ヒメアカタテハ Cyhthia cardui

2001年9月24日 秋田県大潟村 アキタバイオミックエリア(生態系公園)

良い日差しに誘われて、大潟村に行って来ました。
ここにある生態系公園は、秋田の6つの植物群落を再現した公園で、回遊形式になっています。
温室も併設されています。

温室の周囲の植え込みに、ヒメアカタテハ、イチモンジセセリなどが訪花していました。
ヒメアカタテハはタテハには珍しく、樹液より花を好みます。

また、ヒメアカタテハは世界中の温帯に分布する汎世界種です。
昆虫にしては随分と広い生息範囲ですが、もっと驚くのはスウェーデンから日本まで同一原名亜種とされていることです。
ふつう、広い分布を示す昆虫は、地域ごとに亜種に分かれていますが、この種はヨーロッパの個体も日本の個体も地域変異というものがありません。
これは、この種がとんでもなく移動性が強いことによるのでしょう。
実はこのチョウは決まった越冬体を持たず、北ヨーロッパや北日本では夏・秋に普通種なのに冬が来ると全て寒さで死滅してしまいます。
日本では南関東以南でのみ越冬でき、春になると、旺盛な繁殖力と移動性で、北に多数の個体を送り込むのです。
いわば、「蝶の死滅回遊」です。

北に来た個体は気の毒ですが、死滅回遊を送り出す種は、種としては栄えている種です。
栄えているからこそ、新天地開拓の個体を送り出せるし、地誌的な長い時間をみれば、こういう新天地開拓の能力を持った種が次の時代へ続く種です。
北へ向かう個体は、いつの日か、北が生息に適した気候になったとき、そこを新たな種の生息域とするでしょう。

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