私がまだ独身のころ職場にいたのを連れて帰ったのがふーちゃん。黒と白の斑模様の猫でした。男の子です。灰谷健次郎さんの「太陽の子」に出てくるふうちゃんの名前をもらいました。結婚するまでの5年間一緒に暮らしました。

自転車のかごに入れて連れて帰り、借家で私とふーちゃんの生活が始まりました。
自由に出入りできるようにいつも換気扇のとなりを開けていて好きなときに戻ってくるふーと私の勝手気ままな生活でした。

ふーはよく風邪をひきました。それによくケンカもするらしく怪我が絶えませんでした。

近所の人に「おたくの猫が子どもを産んだ」と苦情を聞いたこともあります。だけどふーが男の子です。きっとパパになったんでしょうね。子猫をひきいて歩いていたんでしょう。

それに近所の家にかってにあがりこんで縁側でお昼寝したり、庭の置物を壊したりといたずらばかりしていました。

今思えばふーは猫エイズか何かに感染していたのかもしれません。よく風邪をひくなぁと思っていたけどいつからかそれが治らなくなって、いつも目やにと鼻水が出ていて、それに怪我をしたらいつまでも治りませんでした。戻ってきたらくしゃみばかりして、私のこたつ布団はふーの鼻水と怪我の治らない傷口から出る膿でいつも汚れていました。病院につれていってもいっこうによくなりませんでした。

ある日口の中をのぞいて腫瘍があるのに気づきました。すぐに病院に連れて行き手術をしてもらいました。一晩病院で過ごし連れて帰ってきました。

けれどふーはそれからも元気でした。あいかわらずくしゃみは絶えないけれど、もう私の中ではそれが当たり前になっていました。

そして結婚するために住まいを変えることになりました。一番の気がかりはふーでした。いつも外に出ているふーの室内飼いは無理だろうし、知らない土地で生きていけるか心配で。

だけどそのまま残しておくことはできず一緒に連れて行きました。

一日目からふーはどこかに行ってしまいました。あちこち捜してみましたが見つからず前の住みかを捜しに行ったんだろうか・・・・とあきらめかけていたときふーを見つけました。

ふーは美容院の玄関先でエサをもらっていました。近寄り「ふーちゃん」と呼びかけると「ニャー」となき甘えた声は出すけれどもついてはきませんでした。

やさしくしてくれる人を見つけ、ふーなりに生きていることがわかり、時々その美容院の近くで姿を見るだけでもホッとしました。

そうしていつしかその姿を見ることもなくなりました。

もう一度猫を飼うことになって猫の病気をいろいろと調べている時にハッと思ったのです。ふーは猫エイズかなにかに感染していたのかもしれないと。症状がよく似ていました。

どこかで静かに息をひきとったのかもしれません。
幸せだったかな・・・ふうちゃん・・・・。
ふうちゃんのこと