MELE HULA#2「メレ・フラ2」
 M&H HAWAII MHCD1105
  (レイ・レコードLEIR 0052で国内にも発売)

ハワイ島発の珠玉アルバム第2弾の登場

先に発売したアルバム「メレ・フラ」は、それまでややもするとフラという「踊り」に従属しがちであったフラ・ソングを、マヒ・ビーマーをはじめとするハワイ音楽の権威者たちの正しい解釈の助けを得て、十分鑑賞に耐える歌曲の領域にまで高めたアルバムとして評価され、この分野のCDとしては異例とも言える枚数を出荷することができました。

今回のアルバム「メレ・フラ2」は、前作と同じ視点に立つとともに、マヒ・ビーマーとニーナ・ケアリイワハマナという二人のベテラン歌手の参加も得て作られた前作を上回る出来の珠玉アルバムです。

「メレ・フラ」と「メレ・フラ2」は、いずれも1996年末の出版された鳥山親雄氏が発行人の「ミュージカル・イメージ・オブ・ハワイ」というユニークな本で紹介された50曲のフラ・ソングのなかから選んだ歌のみを収録しております。この本はハワイ最大の音楽ファミリーであるビーマー・ファミリーのマヒ・ビーマーと従姉妹のゲイ・ビーマーがハワイ語をチェックするとともに英語訳を担当、それぞれの曲の解説はジョセフ・マトスが担当するという豪華本です。そしてこの本の中でそれぞれの曲のイメージを写 真で的確に表現したハワイ在住のプロ写真家カズエ・クレバヤシさんが「メレ・フラ」「メレ・フラ2」アルバムのプロデューサー2名のひとりでもあります。もうひとりのプロデューサーは同じくハワイ在住のミチコ・ウラタさんです。ミチコさんは長年ハーブ・オオタ(オータサン)のマネージャーを務めるかたわら、M&Hハワイというオフィスを持ち、オータサンをはじめとしたハワイのミュージシャンによるCDをリリースしておりますが、今回のCDもその一環としてカズエさんとのコンビで作り上げました。

前作CDが一般的な12〜14曲よりも多い17曲を収録したことでこのコンビの力の入れかたがよく分かったのですが、このCDではなんと23曲も収録し、収録時間に至っては通 常のCD限界である74分をオーバーするという入れ込みようです。ふつうの商業CDのように「メドレー」で逃げず、堂々と23曲を独立させた勇気に拍手を贈ります。

すでに「メレ・フラ3」の要望も持ち上がっているやに伝え聞いておりますが、「ミュージカル・イメージ・オブ・ハワイ」にはあと10曲しか残されていませんので、お二人がどのような方向に進むかに注目させて頂きたいと思っております。

ハワイ島在住の実力ミュージシャン揃い
今回のCDに登場するマヒとニーナ以外の歌手としては、前作同様オアフ島にありがちな商業主義に毒されないハワイ島在住の実力あるミュージシャン達を中心に選び、それぞれのもつ個性を生かした録音を行いました。ここにそれぞれのミュージシャン達の横顔を簡単に紹介いたしましょう。

ニーナ
ニーナ



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メアリー・アン

 

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ナニ



ケヴィン
ケヴィン

 

 

 

 


 

