ディープ・ナビゲーション

  9月5日(日)晴、波無し(男鹿水族館パスキーポイント)
 Advanced Open Water Diverのコースに取り組んでみることにしました。これからもそれほど深く潜ったり、ハードなダイビングをするつもりはありませんが、「安全は研修で経験した範囲内でのダイビング」という鉄則にはAOWぐらいはやっておいた方がよいかなと言う考えです。本日はAOWのコアダイブ(必修ダイブ)のディープ・ダイビングとアンダーウォーター・ナビゲーションです。

一本目ディープ・ダイビング

 教えて下さるインストラクターは畠山さんです。本日もマンツーマンです。本日は天候の良い日曜日、たくさんのダイバーが予約していましたが、Passkeyでは重要なダイブはマンツーマンかそれに近い形で指導してくれます。これは何よりありがたいことです。

 今日のダイブは20メートル以深へ潜って3桁のかけ算と深度確認をしてくる、というだけですが、ここのポイントから20メートル以深までが結構あるのです。片道25分かかります。帰りは深度を上げていくマルティプル・ダイビングになります。長距離でディープという事で、いつもより大きめのタンクとなりました。(これが後で苦労する原因の一つになるとはこの時は知らず)

 またスーツですが、しばらく身軽なウェットでしたが、ディープですので、気温29℃にもかかわらず、ドライで、ということになりました。しばらくぶりのドライで手首、首のバンドを忘れてきました。首が細いため、オーダーメイドのスーツでもスーツに水が入りやすのですが、バンド無しでは案の定、後で完全水没という羽目になりました。
 ウェイトですが、春、Cカードを取ったときはドライスーツは10kgでした。計算表では私の体重では9キロ弱から11キロです。春よりは少ないウェイトで潜れるだろうし、着ているものも薄いので、まず8kgにしました。これでも潜れると言うことで6kgにしてみたら、さすがにドライで6kgは無理、どんなに息を吐いても水面にプカリプカリ、7kgとなりました。7kgでも完全に息を吐かないと潜れないのですが、いつまでもオーバーウェイトでもあるまいと7kgで頑張ってみることにしました。

 最深部まで行き、かけ算。これは陸上と同タイム。深度をチェックして、ここのポイント目印の碇を確認するまでは問題なし。スーツはこの時点で完全水没していますが、海水が結構暖かいので冷えはありません。ここから、徐々に浅くして帰っていきます。

 16メートルになると、浮力を感じ、ドライスーツを排気させました。10メートルになると相当強い浮力です。タンクが大きい分、残圧が少なくなった時の重さの変化も大きいのです。春のCカードの時なら、このまま、「足から緊急浮上」という事態ですが、今はAOWチャレンジ中、少し下まで泳いで行き、身体を垂直にして残っている脚の空気を肩から抜こうとしましたが、抜けません。パンツまで水没したので、下半身の空気が締め付けたウェイトベルトとスーツ内の水で腰のところでブロックされて上半身にこれないのです。私のスーツは肩からしかエアーを抜けません。この抜けないエアーと最後までご一緒するしか無くなりました。
 キックを上に向けて行い、キック力で深度を保つしか無くなりました。5メートルではまた一段と強い浮力、畠山さんがまた、1kgウェイトを追加してくれましたが、まだ浮力が強い。キックの力を上に向けて9割、推力に1割といった感じで、頑張りました。最後の10分は全力キック状態。最後にフロートにたどり着き、ロープに掴まりました。しかし、逆立ちキックをしているのにフロートを止めてあるおもりまで持ち上げて、浮上。ブロックされた空気の膨張浮力はものすごい。でも、深度5メートルになってしばらく頑張ったので、安全停止時間は充分クリアー。でも、へとへと。

 教訓:忘れ物は後で忘れがたい思い出を作ってくれる。

 

