アズファーとAiptasia

 以前、Aiptasia退治に、チェルモン(Chelmon rostratus)を水槽に入れてみたことがありました。この時は3匹中1匹のみがAiptasiaを食べるようになりましたが、その後、ハナガタサンゴなどむしるようになり、引き上げました。

 再び、懲りずにまたサカナによるAiptasiaコントロールを試みました。
 アズファー(Pomacanthus azufur)の幼魚(2.5cm)を98年11月28日に水槽に投入しました。幼魚にしたのは、もし、サンゴに手を出しても被害が最小限に食い止められるのではないかという希望的観測によってです。

 最初の1週間は岩をつついていましたが、はっきり何を食べるているかということは観察されませんでした。

 その後、先住者のキイロハギの後をついていくようになりました。ハギ類は攻撃的な個体がいるので心配しましたが、このちびアズファーはいじめらずにすんだようです。

 ハギはご存じのように草食の魚で水槽のコケを食べていました。その口元をじっと見ていたちびヤッコは、ハギが立ち去った後、そのつついていたところをまねしてつつくようになりました。やがて、ちびヤッコはもっぱらコケのみを食べる草食魚となって、金魚のように植物繊維の糞をたなびかせてキイロハギの後をくっついて泳ぐようになりました。水槽投入後1ヶ月くらいのことです。ここまではAiptasiaを2,3度つつくことがあっても継続的には食べませんでした。

 水槽に入れて、2ヶ月近くになると人工餌を与えていなかったのですが、少し成長してきました(3cm弱)。この時期になると、キイロハギの後を追いかけるのを止め、再び岩をつつき出し、ついにAiptasiaを食べるようになりました。ちびヤッコだけあって、大、中のAiptasiaには手(口)を出しませんが、ライブロックの小さいくぼみやマメスナギンチャクの間にびっしりと生えていた、ちびAiptasiaはほとんど目立たなくなりました。つでに、白いカイメンなども食べていました。

 ここですめば良かったのですが、やはりサンゴに手を出しました。水槽投入後2ヶ月を過ぎた頃です。藻も少なくなり、小さいAiptasiaが無くなると、大きいものには取りかからず、コハナガタの一つをむしるようになりました。
 ヤッコはなわばりを持つ雑食性の定棲魚、学習によって何を食物とするか学んで行くようです。サンゴとの同居はよほど大きい水槽でないと破壊者にいつか変貌する可能性があるようです。ただ、その好みは小さいホヤ、藻類、柔らかいイソギンチャク、LPS、SPSの順で、この途中で止められれば、藻とAiptasiaの良いコントローラーになるでしょう。
 しかし、うちのちびアズファーもこれ以上サンゴに被害を広げるなら、取り出す算段をしなければならなくなりました。

P.S.このページを書いているうちに、ついにちびアズファーはハナヤサイサンゴを食物として学習してしまいました。もうサンゴとの共存は不可能です。釣り針にもかかりません。やむを得ず300リットルのたらいに海水を作って水槽のライブロックを全て取り出し、ちびヤッコを捕獲しました。前回ライブロックを組んだのは3年前です。総量100kgの岩組は、これ以外にはないという形でしたので、みなさんもご経験なさるように、夜の1時までかかっても再現は不能でした。
 チェルモンでも失敗したのに、懲りずにやってしまった代償は夜中の重労働と分断されたスターポリプでした。