原題:Ukulele Stylings #1
1996年に8人のウクレレ奏者が競演したウクレレ・ソロCD「ウクレレ・スタイルVOL.1」がラッツパック・レコードから発売されました。ハワイのパアアニ・レコードからの輸入盤で、その後パアアニからは続編が出ていますが、日本にはまだ紹介されておりません。以下データとライナー・ノートをご紹介いたします。
ケリー・デ・リマ:
「カペナ」という3人組のバンドのリーダーでウクレレとリード・ボーカルを担当しています。トロイ・フェルナンデス:
アーニイ・クルス・ジュニアとデュオ「カアウ・クレイター・ボーイズ」を組み、ハワイのレコード大賞であるナー・ホク・ハノハノ・アウォードの大賞を94,95年と獲得するかたわら、今年は「パロロ」というトリオ・グループのリーダーとしても活躍しています。アンディ・セクストン:
1980年代にハワイで流行したジャワイアンを演奏する5人組のグループ「シンプリシティー」のリーダーでウクレレ、ギター、サックスそしてボーカルを担当。このアルバムには彼のほかバンド・メンバーで弟のジョン・セクストンやベースのマイク・シーダも加わっています。サニーD:
オアフ島で高級な手工ウクレレをつくるかたわら、自分でも演奏するユニークな人物。このアルバムでもトロイをはじめ、たくさんの奏者が彼のウクレレで演奏しています。モー・キアレ:
本職は指圧の先生で、若いころは浜辺でウクレレを弾いているビーチ・ボーイだったという説もあります。ハーブ・オオタ・ジュニア:
オータ・サンの長男。このCDに録音した演奏が今年(1996年)のナー・ホクのインストルメンタル部門にノミネートされた実力者です。もちろんお父さんの方は今までに4回も大賞を受賞していますが・・・。ピーター・ムーン:
以前カジメロ兄弟とトリオ・グループ「サンデイ・マノア」を組んでい ましたが、現在はギャビィ・パヒヌイの息子達と「ピーター・ムーン・バンド」を組んでいます。ダニエル・バドゥリア:
1970年代に活躍したウクレレ奏者ドン・バドゥリアの息子か弟と思われますが残念ながら資料がなく確認できませんでした。ジェリー・バード:
最後にスチール・ギターを弾いている人物ジェリー・バードを紹介しましょう。彼は1920年オハイオ州生まれで、ナッシュビルやシンシナティで活躍していたカントリー音楽のスチール・ギター奏者でした。彼はカントリー音楽への貢献を讃えられ「ホール・オブ・フェーム」つまり音楽の殿堂入りを果たしたのですが、ハワイアン音楽にも魅せられ、ついに家族を残してハワイに移住してしまったのです。彼の甘く、しかも華麗なスチールはたちまちハワイでも歓迎され、なんとハワイ音楽における「ホール・オブ・フェーム」まで授与されました。
今年亡くなったスチール・ギターの名手バーニイ・アイザックス・ジュニアの父親でたくさんの名曲を残しているアルヴィン・カレオラニ・アイザックスの作品を5人で賑やかに演奏しています。(実際にはケリーとジェリーが2度録音されているので7人ぶんの音が聞こえます。)
前者はマーチ王スーザの、そして後者はハワイにフラを復 活させたカラカウア王の作曲になるもの。トロイはスーザのオリジナルのメロディーをハワイ風に?変えて演奏しています。
この美しいフラ・ソングをアンディがスラック・キィ・ギター風に弾き、ジェリーがスチールでバッキングをしています。
マカハ・サンズ・オブ・ニイハウからソロ歌手として独立した、イズラエル・カマカヴィヴオオレ(レイ・レコードより「天国から雷」がリリースされています)のヒット曲をサニーが演奏しています。
さきほどのトロイ同様、モーもこの名曲を彼なりの解釈で手直ししながら演奏しています。
スラック・キィ・ギターでさかんに演奏されるトラディショナル曲。オピヒはアワビを小さくしたようなハワイ特産の貝のこと、モエモエはそれが海底に潜んでいるさまを示しています。
ジャムとは皆で楽しく音楽を演奏することで、このCDには次のような呼びかけが書かれています。“暴力的なグループに近寄らないで学校に行こう!そしてウクレレを弾こう!みんなで音楽を楽しもうじゃないか・・・”
チャールズ・ナマホエ作のフラ・ソング。「あのきれいなレイ(をつけた娘さん)はどこへ行ったの?もう二人はずうっと一緒だよ」という歌詞が付いています。
モーの最も得意とする曲です。ウィル・ハドスンとエディ・デランジ1934年の作品ですが、1955年の映画「ピクニック」の主題歌として大ヒットしました。
前者はカラカウア王の妹でハワイ王朝最 後の女王リリウオカラニの作品。ピーターはこのアルバムの奏者の中では一風変わった演奏をしていることがお分かりでしょう。ギターをバックにウクレレで二重録音をしています。
フレッド・ハム他の作「バイ・バイ・ブルース」に始まって、パット・バラード作の「ミスター・サンドマン」、スーザ作の「星条旗よ永遠なれ」など合計4曲のメドレーです。「星条旗よ・・」をトロイの演奏と比較してみるのも面白いでしょう。ただウクレレのみのソロでありながら、スタートにテンポのカウントを出しているのはなんとも不思議です。
スチール・ギターのみの完全なソロは大変珍しいものです。ジェリーのスラント(左手のバーをフレットに平行な向きから左右いずれかに傾ける)奏法やハーモニックス奏法をお楽しみください。