病気?藻のBlooming

 2月はじめ、300リットルのAタンクで、サンゴをむしり食べるようになったアズファー幼魚を取り出さなければならない羽目になりました。やむを得ず3,4年ぶりにライブロックを全て取りだし、アズファーを捕獲後、岩組をし直しました。数年分のデトリタスが舞ったのですが、この時は緊急事態だったために全量換水は出来ず、ネットで大きなゴミを掬った後は沈殿を待って岩を入れました。後から考えれば、これが水槽の不調の始まりだったと思います。

 その後、それまでも少量、出たり消えたりしていた、半透明のスポンジ状のコケが常時出るようになりました。初めの2,3週はそれも目立たず、サンゴにも異常なかったのですが、やがて、このコケが茶色味を増し、徐々に増えてくると、サンゴの色合いが幾分か褪めたようになりました。3月6日にCaReaktorを設置し、それが軌道に乗りKHが上昇(6→8)してくると、このコケのBloomingが始まりました。水槽のあちこちに飛び火し、そこで1日で成長が分かるほどの増殖速度を示し、光合成の酸素を沢山付け、一部鼻水状の気泡粘液が出てきました。(スポンジ状・半透明→トロロコンブ様・薄茶色→鼻水状・気泡発生)

 この増殖と共に形態が変わったコケは、鼻水状であるところなど、形態はDinos(Dinoflagellates)にそっくりですが、それを貝が食べても魚がつまんでも何ともないという点が異なっています。自由生活をする褐虫藻に詳しくないので何とも言えませんが、Dinosの仲間かも知れませんし、ただスライム状で光合成が活発なため似ているだけかも知れません。
 水槽における害ですが、今述べたように、魚、貝には無害でサンゴもLPSは全く被害ありません。SPSはミドリイシ、ショウガサンゴ、ハナヤサイサンゴに大きな被害が出て、ハマサンゴにも少々影響があるようです。

 サンゴの被害は多彩です。以下、列記します。

1)SPSの共肉退縮が同時多発的に起こりました。特に枝状で共肉の薄い枝状のミドリイシとハナヤサイがひどく、ほぼAタンクでは全滅です。輸送時に剥げたとところが復活し、元気にポリプが出てピンクになりかけたハナヤサイ数個が、一斉にポリプを引っ込め、茶色に戻り、枝先、根本の両方から剥げだしました。直接このコケに覆われていないところでも、共肉退縮が起こりましたので、何らかのSPS感受性毒素を、このコケは産生しているのではないかと疑っています。

2)しばらくぶりでBJD(Brown Jelly Disease)が2件発生しました。おそらく、組織傷害部から進入されたと思います。

3)残ったミドリイシも、褪めた色になったり、コケに接するところで共肉退縮が起こっています。

4)ソフトコーラルではスターポリプのみが被害を受けています。部分的にポリプを引っ込め、やがてその部分はこのコケが覆ってきます。その周囲もやがてコケに覆われていきます。
 しかし、ウミアザミなど他のソフトコーラルは全く変化ありません。

 なお、水質の変化はKHを除き、ありません。CaReaktorをつけた2週間で6→8で極ゆっくり上げていきました。参考までにライブロックをいじる前とコケの繁殖がひどくなってからの水質検査を出しておきます。

前) 硝酸体窒素:0.03ppm リン酸:0.00ppm pH(日曜最終値):8.5 Ca:650ppm KH6
後) 硝酸体窒素:0.05ppm リン酸:0.00ppm pH(日曜最終値):8.3 Ca:600ppm KH8(CaReaktor設置2週間)

 また、200リットルのB水槽は、同じRO水、添加剤、塩を使い、換水量比率(週あたりAは10リットル、Bは7リットル)も同じですが、A水槽でBloomingしたコケは見あたらず、今まで通り水色ミドリイシ、ピンクハナヤサイが成長しています。

 陸上の生物ですが、同じ条件の島(緯度、大陸の属島か海洋島か、など)では、その面積とそこに棲む生物の種類数に、面積が10倍になると種類数は2倍になるという関係があります。面積が100倍の島なら4倍の種類の生物がいることが期待されます。 面積が広ければ、Niche(生態的地位)の数も増え、生物の多様性が高くなるというという理由でしょう。
 水槽は、海に比べれば、いわば極く小さな島のようなものでしょう。最初、自然界の海からやってきたライブロックに付着して、種々のバクテリアをはじめとした生物が水槽に持ち込まれても、時間が経つにつれ、だんだんと生物相が単純化してしまうことは、いかにNatural Systemといっても限られた空間しかない水槽では避けられないことかも知れません。
 それでも、水槽を大きくいじらなければ、それなりに安定していた水槽内生物相でしょうが、そこに大きな攪乱があり、その後ひとつの生物に有利な条件が加えられると、単純化した水槽生態系では、その生物の暴発的増殖が生じることがあると思います。
 私のAタンクに起こった、コケのBloomingはこのような理由ではないかと考えています。(ライブロックをしばらくぶりに動かし、デトリタスを舞わせ、その後にCaReaktorを設置したという状況)

 水質が安定しており、サンゴの状態も良いからと油断していました。今のところは照明を落とし、Ca Reaktorを一時止め、藻類のBloomingが収まるのを待つしかないようです。ただ、幸いにもDinosと異なり、貝はこのコケをよく食べ、貝に異常は生じないようなので、シッタカなどの増員をしようと思っています。
 かわいそうなのは、A水槽のサンゴ達です。「色を上げ、増殖させて、Aquarium育ちのサンゴを」とまで考えていたのですが、私の甘さから多くを失いました。(落下塔や壁に這っていたミドリイシも運命を共にしました)。
 この経験を生かし、落ち着いたら、ライブロックを数カ月ごとに、少量交換するなども考えなければならないと思っています。

 

 増殖を始め、茶色になってスライム化したところです。

 スライム化、鼻水状になり、気泡が糸を引いてアドバルーンのように上がっています。

 このタイプのミドリイシは比較的強く、このコケが接しているところのみが少々共肉退縮するだけです。

 ハナヤサイも被害の大きいSPSです。コケが近くになくとも共肉退縮していきます。

 ソフトコーラルではスターポリプのみが被害を受け、ポリプを引っ込めやがてコケに覆われていきます。

 もどる