石垣島ダイビングツアー

 1999年6月25日〜28日

 水野さん主宰のreef MLのメンバーを中心に石垣OFF(課外活動)をする事になりました。石垣島でのダイビング、阿出川さんのC.P.Farm見学、それに加えてAquaristの聖書:THE REEF AQUARIUMの著者Delbeekさんの講演まで催されることになりました。 Visitorだけで日本、アメリカから28名参加という、大イベントです。ダイビングをしない人や家族連れには、磯遊び、フーカー(送気ホースでの海中散歩)などを阿出川さんがお世話下さるという至れり尽くせりです。
 私は、このためにCカードを取得したのです。ついに念願の自然状態でのミドリイシを初めとするサンゴ達にお目にかかれます。遊びのためには初めて休診しました.
(いや、私には診察室のAquariumを通じて、「海の生き物のすばらしさを伝導するつとめがある」なんちゃって)。
 

6月25日(金)雨(東京)晴れ(沖縄)

 24日出発の先発隊はその日の午後からもう石垣島でダイビングを開始しているようです。私は25日金曜日に秋田→羽田→石垣と1日がかりで到着です。羽田で、福島からの根本さん、東京からのにゃん太さんと携帯をトランシーバーにして合流。根本さんとは写真をメールでやり取りしていましたが、初対面です。(今回、メールでよく話していても、MLのメンバーの方とは全て初対面となります。「始めまして」といったらよいのか「いつもお世話なってます」と言ったらよいのやら)

 羽田までの1人旅と違って、石垣まではAquarist同士、話も弾みます。九州を離れ、梅雨前線を抜けると空と海が一気に夏、それも亜熱帯の光です。島が見える度、機内放送の案内があります。われわれAquarist3人ももちろん盛り上がりますが、機の反対側のおばさま連には負けます。よい景色がこちら側だとドットこちらにやって来ます。これで飛行機がより傾いて窓の下に島々が大きく見えます。ウソですよ。でも、このおばさま連がもう少し大人数なら機長も機の体勢立て直しに苦労したかも知れません。
 石垣島上空に至るとそのままは着陸せず、西表島を回って観光飛行をしてくれました。この時期、機内の乗客は8割以上は観光客のようなので、その人達へのサービスでしょう。


 石垣空港に着くとすぐ阿出川さんが迎えに来てくれました。覚悟はしていたけれど、タラップを降りたら空気がむっと暑い。体温調節の設定を変えねば。(秋田で経験した今年の最高気温は27℃)
 全日空ホテルに着き、部屋の窓を開けるとそこは「トロピカルリゾート」。写真ではおなじみの風景ですが、自分が立つとやっぱり感動。リーフが「水色だ」

 積雲が下面を揃えて並んでいるのが、いかにも南の国です。これが発達して頭上にかかるとスコールになるのだなあ。

 荷を降ろすとすぐ、水野さんの部屋へ、もうみなさん前日からのダイビングとお酒で赤い顔です。私も早速駆けつけ三杯。冷たい白ワインが喉に心地よい。
 イシザキさんが撮ったデジカメの映像を見せてもらう。おお、青いミドリイシがある。その上、真っ青なハマサンゴがあるではないですか!!!(あとでコモンサンゴということに) これらに明日、海の中でご対面できるのです。
 このあとは、全員そろって大宴会。ヤシガニもでてきました。「中たる」という噂は知っていますが、酔っていたので食べてしまいました。味は毛ガニやハナサキガニよりもっと濃厚。 

6月26日(土)晴れ(途中でスコール)

 石垣ダイビングスクールのガイドにて午前1本目は御神碕灯台下ポイント、午後二本目は名蔵ポイント。私は今までCカード取得の時に潜った4本だけ、石垣ダイビングスクールのオーナー中本さんが直接ついてくれました。

 午前の御神碕灯台下が私にとって初のトロピカルシーンとなりました。確かに白化サンゴが多く、半分以上か?でも、それより水槽以外で始めてみる自然界のサンゴに会えたことに感動。黒地に金緑色のポリプを散らしたムカシサンゴ、薄黄色のハナヤサイサンゴ、枝状のスギノキミドリイシもあります。意外だったのはミドリイシよりハナヤサイが強く、接点ではミドリイシが白くなって負けていました。ハナヤサイは成長も早く、他のサンゴが年一回しか産卵しないのに毎月産卵するという話で、その上にミドリイシよりも喧嘩に強いということになります。それなのに、ミドリイシより小さい群体しかないのは死に易いためとか。太く短く生きるのがハナヤサイの種としての宿命でしょうか。r戦略ですね。
 そのほかには、ピンクのトゲサンゴ、蛍光イエローのフトトゲサンゴ、日陰にはヒドロ虫類のムラサキサンゴモドキがいます。ここのサンゴはみんな小さく10cm〜30cmくらいまで。水槽サイズです。(持って帰ってはいけない、いけない)
 20メートルごとにブルーのスギノキミドリイシがあります。また、昨日写真で見てた真っ青なハマサンゴ(ほんとはコモンサンゴ)にもお目にかかれました。あれほど憧れたブルーが目の前にあります。

