ほんの数時間で藍藻が発生しています。砂に点々と暗赤色の小さいパッチが出現しています。
 「何という増殖速度だ。藍藻はやはり原核生物で、条件次第ではVibrioなみの増殖速度を示すのだ。」

 大量換水には塩が足りないのに気づきました。昼休みの時間を使って塩を買いに走る。お店のリーフクリスタルを分けてもらい、夜の換水に備えました。100リットルほど貯まったたらいにヒーターを投げ込み、午後の仕事へ。

 夕方、仕事を終えると早速海水づくり。比重をあわせ、温度チェック。夕食時間に新海水を攪拌。今まで30分〜1時間の攪拌で全量換水したことが過去何度もありますが、問題ありませんでした。700リットル用のクーラーが昼から正常に作動したので200リットル水槽の水温も24℃の通常値に戻っています。
 
 サンゴが一つ溶けたぐらいにしては、白濁と臭いがひどい。サンゴを傷害させるバクテリアの大発生になったようです。水抜き前にチェックすると、あと、3つのミドリイシと2つのLPSが変色しかかり、おそらく駄目のようです。溶け出す前に取り出しました。サカナとシャコガイは元気で、貝は外套膜を広げています。藍藻のパッチは昼よりはっきりと大きくなっています。

 後かたづけも入れて、3時間で換水終了。Plenumの止水層以外の水は全て交換しました。翌日、それでも少し濁っています。溶けたサンゴによる濁りなら全量換水の次の日には完全に透明になるはずですので、これは基質から離れたバクテリアの水中での増殖がまだ治まっていないためと思われます。スキマーにオゾン添加をしたりして、二日後にようやく透明化しました。

 妻曰く、「軟弱な水槽ね、私の水槽は夏に30℃になってもなんともないわよ。」
ううう、日頃、富栄養化と高水温にならされた、ディスクやスターポリプと一緒にしないでおくれ。

 冗談はさておき、NaturalSystemは従来濾過より、高水温での水槽崩壊の危険が高いようです。従来型水槽ではゆっくり30℃まで上がっても、高温に弱いサンゴは別として、水槽自体が白濁するなどといいうことはありませんが、NaturalSystemでは水槽全体の不調、最悪のケース、崩壊が高水温だけで起こり得るようです。従来濾過は強制通水があるので、そこの細かい生物マットに水中細菌類は引っかかって取り除かれるでしょうが、NaturalSystemは好気のみの濾過を嫌うためこれを設置しないシステムですから。

 自然界でも、29℃を超えるとVibrioなどの細菌類が急激な増殖を初め、サンゴの白化現象を促進することがあるようです。また、藍藻などを初めとした有害藻類のbloomも高水温で起こり易いようです。

 私の情けないドジのお話でしたが、みなさまには他山の石となれば。

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