 二本目、アンダーウォーター・ナビゲーション

 自然物を目標にするナチュラルナビゲーション、磁石と距離でオリエンテーションするコンパスナビゲーションです。後者は向きと大きさ、いわゆるベクトルです。

  ベクトルの話で横道:
 以前、Yさんという方と話していて、方向音痴の話になりました。長野県出身のYさんは地元時代、道に迷ったことがなかったそうですが、東京では友人に方向音痴扱いを受けて憤慨したとのことです。私もそうです、昆虫採集で、山へ行って道に迷ったことなど無く、長距離ドライブなどでは、他の人と意見が異なれば、ほとんど私のオリエンテーションの方が正確でした。なのに、私も他の人より、東京では駄目でした。よく、車で妻に馬鹿にされたものです。
 Yさんと私の共通点は、山がすぐそばにある盆地出身だということです。私は、盛岡出身ですが、盛岡は北北西に岩手山望み(最近はビルで見えなくなってしまったようですが)、北が高く、南に向かってゆっくりと標高が下がります。また。東西は北上川が流れる中心部が低く、東西の市外に向かって上り坂となります。こういう地形で育った人間は、町を歩いていると常に、東西南北、どちらに向かって自分が進んでいるか、もう無意識のうちに身体が理解しているのです。これに、時間なり、距離数を組み合わせれば位置が分かります。すなわち、ベクトルができているのです。
 関東平野は日本で最も広い平野です。また、近距離は別として、坂の上下で方向を割り出せはしません。東京に住む人に(もちろん迷子の人でなく)、任意の地点で「北はどっち?」と聞いてもほとんど答えられないでしょう。東京ではベクトルではなく、「何々ビル(駅)からどう行く」というナチュラル(?)ナビゲーションなのです。東京生まれの方には理解できないでしょうが、ベクトル人間にとって、「東西南北が分からない」という事態は潜在的方向音痴にはまりかけた状態なのです。
 秋田は雄物川河口に開けたところで、盛岡に比べればずっと平坦な地形です。秋田に住む限り、秋田出身の妻(これは、完全に非ベクトル人間)に方向音痴扱いを受け続ける運命です。あああ・・・

  もひとつ横道:
 「飛んで火に入る夏の虫」という言葉がありますが、あれも虫が「ベクトル虫」なためです。夜中に長距離を飛ぼうとすれば、一番良いのは月や星の光を目印にすることです。とは言っても、虫が常に月に向かって飛んでいるのではありません。月などの非常に遠い光源に対し、一定の角度を保ちながら飛行すれば、直線飛行できます。これは地球の北磁極に対して一定の角度をとるコンパスナビゲーションと同じようなベクトルオリエンテーションです。
 虫がこのベクトル法を採用したとき、人工の光などという地上の光は無かったのです。光に対し、90度より小さい角度で虫が方向を定めると、もし、この光源が遠くの月でなく、人が灯す近くの電灯や火だったら、虫は直線ではなく、螺旋を描いてだんだん光源に近づいてしまい、最後には火に飛び込む事態になってしまうのです。燈火でも火でもこれに近づく虫はほとんど、灯りの周りをぐるぐる回って逃れられないのをみなさんご覧になった事があるでしょう。彼等は熱いその場を一直線に飛び出していこうとベクトルナビゲーションして一所懸命飛んでいるのです。

 本題に戻り、ダイビングの話。ナチュラルナビゲーション、往復コンパスナビゲーションは問題なくOK。次は四角形コンパスナビゲーションです。30メートルすすみ、90度角度を変え、また、30メートル、これを繰り返して、出発点に戻ってくるのです。
 まず、コンパスを見ながら30メートル(キック数で計る)・・・岩にぶつかる。それも乗り越えや迂回できない岩の壁、仕方なく誤差方向を頭に描きながら、岩添いに進み、誤差補正をして、また90度位置変更。復路の2方向は浅瀬、迂回が連続し、誤差拡大。この結果出発地点から離れてしまいました。2回目も同様。どうも最初の30メートル計測がおかしいようです。30メートルキック数を数えたとき、込み合う水路でしたので、キック数が多くなったようです。四角形ナビのすいた水面で勢い込んでキックしたら、ワンキックでずっと進んでしまったようです。インストラクターの畠山さんに、「30メートルをずっと通り越していましたよ」と言われる。キック数を補正して、3度目のトライ、今度はドンピシャ、四角を回るとフロートのロープが目の前にありました。本日は透明度が悪く、3メートル先が見にくい状態でしたが。
 二本目も全水没、着替えをダイビング数分持ってきて正解。

 ディープ、ナビゲーションとも自分の招いたトラブルで少々手こずりましたが、どうにかクリアー。始終そばで励まして下さった、畠山さん、ありがとうございました。

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