 ただ、この日はスクイズに悩まされました。2.3m深度を深くする度に前頭部に針で刺されるような痛みがあります。耳なら耳抜きですが、前頭洞への連絡管が狭いのでしょう、耳管を開いても、痛みは取れません。鼓膜にかかる圧に気を付けながら、強めの耳抜きを繰り返すと数分でスクイズは和らぎました。アレルギー性鼻炎があるので、これはこれからダイビングの度に悩ませられるかも知れません。耳鼻科のDrに相談したら、ダイビング前は使っていけないことになっているが「カテコラミンの点鼻(商品名:トーク)をしたら」ということでした。

 2本目は名蔵ポイントです。デバスズメダイの1cm未満の子供が手のひら大のミドリイシに沢山群れていて、人が近づくと一斉にサンゴに隠れます。このサイズのデバなら、水槽でこのシーンを再現できるでしょうが、1,2ヶ月もすればデカデバに成長してしまうので諦めた方がよいのでしょう。デバスズメの幼魚は成魚とちがい、上部はより青く、腹面は白のツートンカラーです。とってもかわいい。ミドリイシは枝状になるスギノキミドリイシが多く目立ちました。
 名蔵のポイントでは大きなコモンシコロサンゴの群体があるところに中本さんに案内してもらいました。直径15メートルはあります。ほぼ球形なのでその存在迫力に圧倒されます。その中央部には巾50cmほどの亀裂がありまっ二つになっています。地震でできた割れ目だそうです。八重山は地震の多いところで、歴史時代に入っても、白保地区は津波のため、2回大きな被害にあっているそうです。(ダイビング中に地震にあったらどうしたらよいのでしょう?沖合ならよいでしょうが、岸からのエントリーのとき、とにかく早く陸に上がって避難した方がよいのか、それとも沖の方にいった方がよいのか、どちらなんでしょう?)

 この日は、ナイトダイビングも計画されましたが、まだほんの初心者の私は遠慮しました。そのかわり、阿出川さんが蝶のメッカ、バンナにつれていってくれました。水野さん、根本さんも付き合ってくれました。
 バンナにつくともう日は傾き、蝶道には日が届かなくなっていましたのでアゲハ類はいませんでした。(蝶も飛ぶルートを作るのです。たいてい人が通る道と同じ道を利用し、日陰と日向が混じる高度を飛びます。蝶は変温動物なので、日陰、日向を飛ぶ時間割合で体温制御を行っているのです)
 採れたのはキチョウ、リュウキュウヒメジャノメ、スジグロカバマダラなど日陰でも飛ぶ蝶でした。でも、東北ではお目にかかれない蝶を見るのはやはり感動物です。そのうえ、時間帯からして諦めていたツマベニチョウを帰り道、車の中から水野さんと阿出川さんが見つけてくれました。この蝶にしてはゆっくりと飛翔しており、難なくネットできました。藪に入ろうとしていたので眠りにつくところだったのでしょうか?これはいかにも熱帯の蝶、自分でネットするのはもちろん初めてです。
 なお、石垣島にはアサヒナキマダラセセリという天然記念物が於茂登岳にいます。この蝶は、他の蝶とは異なり沖縄で唯一の北方系の蝶です。氷河時代にここまで南下し、沖縄で最も高い於茂登岳にのみ遺存的に残ったのです。ただ、このアサヒナキマダラセセリという名前は石垣島で聞いたら、誰も知りませんでした。そんなもんかな。

6月27日(日)(晴れ)

 本日のダイビングポイントは午前1本目が黒島、午後の2本目が竹富(ヨスジフエダイポイント)です。「潜るんです」を買ったのですが、これは水深5メートルまでとの事。これを聞いた根本さんが自分のハウジングを貸してくれました。これで、初めて海中写真を撮れます。根本さん有り難う。ただ、できた写真は私の腕の性でほとんどピンぼけ、光量不足でした。
 黒島は今回唯一視野に白化で死滅したサンゴが無い場所がありました。また、竹富:ヨスジポイントではその名の通りヨスジフエダイの群にも会えましたが、他に80cmほどのヘラヤガラ、ソメワケヤッコ、50cmほどの大物のサザナミヤッコなどにもお目通りがかないました。
 27日の水中写真、我ながらヘタクソですが見てください。



