先に発売したアルバム「メレ・フラ」は、それまでややもするとフラという「踊り」に従属しがちであったフラ・ソングを、マヒ・ビーマーをはじめとするハワイ音楽の権威者たちの正しい解釈の助けを得て、十分鑑賞に耐える歌曲の領域にまで高めたアルバムとして評価され、この分野のCDとしては異例とも言える枚数を出荷することができました。
今回のアルバム「メレ・フラ2」は、前作と同じ視点に立つとともに、マヒ・ビーマーとニーナ・ケアリイワハマナという二人のベテラン歌手の参加も得て作られた前作を上回る出来の珠玉アルバムです。
「メレ・フラ」と「メレ・フラ2」は、いずれも1996年末の出版された鳥山親雄氏が発行人の「ミュージカル・イメージ・オブ・ハワイ」というユニークな本で紹介された50曲のフラ・ソングのなかから選んだ歌のみを収録しております。この本はハワイ最大の音楽ファミリーであるビーマー・ファミリーのマヒ・ビーマーと従姉妹のゲイ・ビーマーがハワイ語をチェックするとともに英語訳を担当、それぞれの曲の解説はジョセフ・マトスが担当するという豪華本です。そしてこの本の中でそれぞれの曲のイメージを写
真で的確に表現したハワイ在住のプロ写真家カズエ・クレバヤシさんが「メレ・フラ」「メレ・フラ2」アルバムのプロデューサー2名のひとりでもあります。もうひとりのプロデューサーは同じくハワイ在住のミチコ・ウラタさんです。ミチコさんは長年ハーブ・オオタ(オータサン)のマネージャーを務めるかたわら、M&Hハワイというオフィスを持ち、オータサンをはじめとしたハワイのミュージシャンによるCDをリリースしておりますが、今回のCDもその一環としてカズエさんとのコンビで作り上げました。
前作CDが一般的な12〜14曲よりも多い17曲を収録したことでこのコンビの力の入れかたがよく分かったのですが、このCDではなんと23曲も収録し、収録時間に至っては通
常のCD限界である74分をオーバーするという入れ込みようです。ふつうの商業CDのように「メドレー」で逃げず、堂々と23曲を独立させた勇気に拍手を贈ります。
すでに「メレ・フラ3」の要望も持ち上がっているやに伝え聞いておりますが、「ミュージカル・イメージ・オブ・ハワイ」にはあと10曲しか残されていませんので、お二人がどのような方向に進むかに注目させて頂きたいと思っております。
ハワイ島在住の実力ミュージシャン揃い
今回のCDに登場するマヒとニーナ以外の歌手としては、前作同様オアフ島にありがちな商業主義に毒されないハワイ島在住の実力あるミュージシャン達を中心に選び、それぞれのもつ個性を生かした録音を行いました。ここにそれぞれのミュージシャン達の横顔を簡単に紹介いたしましょう。
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マヒ・ビーマー:  ハワイの大作曲家、歌手そしてフラ・ダンサーであったヘレン・デシェイ・ビーマーを祖母にもつハワイ音楽の名門ビーマー・ファミリーの重鎮で、カメハメハ・スクールというハワイ音楽の伝統を継承する高校を卒業後、ジュリアード音楽院で学んだ本格派のミュージシャン。彼自身も歌手、チャンター、フラ・ダンサー、振付師そしてピアニストとして現在も活躍しています。ケオラ・ビーマーとカポノ・ビーマーは彼の従姉妹の息子たちです。 (写
真→マカとマヒ
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ニーナ・ケアリイワハマナ:ハワイ音楽の名門ロドリゲス・ファミリーのルーツであり、有名なラジオ番組「ハワイ・コールズ」の中心的存在であった女性歌手、作曲家、フラ指導者であるヴィッキィ・イイの娘。ふたりの姉ラニ、ラヘラそして兄のボイシィとともに母に代わって「ハワイ・コールズ」の全盛期を支えた歌手。他の姉兄が引退した後もソロ歌手として現役を続け、その澄んだ美声に魅せられた男性歌手は皆「ハワイの結婚の歌」で彼女とのデュエットを申込むとのこと。
