血液検査

 ここで述べる正常値、検査の意味は一般的なものです。種々の検査は測定ごとに数十動くもの、小数点以下の変化で病的意味を強めるもの、組み合わせで解釈が変わるものなどさまざまです。また、施設によって正常値が変わることがあります。実際の検査値については、かかりつけ医の指導に従って下さい。

 当院では一般血液検査の結果伝票をお渡しします。慢性疾患の方はこれを御自身でも保存しておき、自分の病気の経過をご理解する一助にして下さい。検査内容は解説しますが、遠慮なくご質問もして下さい。また、他院受診の際、持って行かれればそちらでも参考になるかと思います。

A)血球検査

検査名

読み方

正常値

意味

Hb

血色素量

男14.0〜18.0g/dl
女12.0〜16.0g/dl

血液の濃さを示します。
低下は各種貧血です。

RBC

赤血球数

男400〜610万/μl
女380〜530万/μl

1mm立方あたりの赤血球の数です。
呼吸器や、心臓の病気で増えることがあります。
また、貧血でも赤血球数は低下しない事があります。

Ht

ヘマトクリット

男40.0〜54.0%
女36.0〜47.0%

血液中の赤血球の占めるパーセントです。
RBCが下がらず、Ht,Hbが下がる場合は、
鉄欠乏性貧血が最も疑われます。

PLT

血小板

25.8万/μl

血管外に出た血液を固まらせる血球です。
出血や、血液疾患、肝硬変などで下がることがあります。
また、増加する血液疾患もあります。

WBC

白血球

3500〜9500/μl

外敵と戦う血球です。体内に炎症があると増加してきます。
いくつかのグループに分けられ、それぞれ専門の敵と戦います。
時に、血液疾患で増減することがあります。

 

B)血液蛋白

検査名

読み方

正常値

意味

TP

総蛋白

6.4〜8.0g/dl

血液には色々なタンパク質が含まれていますが、
これらはその総量です。多発性骨髄腫や慢性疾患で上昇する事があります。

ALB

アルブミン

58.1〜70.5%

血液に最も多く含まれている蛋白は、浸透圧(水を引っ張る力)を決めているアルブミンです。
腎臓病、肝硬変などでアルブミンが減ると浮腫(むくみ)が生じたり、
おなかに水がたまったりします。

 

C)腎関連

検査名

読み方

正常値

意味

BUN

尿素窒素

9.0〜24.0mg/dl

体を構成するタンパク質が代謝されて、腎から排泄される形になったものです。
蛋白摂取の増加や体の蛋白の崩壊で増え、
また腎機能が低下すると上昇してきます。

Cr

クレアチニン

男0.7〜1.4mg/dl
女0.6〜1.2mg/dl

筋肉を作るタンパク質が代謝されて、腎から排泄される形になったものです。
筋肉量の多い男性は女性より元々高く、
また腎機能が低下しても上昇してきます。

UA

尿酸

男2.0〜7.0mg/dl
女2.0〜6.0mg/dl

細胞の核酸が代謝されて生じます、やはり腎臓から排泄されます。
代謝障害で高度に上昇することがありますが、一般には、アルコールで腎からの排泄を抑制され、
肉類の食べ過ぎで尿酸が過剰に生産されて高値となります。
通風発作が有名ですが、痛みのない腎への沈着や動脈硬化の促進は時に命に関わることがあります。

 

D)電解質

検査名

読み方

正常値

意味

Na

ナトリウム

136〜149mEq/l

脱水、急速なナトリウム含有輸液で上昇することがあります。
SIADHというホルモン異常や利尿薬、大量の下痢、嘔吐で低下することがあります。

カリウム

3.7〜5.0mEq/l

細胞内に多く含まれますので、外傷など細胞が壊れたときや、腎障害で排泄が低下したとき上昇します。
下痢や大量の発汗、ステロイドの投与、カリウム排泄性の利尿薬で低下することがあります。

Ca

カルシウム

8.6〜10.4mg/dl

悪性腫瘍で高度に上昇することがあります。副甲状腺腫で軽度に上昇することがあります。
副甲状腺ホルモンは、カルシウムの吸収を促進し、骨から血中へカルシウムを溶け出させ、
カルシウムを上げようとするホルモンです。
ビタミンD欠乏で低下し、過換気では一時的にイオン化カルシウムが下がり、筋のひきつりを起こします。

リン

2.6〜4.6mg/dl

腎障害で、排泄が低下すると上昇します。
副甲状腺機能亢進症やビタミンD欠乏症で、低下します。

 

E)鉄

検査名

読み方

正常値

意味

Fe

男68〜139μg/dl
女58〜120μg/dl

女性の貧血の場合は鉄血欠乏性貧血が最も多い貧血です。
子宮筋腫、消化管出血などでも下がることがあります。
男性の鉄欠乏場合は、特に胃潰瘍、大腸腫瘍が疑われます。
アルコールなどで上昇し、高すぎると心筋梗塞の危険因子になります。

TIBC

総鉄結合能

251〜437μg/dl

血液中で鉄を運ぶタンパク質です。

UIBC

不飽和鉄結合能

TIBC−Fe

鉄が減ると増え、鉄が増加すると減少します。

 