Acropora cytherea
?たぶんハナバチミドリイシ

Acropora formosa ほんとは青いスギノキミドリイシ、光量不足で紫っぽくなってしまった。その上ピンぼけ。
結構青いミドリイシがありましたが、うちの水槽にいたものほど鮮やかに真っ青なのはなかった。


Seriatopora hystrix ピンクのトゲサンゴ これはこんな色のピンク。トゲサンゴ、フトトゲサンゴなどは他のサンゴの間で、あまり水流が当たらないところにいました。


カクレクマノミのご夫婦、カクレ君はおとなしいが、10cmほどもあるハマクマノミはガツンと水中に響く音を立ててマスクにアタックをかけてきます。話には聞いていましたが、クマノミ一族は気が荒い。

サイケデリックなヤシャベラの夫婦とスミツキトノサマダイ

 
 ダイビングのあとはDelbeekさんの講演です。聖書TRAの著者ですから、MarineAquaristにとっては神様です。通訳は水野さんがしてくれました。質面倒な私の質問を丁寧に伝えて下さってありがとうございます。

 Delbeekさんのお話は、1998年の白化現象と中心とした環境問題のあと、Aquariumの話に移りました。みんなの注目を集めたのはRefugiumの話でした。捕食者であるサカナを入れず、プランクトンを湧かせた避難所(Refuge)を作り、そこで増えた分のプランクトンを本水槽に戻して、ハナダイなどの餌にするというシステムです(いわば元本を魚に食われないようにして、増えた利子分だけを魚の餌に回すということ)。
 Refugiumでは動物プランクトンの餌はクロレラなどの植物ナノプランクトンですから、スキマーなどは付けず、酸欠にならない程度の水流とライブロック、ライブサンドで作り、マングローブなどを植えたりするという形です。
 私も去年バケツで試みたのですが、藻のbloomのコントロールが難しいです。ナノプランクトンでも動物プランクトンでも減少したら補食率・流出率が下がり、増加したら上がるシステムを組み込まないと制御が難しいと思います。
 淡水版ですが、アクアリウム研究会の村上先生が非常にシンプルな形のミジンコと金魚二重水槽で水換え無しのRefugiumをお作りになっています。ここでは藻のbloomの制御に成功しています。

 あと、Goniopora(ハナガササンゴ)はNaturalSystemでも飼育が難しいサンゴとされていますが、これは「フッ素」不足が原因だということでした。ただ、どんな形で、どのくらいフッ素を入れればよいかまだ不明だそうです。

 アルミニウムについて質問しました。「アルミは神経毒として有名で、かつ、全く人体に必要が無い元素なのに、どうしてサンゴ骨格には沢山含まれているのでしょうか?何かサンゴは特別な生理的アルミ欲求があるのでしょうか?」とお聞きしたら、「骨格に含まれているからといって必要とは限らない」というお答えでした。

 そのほかに「カルシウムとKH補充に2液添加法があるが、これではNaClの増加はない」というDelbeekさんのお話がありましたが、使っている人は必ず水槽比重の止めどない上昇に見舞われること、CaCl2、NaHCO3の形以外ではこの両者を安定的にかつ、多量に溶け込ませるのは不可能なので、このお話は納得できませんでした。

 Delbeekさんの講演のあとは阿出川さんのC.P.Farm見学となりました。さすがにデモ水槽はとても美しい水槽でした。ソフトコーラルが状態良く華やかに茂り、アマモも海で見たように自然にランナーを伸ばしていました。驚いたことにプランクトン食のコーラルや貝も状態良く飼育されていました。スキマーの水を全て捨てず、上澄みは水槽に戻すのがこの秘訣かも知れません。

上:水野さん 左Delbeekさん、右私


阿出川さんと

C.P.Farmのストック水槽を見るアキリンさん

 
C.P.Farm見学のあとはロシアンパブ、Delbeekさんは大きい胸の人がお好き 

6月28日(月)晴れ(石垣)雨(東京)

 楽しかった石垣島にも今日でお別れ。石垣に最も遅くついたのに、最も早く旅立たねばならない。ちょっと遊び足りない気分です。

帰りの石垣空港で

 石垣空港でおみやげの追加を買い、途中寄港のの八重山でもおみやげ追加。1人石垣で遊んだ身には、この間忙しく働いているであろう妻とスタッフの顔が目に浮かぶ。
 東京に着くと夏から梅雨に逆戻り、32℃の石垣から22℃の羽田は肌寒いほどです。ああ、石垣の日ざしが恋しい(滞在中は日光過敏の私は、日焼けしないように日陰に隠れていましたが)

 今回の石垣OFFをお世話いただいた、阿出川さん、C.P.Farmのみなさん、ブルーハーバーの和田さん、面倒な話を通訳して下さった水野さん、また新しい知識を授けてくれたDelbeekさん、一緒に遊んでくれたMLのみなさん、ありがとうございます。

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