「ケアリー・レイシェル/ライヴ‘96」
レイ・レコードLEIR-0033
(PUNAHELE PPVD0101 Kukahi'96/Keali'i Reichel)
■ケアリイのライブ・ビデオが出ました
ケアリイ・レイシェル(発音では「ライシェル」のほうが近いのですが・・)は、現在ハワイの音楽ファンから最も支持されているミュージシャンと言えます。レイ・レコードからリリースされている彼の2枚のCDは、いずれもハワイのレコード大賞であるナー・ホークー・ハノハノ・アウォードで数多くの部門の大賞を受賞しているヒット・アルバムです。(ナー・ホークー・ハノハノ・アワードに関する詳細はハワイアン・ウェーブ別冊「アイランド・ミュージック・オブ・ハワイ」をご参照ください。)
ケアリイが彼のファースト・アルバム「カワイプナヘレ」(邦題「ファースト」)を引っさげて大衆の前にデビューしたのは、今(1997年)からわずか2年半前に過ぎませんし、ビデオで登場するのも今回のライブ版がはじめてです。しかしマウイ島のロコ(ローカル)としてフラ・ハラウ(スタジオ)を持ち、ハワイ語の歌を作り、歌っていた彼のマロ(褌)姿は幾つかのドキュメンタリー・ビデオに登場しており、一部ではデビュー以前から彼の実力が認められていました。
■二つのアルバムから12曲を演奏
このビデオは96年3月16日にホノルルのワイキキ・シェルで行われたケアリイの第1回リサイタルのライブ版です。実際のリサイタルでは第1部がケアリイのオリ(詠唱)からはじまり、チャントに合わせたカヒコ(伝統的な唄と踊り)に終始するのですが、カヒコがあまり一般には馴染みが無いため、このビデオでは第2部の現代ハワイ音楽をトップに据えてあります。
ビデオに収録された曲はゲストの唄った2曲とケアリイの唄12曲の合計14曲。
そしてケアリイの唄はすべて彼の2枚のCDに収録されている曲ばかりです。
- まずフアースト・アルバム「フアースト」からは、
- 1曲目( 以下 (1)−1 )と書きますの「カワイプナヘレ」をはじめ、(1)−2、(1)−3、(1)−5の4曲。
- セカンド・アルバム「レイ・ハリア」(邦題は「想い出のレイ」)からは、
- (2)−1「レイ・ハリア」をはじめ、(2)−2〜(2)−6、(2)−8そしてチャントの(2)−10の合計8曲となっています。
彼のCDをお持ちの方はご存じのとおり、CD録音に際してはホオケナとかロビ・カハカラウなどの豪華ゲストが参加していましたが、ビデオ版でもこれらのゲスト・ミュージシャンの大半が登場してバックをつとめています。そしてこれらのゲストに加 えてデーモン・ウィリアムスとケアリイの親友ウルヴェヒ・グェレロ(レイ・レコードからソロ・アルバム「素直な季節」がリリースされています)のふたりがケアリイと一緒に唄うビートルズ・ナンバーも素晴らしい出来ばえで、十分にお楽しみいただけると思います。
■曲目解説
はじめに書きましたようにこのビデオはリサイタルの第2部からスタートしています。第2部が約1時間続いたのち第1部に入ることをご承知おきください。
- クウ・プア・マエオレ [ (2)−5 ] : 客席後方からワイヤレス・マイクで登場したケアリイが「アイル・ビー・ゼア」に続いて自作の「クウ・プア・マエオレ」を唄いながら徐々に舞台に向かい、曲の最終部分で3人のダンサーと合流するというしゃれた演出で第2部の幕が開きました。
- ハワイ語のメッセージ : 舞台に上ると、まずハワイ語で「ハワイの唄や祖先の文化を知るにはまずハワイ語が必要。みんなハワイ語を勉強しよう!」というメッセージを語ります。ビデオを見ている私たちには英語の字幕の助けがあるので大体の意味が分かりますが、ハワイ語をまだ勉強していない一般の観客には理解できなかったのではないでしょうか。