  • マヒ・ビーマー マカとマヒハワイの大作曲家、歌手そしてフラ・ダンサーであったヘレン・デシェイ・ビーマーを祖母にもつハワイ音楽の名門ビーマー・ファミリーの重鎮で、カメハメハ・スクールというハワイ音楽の伝統を継承する高校を卒業後、ジュリアード音楽院で学んだ本格派のミュージシャン。彼自身も歌手、チャンター、フラ・ダンサー、振付師そしてピアニストとして現在も活躍しています。ケオラ・ビーマーとカポノ・ビーマーは彼の従姉妹の息子たちです。(写 真→マカとマヒ )
  • ニーナ・ケアリイワハマナ:ハワイ音楽の名門ロドリゲス・ファミリーのルーツであり、有名なラジオ番組「ハワイ・コールズ」の中心的存在であった女性歌手、作曲家、フラ指導者であるヴィッキィ・イイの娘。ふたりの姉ラニ、ラヘラそして兄のボイシィとともに母に代わって「ハワイ・コールズ」の全盛期を支えた歌手。他の姉兄が引退した後もソロ歌手として現役を続け、その澄んだ美声に魅せられた男性歌手は皆「ハワイの結婚の歌」で彼女とのデュエットを申込むとのこと。
  • マカ・カアイフエ:上記マヒ、ニーナそしてこのマカの3名のみがオアフ島在住の歌手ですが、マカとしてはこのアルバムが彼女の初レコーディングなのです。プリンス・クヒオでピアノを弾きながら唄うマヒ・ビーマーの周囲を、マヒのファン達がぐるっと囲み、順番に持ち歌を披露する中で、彼女の大変低く、それでいてしっかりとした歌声が気に入ったミチコさんたちが今回のアルバムへの参加を持ち掛け、マヒのバックならOKと承諾を得ました。
  • ジョン・ケアヴェ・シニアBoboJohn.jpgハワイ島在住のスラックキー・ギター奏者の大御所。スラック・キー・ギターおよび唄によるアルバムを沢山リリースしています。数年前より彼の地盤であるハワイ島内でスラック・キー・ギターとウクレレを中心としたフェスティバルを主催するようになり、派手さこそありませんがユニークな催しとして注目され、日本からも山口岩男、関口和之両氏が参加いたしました。 (写 真→ボボとジョン )
  • メアリー・アン・リム:ハワイ島コハラ地区を中心に活躍している音楽一家リム・ファミリーのお母さんであり、伝統あるフラの大会メリー・モナーク・フラ・コンペティションの常勝ハラウ(フラ塾)のナー・レイ・オ・カホロクーの創設者でもあります。現在はハラウを娘達に譲る等、半ば引退をしておりますが、重要な催しには相変わらずの美声で登場し、ファンを喜ばせております。
  • ナニ・リム・ヤップ:メアリー・アンのハラウを姉のドナ、妹のローナとともに引き継ぐとともに、音楽集団としてのリム・ファミリーのまとめ役としても活躍しています。ローナが先にソロ・アルバムをリリースしていますので、ナニのソロ・アルバムの登場も待望されております。
  • エルマー・サニー・リム・ジュニア:彼もメアリー・アンの息子です。サンズ・オブ・ハワイのスチール・ギター奏者デイヴィッド・ロジャースにスチールを、フレッド・プナホアにはスラック・キー・ギターを教わった経歴をもち、マカハ・サンズ・オブ・ニイハウの初期のアルバムでは住所に因んだコハラという渾名でスチール・ギターを弾いています。
  • ボボ・ブラウン:有名なヒロ・ハワイアンズのリーダーであったキヘイ・ブラウンを含むブラウン・ファミリーの一員。彼のソフトな歌声にプロデューサーのカズエさんとミチコさんが惚れ込み、このCDより先行した企画のビデオ・アルバムで唄ってもらったところ大好評であったため、今回のCDにも出演して貰いました。
  • ダニエル・アカカ・ジュニア:父親はハワイ州選出の上院議員ダニエル・アカカ・シニア、そして弟は若手ナンバー・ワンのスチール・ギター奏者アレン・アカカ。ダニエル自身はハワイの歴史に造詣が深く、マウナ・ラニ・ベイにある歴史資料館の責任者を務めるとともに、チャンター、歌手、ギター奏者としても活躍しています。
  • クニア・ガルデイラ:ハワイ音楽の伝説的人物であるギャビィ・パヒヌイの孫。ウクレレと唄で売り出し中の若手のホープ的存在です。前作のCDで唄った「ワヒネ・イリケア」の歌声と巧みなアレンジは、ハワイ音楽ファンの絶大な支持を獲得しました。今回のアルバムでもトップ・バッターを任された「期待の星」です。
  • ケオニ・アトキンスンケオニ作曲家、チャンター、フラ指導者、歌手そして司会者としてハワイ島をベースに活躍しています。(写 真→ケオニとミケラ)
  • イヴァラニ・アトキンスン:ケオニの娘。13歳からプロ活動をしている彼女もレコーディングは初体験でした。
  • スティーブ・A・シオライヴァラニのボーイ・フレンド。録音スタジオで突然参加することが決まりました。
  • ケヴィン・ケアロハ:1995年にフリ―・アンド・イージーというグループでCDデビューした実 力派です。
  • ニーファイ・P・ブラウン:彼もブラウン・ファミリーの一員と思われます。今回はダニエル、ボボと組んで唄いました。
  • ウォーレン・カネアオ:上手なギター演奏と味の有る唄を見込んで今回のCDに初参加して貰いました。
  • ミケラ・オークス:フラ・ダンサーですが、各種打楽器演奏に加えて伝統の鼻笛(オヘ)を吹ける貴重な存在です。