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マカ・カアイフエ:上記マヒ、ニーナそしてこのマカの3名のみがオアフ島在住の歌手ですが、マカとしてはこのアルバムが彼女の初レコーディングなのです。プリンス・クヒオでピアノを弾きながら唄うマヒ・ビーマーの周囲を、マヒのファン達がぐるっと囲み、順番に持ち歌を披露する中で、彼女の大変低く、それでいてしっかりとした歌声が気に入ったミチコさんたちが今回のアルバムへの参加を持ち掛け、マヒのバックならOKと承諾を得ました。
- ジョン・ケアヴェ・シニア:
ハワイ島在住のスラックキー・ギター奏者の大御所。スラック・キー・ギターおよび唄によるアルバムを沢山リリースしています。数年前より彼の地盤であるハワイ島内でスラック・キー・ギターとウクレレを中心としたフェスティバルを主催するようになり、派手さこそありませんがユニークな催しとして注目され、日本からも山口岩男、関口和之両氏が参加いたしました。
(写
真→ボボとジョン
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- メアリー・アン・リム:ハワイ島コハラ地区を中心に活躍している音楽一家リム・ファミリーのお母さんであり、伝統あるフラの大会メリー・モナーク・フラ・コンペティションの常勝ハラウ(フラ塾)のナー・レイ・オ・カホロクーの創設者でもあります。現在はハラウを娘達に譲る等、半ば引退をしておりますが、重要な催しには相変わらずの美声で登場し、ファンを喜ばせております。
- ナニ・リム・ヤップ:メアリー・アンのハラウを姉のドナ、妹のローナとともに引き継ぐとともに、音楽集団としてのリム・ファミリーのまとめ役としても活躍しています。ローナが先にソロ・アルバムをリリースしていますので、ナニのソロ・アルバムの登場も待望されております。
- エルマー・サニー・リム・ジュニア:彼もメアリー・アンの息子です。サンズ・オブ・ハワイのスチール・ギター奏者デイヴィッド・ロジャースにスチールを、フレッド・プナホアにはスラック・キー・ギターを教わった経歴をもち、マカハ・サンズ・オブ・ニイハウの初期のアルバムでは住所に因んだコハラという渾名でスチール・ギターを弾いています。
- ボボ・ブラウン:有名なヒロ・ハワイアンズのリーダーであったキヘイ・ブラウンを含むブラウン・ファミリーの一員。彼のソフトな歌声にプロデューサーのカズエさんとミチコさんが惚れ込み、このCDより先行した企画のビデオ・アルバムで唄ってもらったところ大好評であったため、今回のCDにも出演して貰いました。
- ダニエル・アカカ・ジュニア:父親はハワイ州選出の上院議員ダニエル・アカカ・シニア、そして弟は若手ナンバー・ワンのスチール・ギター奏者アレン・アカカ。ダニエル自身はハワイの歴史に造詣が深く、マウナ・ラニ・ベイにある歴史資料館の責任者を務めるとともに、チャンター、歌手、ギター奏者としても活躍しています。
- クニア・ガルデイラ:ハワイ音楽の伝説的人物であるギャビィ・パヒヌイの孫。ウクレレと唄で売り出し中の若手のホープ的存在です。前作のCDで唄った「ワヒネ・イリケア」の歌声と巧みなアレンジは、ハワイ音楽ファンの絶大な支持を獲得しました。今回のアルバムでもトップ・バッターを任された「期待の星」です。
- ケオニ・アトキンスン:
作曲家、チャンター、フラ指導者、歌手そして司会者としてハワイ島をベースに活躍しています。(写
真→ケオニとミケラ)
- イヴァラニ・アトキンスン:ケオニの娘。13歳からプロ活動をしている彼女もレコーディングは初体験でした。
- スティーブ・A・シオラ:イヴァラニのボーイ・フレンド。録音スタジオで突然参加することが決まりました。
- ケヴィン・ケアロハ:1995年にフリ―・アンド・イージーというグループでCDデビューした実 力派です。
- ニーファイ・P・ブラウン:彼もブラウン・ファミリーの一員と思われます。今回はダニエル、ボボと組んで唄いました。
- ウォーレン・カネアオ:上手なギター演奏と味の有る唄を見込んで今回のCDに初参加して貰いました。
- ミケラ・オークス:フラ・ダンサーですが、各種打楽器演奏に加えて伝統の鼻笛(オヘ)を吹ける貴重な存在です。
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