モンシロチョウ Pieris(Artogeia) rapae

2001年9月24日 秋田県大潟村 アキタバイオミックエリア(生態系公園)

ヒメアカタテハを撮ったのと同じ場所、同じ日です。
モンシロチョウはオープンランド、明るく開けた草原的環境を好みます。
また、食草もキャベツ、ハクサイ、アブラナ、ダイコンといった栽培アブラナ科植物です。
このような性質、また、世界中に分布する個体の研究より、モンシロチョウは「史前帰化昆虫」ではないかと言われています。
史前帰化昆虫とは、まだ文字で歴史が記されるより以前に人間の活動に伴って日本にやってきた昆虫という意味です。

おそらく、モンシロチョウの祖先はアブラナ科植物が野生植物から「野菜」として人間に栽培されるようになった中近東にいたものと思われます。
そこから、西へはヨーロッパ(歴史時代になってアメリカへも)、東は日本まで、野菜とともに人類につれてこられたのでしょう。
(もちろん、野菜害虫のモンシロチョウは人類の意図とは無関係につれてこられたはず)

西回りの亜種と、東回りの亜種は形態にも性質にも分化が認められます。
西のモンシロチョウの幼虫はキャベツの中心に向かって潜り込んでいきます。
それに対し、日本の幼虫は表面を食べてから、徐々に中心部に向かいます。
キャベツなど球状になる野菜はアジアでは最近になって栽培されるようになってものです。
それまでは、ダイコンやアブラナなど、葉を展開するのがアジアのアブラナ科野菜だったので、このような東西での幼虫の摂食法に違いを生んだのでしょう。

ところで、最近は都会の中心部でみるシロチョウはモンシロチョウではなく、スジグロシロチョウという、やや大型で名前の通り支脈に黒い筋が目立つ蝶がほとんどです。
モンシロチョウは畑作地帯など上で述べた「オープンランド」を好みますが、木々が茂った林や森は好みません。
林や森は、日本在来種のスジグロシロチョウが分布して、ハタザオやタネツケバナ、イヌガラシ、ワサビなど日本在来の植物を食べています。
都会ではビルが高層化するにしたがい、日陰が増え、オープンランドよりは「森林のような薄暗い」環境になったため、モンシロチョウが撤退しスジグロシロチョウが都会に進出できた、と考えられています。

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