曲目の紹介

「ミュージカル・イメージ・オブ・ハワイ」の解説を随所に引用しつつ、それぞれの曲をご紹介いたしましょう。

  1. カ・ワイレレ・オ・ヌウアヌ:アルバムのオープニングにふさわしい荘厳なイントロにクニアの唄が続きます。この曲はジェイ・カウカが毎日自宅からヌウアヌ峡谷をとおって通 学していた頃、運転していた父親が峡谷にある滝を「永遠に終わらない滝」と教えてくれたことを父の死に際して思い出し、父への永遠の愛を誓って作曲しました。
  2. ヘ・ウイ:イントロのバンプからすぐに転調してニーナの唄がはじまるというしゃれた構成の曲になりました。ニーナは数多くの曲をレコーディングしていますが、この曲を唄うのは彼女にとっては初体験とのことです。この曲は男性歌手としても有名であったダニイ・クアアナが若い女性への敬愛と讃美を唄ってつくったものです。
  3. ナー・モク・エハー:ダニーのオヘ(鼻笛)ではじまり、彼のチャントに続くという古典音楽の形式に則った演奏です。さらに毎回マイナーとメイジャーが交互に出現するというアレンジもユニークなものです。この曲の作者はJケアロハと登録されていますが、昔からたくさんあるハワイ各島を代表する花とその島にある山のことを唄った唄の一つです。
  4. レイ・ナニ:ケヴィンがサニーの弾くウクレレ、ギター、ベースに乗せてフラ・ソングの典型的なスタイルで唄います。ハワイに於いてレイ(花環)は相手への愛を表わすという特別 の意味を持っています。あらゆる機会に愛の証しとして贈る習慣がありますが、特に結婚式での新郎新婦や卒業式での卒業生は贈られたレイでうずまってしまいます。
  5. ヘ・ハワイ・アウ:ニーファイの弾くスラック・キー風のギターに乗せてボボがひとりデュエットで唄います。この曲は一度別 れたふたりが再会し、将来を誓うという物語を唄にしたもので、ロン・ロッカのアイディアにピーター・ムーンが曲を付け、スラック・キー・ギターの大御所であったアリス・ナマケルアがハワイ語歌詞を付けました。
  6. アフリリ:ナニとサニーのリム・コンビによる演奏です。彼等はいつもファミリーで演奏していますので、大変ゆったりと演奏しています。この曲は元来スコット・ハイによってつくられましたが、その後いろいろのバージョンが登場してきました。アフリリというマウイ島の山を唄っていると同時に嫉妬(リリ)の唄でもあるそうです。
  7. プア・オレナ:ウォーレンのギター弾き語りでしっとりと聴かせてくれます。カウアイ島という世界有数の多雨地帯に広く群生するウコンの黄色い花を唄った曲で、カウアイ島のジェームス・K・カホロクアが作曲しました。リム・ファミリーの父親エルマー・シニアが健在であったころ、彼等の唄ったこの曲が大ヒットをしたことがありました。
  8. エ・ワイアナエ:イヴァラニのソロにボーイ・フレンドのスティーブが突然バック・パートをとることになったというハワイならではの出来事でした。この曲はパンダナス・クラブの演奏で有名になった曲で、クム・フラのランディー・ナムのオアフ島ワイアナエを唄う歌詞にケニス・マクアカネがメロディーを付けました。
  9. プアマナ:ジョンのスラック・キー・ギターと唄で演奏されたこの曲は、やはりハワイ音楽の名門のひとつファーデン・ファミリーのゴッドマザーであり、80歳を越えても現役で音楽活動を続けていたアームガード・ファーデン・アルリが、ラハイナにあるファーデン家を唄った作品です。後日、これに8小節を追加した曲も現れました。
  10. ノホ・パイパイ:いつも集まって演奏しているクニア、ケヴィン、サニーの3名が息の合ったコーラスを聞かせてくれます。この曲は盲目の作曲家、歌手、バンドリーダーであったジョニー・アルメイダの作品で、ロッキング・チェアーで揺れている恋人ふたりを唄っていますが、「揺れている」という状態が性的な意味も表わしています。
  11. ヒロ・オネ:ダニエルがニーファイのバックパートを伴い、自分の弾くギターに乗せて切なく唄うこの作者不詳の唄は、ちょっぴり悲しい恋の唄なのです。若者が心を寄せている女性エマリア(エメリー)が悪いプレイボーイに引っかけられてしまったことをこの若者は大変心配し、ヒロの浜辺で彼女への想いを唄っています。
  12. プア・マエオレ:ラジオ・プログラム「ハワイ・コールズ」全盛期の看板女性歌手であったハウナニ・カハレワイを彷彿させる低音でマカが唄うこの曲は、歌手、作曲家のジョン・スクィーズ・カマナが自分の娘に送った愛の唄なのです。「プア・マエオレ」は永遠に枯れることのない花を意味し、愛娘がいつまでも元気でと祈って作られました。