- カナナカ [ (2)−3 ] : マウイ島ラハイナ近くの伝説で、カナナカという名の人魚を唄った1860〜1880年代のトラディショナル曲。カナナカに近づいたサーファー達はみな彼女の秘密を知ったことで殺されてしまったそうです。
- カワイプナヘレ [ (1)−1 ] : 言わずと知れたケアリイの自作になる彼のデビュー曲ですが、この曲を大変美しいフラのソロを伴って唄います。離れて行った人をレイに例え、昔に戻ってと呼びかけている内容の唄です。
- エ・ホイ・イ・カ・ピリ [ (1)−5 ] : 続いて男性5名、女性4名のフラを伴ったこれもケアリイ自作のラブ・ソング。マウイ島北岸にあるカハクロア(その昔ダニイ・カポイ・トリオの唄で有名でした)でのふたりの愛を唄っています。
- ナウ・アンド・フォーエバー/スウィート・メモリー [ (2)−4 ] : ゲストのデーモン・ウィリアムスの唄も交えてこの2曲が繰り返し唄われます。
- ハノハノ・カ・レイ・ピカケ [ (1)−3 ] : ケアリイの為にたくさんの曲を作っている親友のプアケア・ノゲルマイヤーの作で、レイ・ピカケは白いジャスミンの花で作ったレイのこと。軽快なリズムに乗った男性5名のフラも良いものですね。
- エブリ・ロード・リーズ・バック・トゥー・ユー [ (2)−2 ] : 96年ナ・ホクの男性、女性ボーカリスト大賞受賞者の息の合ったデュオです。男性はもちろんケアリイ、そして女性はロビ・カハカラウ(レイ・レコードから受賞アルバム「シスタア・ロビ」がリリースされています)です。
- トゥーネヴァネヴァ・オエ・テ・ヘウ・マイ [ (2)−8 ] : チャーリー・マクスウェルがケアリイにプレゼントしてくれた家族に伝わる陽気な酒飲み唄。我が国の「ノーエ節」のように歌詞が尻取りで次々とつながっていきます。コナ・カイルアがトナ・タイルアとなるのは唄い手が酔っぱらったせいでしょうか?
- レイ・ハリア [ (2)−1 ] : ホオケナのメンバーがずらりと舞台にならんでレイ・ハリア(想い出のレイ)のバック・コーラスをつとめます。この曲も親友プアケア・ノゲルマイヤーの作。女性5名のフラが花を添えています。
- ビートルズ・ナンバー3曲: 今回のリサイタルではずうっとバック・コーラスをつとめていたウルヴェヒ・グェレロと、先ほど登場したデーモン・ウィリアムスの2人をソロ・シンガーとして迎え、ジョン・レノン/ポール・マッカートニーのコンビによるビートルズ・ナンバーをケアリイを含めた3人で1曲ずつ唄い、ほかの2人がハモるという趣向。最初はデーモンが「イエスタデイ」を、続いてウルヴェヒが「レット・イット・ビー」を、そして最後はケアリイが彼のアルバム [ (1)−2] でも唄った「イン・マイ・ライフ」をそれぞれフラではなく手話を伴って唄いました。
- キャン・ユウ・フィール・ザ・ラブ・トゥナイト [ (2)−6 ] : 第2部最後の曲はバック・コーラス・メンバーとして今までのウルヴェヒ、ナオミ・ステフェンス、クリス・ブラサトの3人にスター・ウィリアムス、レイチェル・ゴンザレス、レナード・ピギー、デビー・マクルアも加わるというフィナーレにふさわしい華やかな演奏となりました。
- 開演のオリ(詠唱)とカヒコ3曲、そして終演のオリ : ビデオ編集の都合で開演部分と終演部分がまとまってしまいましたが、「マイカイ・カ・オイヴィ・オ・カアラ」 [ (2)−10 ] などここで演奏されている3曲のカヒコは、ケアリイのチャンターとしての実力を十分に示していると言えましょう。
マット・コバヤシ
Jam Selections