F)脂質

検査名

読み方

正常値

意味

T-CH

総コレステロール

130〜220mg/dl

粥状動脈硬化を引き起こす危険因子です。
肥満、糖尿病、また太っていなくても体質によっては高値となります。
最近、痴呆の危険因子とも疑われています。

HDL-CH

HDLコレステロール

41mg/dl以上

俗に善玉コレステロールといいコレステロールを回収してくる働きがありますが、
アルコールで上昇した場合、100以上の場合などは良い面ばかりではないようです。

LDL-CH

LDLコレステロール

70〜140mg/dl

悪玉コレステロールといわれているものです。
虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)では120mg/dl以下に、
高血圧、糖尿病など他に生活習慣病を持っているひとは140mg/dl以下に、
危険因子のない人でも、160以mg/dl以下にコントロールする必要があります。

TG

中性脂肪

42〜150mg/dl

中性脂肪も虚血性心疾患の危険因子とみなされるようになりました。
また、1000mg/dl以上では、急性膵炎を起こす危険があります。

 

G)肝関連

検査名

読み方

正常値

意味

T-Bil

総ビリルビン

0.2〜0.8mg/dl

黄疸の色素です。血液のヘモグロビンは、肝で処理され、胆汁として排泄されますが、
その経路で傷害があるとビリルビンが上昇してきます。
病気で無くても体質的に、正常より常に高い方もいます。

D-Bil

包合型ビリルビン

0〜0.3mg/dl

肝疾患や、胆道の閉鎖で上がってきます。

I-Bil

非包合型ビリルビン

0〜0.6mg/dl

溶血(赤血球が壊れること)などで上昇します。

LDH

エルディーエイチ

125〜266 IU/l

全ての細胞に含まれています。5つのサブグループ(アイソザイム)に分けられます。
肝:5>>4、心筋:1>2、骨格筋:4,5、赤血球:1,2,3、腎:1,2、肺:3>2,、
白血病:2>3、子宮癌:5,前立腺癌:5などの形で上昇します。

γ-GTP

ガンマジーティピー

50 IU/l以下

肝疾患、胆管閉鎖で上昇します。
他の肝臓データに比べ、これが特に高いときは、アルコールによる肝疾患が考えられます。

AST

エーエスティ

12〜36 IU/l

肝、心筋、筋に含まれています。AST>ALTで上昇するのは、劇症肝炎、早期急性肝炎、
自己免疫性肝炎、肝硬変、肝癌、うっ血肝、アルコール性肝障害、心筋梗塞
骨格筋疾患、溶血性疾患などです。

ALT

エーエルティ

8〜36 IU/l

ASTより肝臓特異的です。ALT>ASTで上がるのは、急性肝炎、慢性肝炎、脂肪肝
甲状腺疾患などです。

CHE

コリンエステラーゼ

3.68〜7.52 IU/l

肝臓での蛋白合成の指標です。
脂肪肝、糖尿病、高脂血症、ネフローゼ症候群、甲状腺機能亢進症などで上昇し、
劇症肝炎、肝硬変、急性肝炎、慢性肝炎、消耗疾患、有機リン中毒などで低下します。

ALP

アルカリフォスファターゼ

83〜217 IU/l

肝疾患では薬剤性、アルコール性肝障害や胆汁うっ滞でAST、ALTに比べより上昇します。
サブグループ(アイソザイム)に分けられます。肝疾患:1(5,6)、肝、胆道疾患:2、骨:3、
胎盤、癌:4、小腸(特に血液型O,Bで):5、潰瘍性大腸炎:6などが上昇します。

LAP

ラップ

34〜63 IU/l

胆道疾患や、妊娠後期で上昇します。

 

H)筋酵素

検査名

読み方

正常値

意味

CK(CPK)

シーケイ(シーピーケイ)

男34〜157 IU/l
女29〜119 IU/l

筋、中枢神経疾患で上昇します。CKーMBは心筋梗塞で上昇します。
心筋梗塞関連の血液検査は他に、白血球、ミオグロビン、ミオシン軽鎖、
トロポニンT、LDHなどがあります。

 

I)膵疾患

検査名

読み方

正常値

意味

AMY

アミラーゼ

25〜137 IU/l

唾液腺型アミラーゼは耳下腺炎などで、膵型アミラーゼは、膵炎などで上昇します。
他に、膵関連検査には、リパーゼ、エラスターゼJ、PSTIなどがあります。

 

J)糖尿病関連

検査名

読み方

正常値

意味

HbAIC

ヘモグロビンアーワンシー

4.3〜5.8%

過去2ヶ月間の血糖コントロールを最も良く反映します。
5.8%以下なら良好なコントロール。7.0%を越えると糖尿病合併症の進行。
8.0%を越えると合併症の進展が促進されます。

FBS

空腹時血糖

110mg/dl以下

血糖値は、食事によって大きく変動します。
糖尿コントロールとしては、空腹時血糖が120mg/dl以下、食後血糖が、
160mg/dl以下が良好なコントロールの目安です。

GTT

糖負荷試験

1時間値160mg/dl以下
2時間値120mg/dl以下

空腹時、140mg/dl以上、2時間値200mg/dlを越えると糖尿病パターンです。
これと正常値の中間は、境界型です。