  13. マウナロア:クニアがウクレレ、ギター、ベースを弾き、唄ったこの曲は、ハワイ島の山もしくはその名前を付けた船の唄というのが表向きの解釈です。しかし他のフラ・ソング同様に裏の意味を持ち、特にこの曲ではふたりの愛の後始末をしたハンカチをゴキブリが食べてしまったという「裏」の方がポピュラーになってしまいました。
  14. ナニ・コオラウ:ナニ・コオラウ:ふたたびケヴィン、クニア、サニーのトリオの演奏をバックにケヴィンが唄うこのトラディショナル曲は、もともとモロカイ島のことを唄った曲でしたが、最近ではオアフ島のヌウアヌ谷から高くそびえ立っているコオラウ山脈のことを指すようになりました。唄の中身はふたりの愛の交歓の前後を唄っています。
  15. ロイヤル・ハワイアン・ホテル:サニーがウクレレ・ギターベースを弾き、唄ったこの曲は、ワイキキの浜辺に優雅に立っているピンク・パレスという愛称を持つロイヤル・ハワイアン・ホテルのいわばコマーシャル・ソングです。歌詞が7番までありますが、いずれも後半は同じ歌詞になっているので唄う立場からは「助かる」曲です。
  16. クウ・ホアふたたび低音の女性歌手マカがマヒのピアノ伴奏で唄います。マヒの叔父夫婦であったポノ・ビーマーと妻のマラマ・ビーマーガハワイを舞台にした映画「ワイキキの結婚」のハワイ文化の考証コンサルタントとしてハリウッドに滞在していた時、ハワイに残してきた愛する子供たちを思う妻にポノがこの曲をプレゼントしました。
  17. ロゼラニ・ブロッサムズ:リム・ファミリーの「お母さん」メアリー・アンが息子のサニーの伴奏で唄うこの曲は、ノホ・パイパイの作者ジョニィ・アルメイダの作品です。ハワイのそれぞれの島には「島の花」があり、マウイ島の島花はハワイ語でロケラニまたはロゼラニというバラの花なのです。ジョニィは愛の唄としてこの曲を作りました。
  18. ノ・カ・プエオ・カーヒ:前作CD中のワヒネ・イリケア同様、クニアのウクレレと唄が美しく流れます。プエオ・カーヒというのはマウイ島の東端ハナちかくの地名でもあり、それを付けた船の名前でもありますが、もとはフクロウの姿をした神様のことです。この曲は「ナ・カ・プエオ」とも呼ばれ、1番の歌詞も二通 り存在します。
  19. パーパーリナ・ラヒラヒ:ふたたびウォーレンのギター弾き語りでしゃれた唄を聴かせてくれます。この作者不詳の曲は、片思いの唄であるジャズの「オール・オブ・ミー」と歌詞は似ていますが内容的にはまったく異なり、相思相愛の仲である女性が「頭のてっぺんから足の爪先までぜ〜んぶ貴方のもの、好きにして」と唄います。
  20. ワイカロア:ニーナがクニアとサニーをバックに唄います。ワイカロアはマウイ島ハナ地区の地名で、このジョン・ピイラニ・ワトキンスの作品が初めて紹介された当時、しばしばハワイ島のワイコロアと混同されました。唄は地元の人々の温かい心や、美しい灯台、そして白い雨をもたらす有名なマウイの霧について唄っています。
  21. プア・カーネーション:ケヴィンの弾くウクレレ1台をバックにクニア、ケヴィン、サニーの三人が唄います。曲はハワイの生んだ大作曲家チャールス・E・キングの作品で、「すべての花のなかで最も美しい」とカーネーションに託した女性への愛の唄。フラ・ソングよりは歌曲に近い構成の曲で、三人もその雰囲気で唄っています。
  22. カーヴィカ:ケオニとミケラのふたりがほら貝、イプヘケ(大きな瓢箪)そして鼻笛を演奏しつつチャントを詠います。ハワイ音楽とフラを復興したことで有名なカラーカウア王(彼のファースト・ネームのデイヴィッドがハワイ語でカーヴィカ)の偉業を称え、ハワイ国民のためにいかに心を砕いたかをチャントの形で詠ったものです。
  23. ハワイ・アロハ: ハワイでのパーティーの最後には全員が手をつなぎ、この唄をうたいますが、その雰囲気を出そうと考えた二人のプロデューサーは、マヒのピアノ、ボボのリードに合わせて今回のCDに参加したミュージシャン17名全員にこの曲を唄ってもらいました。なんとも大胆なことを考え付いたものです。拍手!

ニーファイとダニエル

ニーファイとダニエル

 

 

サニー
サニー

 

 


イヴァラニ

 

スティーブ
スティーブ

 

クニア
クニア

 


ワーレン

マット・コバヤシ


Jam Selections