CD写真

  

イズラエル

「ヨ・コ・ヅ・ナ」

レイ・レコードLEIR-0032 

BIG BOY BBCD5903 n Dis Life
Israel Kamakawiwo'ole

  



【 解 説 】

■ 歴史的?和解後に出たイズのアルバムに注目!

 ハワイアン・ウエーブ誌別冊の「アイランド・ミュージック・オブ・ハワイ」に詳細を記してありますが、1996年5月に開催されたハワイのグラミー賞といわれる「ナー・ホークー・ハノハノ・アウォード」の招待演奏者として出演したイズラエルは、それまで喧嘩別れをしていた昔のグループ「マカハ・サンズ」のリーダーであるムーン・カウアカヒの曲を和解のメッセージとして唄い、マカハのメンバー達との合同演奏が実現するという大きなハプニングまで生みました。その時の曲「カレオハノ」が収められたCD「エ・アラ・エー」(レイ・レコードより「天国から雷」としてリリースされています)は惜しくも大賞を逃しましたが、イズが次にどんなアルバムを出すのかをファンは注目していました。

■ ハワイ訛りに誇りを持っているイズ

 私たちは外国人ですからハワイの人の英語の発音をとやかく言う資格は有りませんが、彼らの英語を聴くとなんとなくハワイ独特の英語すなわち「ハワイ訛りの英語」であるような気がします。イズが話したり唄ったりする英語もこの手の英語であり、理解するのに大変苦労します。上記の「天国から雷」という曲が登場した時に「アケボノ・ムサシマル・アンド・コニシキ」とハワイ出身の力士の四股名が入っており興味があったので歌詞を取ろうとしたのですが、彼の英語はハワイ訛りが非常に強く、四六時中ハワイ人と接しているハワイ大生の私の息子の助けを借りてなんとか解決したという事がありました。今回のアルバムでイズは逆にその「訛り」を前面に押し立てている感じがします。
 まずアルバムの原題「n Dis Life」というのはミス・プリントではなく、「In This Life」をハワイ訛りで書き表した物なのです。そしてそれだけでは済まさずに、ジャケット・デザインとしてこのタイトルを縦に配置してNをZと読めるようにした上で、左隣にIを置きました。こうすることでこのタイトルは「イズ」とも読め、「イン・ディス・ライフ」とも読めるように考えられていることが分かります。ジャケット裏面に書かれた3行プラス3行のメッセージも徹底したハワイ訛りの英語で、これが普段イズの話している言葉そのものと言えます。ちょっと声を出して読んでみてください、「lotza,4, Brudda, luv, cuz」がそれぞれ「a lot of, for, Brother, love, because」の訛りであることが分かればなんとなく内容も理解できるのではないでしょうか。そしてジャケットにある足型はイズが誕生した時に取ったものとのことです。

■ インターネットのホーム・ページを持つイズ

 ジャケットの2か所にある「www.izhawaii.net」はインターネット上にあるイズのホーム・ページ・アドレスなのです。最近は数多くのハワイアン・ミュージシャンが自分のホーム・ページを持つようになり、色々な情報を発信しています。イズのホーム・ページも彼の最新アルバムの情報や彼からのメッセージを載せる目的で開設したと思われます。未完成ですがどうぞ彼のページを覗いてみてください。


【 曲目解説 】

収録されている12曲は、トラディショナルから現代ものまでと広範囲に渡り、彼のレパートリーの広さを物語っています。

  1. ヒイラヴェ
    ハワイ島ワイピオ谷の奥にあるヒイラヴェ滝にまつわる伝説を唄った古典の名曲で、イズはスラック・キー・ギターをバックに丁寧に唄うとともに、後半にはシンセサイザーのストリングスを重ねるなどアレンジにも凝っています。

  2. イン・ディス・ライフ
    アルバムのタイトルとなったマイク・レイドとアレン・シャムリンの作った曲で、「私の生涯ではじめて貴女に愛された」と唄っています。

  3. ワイアラエ
    カウアイ島ワイメア地区にあるワイアラエのわが家を唄った3拍子のトラディショナル曲。後半はデル・ビーズリーのウクレレ・ソロが活躍し、往年のサンズ・オブ・ハワイを彷彿させます。

  4. スターティング・オール・オーバー・アゲイン
    ミシェル・フィリップの作で「やり直すことが正しいかどうかは分からないが、とにかくもう一度やってみよう」と唄うカントリー調の曲。

  5. リビング・イン・サヴァリン・ランド
    1993年1月の「ハワイ王朝崩壊100年」を機にハワイ人の主権回復運動が盛んになってきました。この曲はハワイ人が取り戻した土地に住む喜びを唄ったもので、イズ達3名の合作になります。

  6. オパエ・エ
    マウイ島カハクロアに住む娘が鰻にさらわれ、食べられようとしていたとき、彼女の兄は海の生物に片っ端から助力を頼むがみな断られてしまう中で、オピヒ貝が自分の殻で鰻の眼を塞ぐと言ってくれ、その間に無事救出できたという伝説にもとづく唄。

  7. アロハ・クウ・プア
    アルヴィン・アイザックスの作った「心を優しく撫でる花」すなわち可愛い乙女を唄った曲。イズはイントロやヴァンプとしてマカハ時代によく唄った「フアラライ」のイントロと同じコード進行を採用しています。

  8. ジョニイ・マホイ
    この曲にウクレレ・ソロで参加しているデル・ビーズリーの作品。「優等生ジョニイ・マホイ」のことを唄っている曲。イズのヒット曲「ハワイアン・スッパマン」と似たイメージを持っています。

  9. ラバー・オブ・マイン
    海の向こうにいる恋人の帰りを待っていると唄うラブ・バラード。ゲイロード・ホロマリアとマラニ・ビリューの共作。どこかで聴いたことのあるような親しみのある曲です。

  10. ヨコヅナ
    「天国から雷」のヒットに気を良くしたのか、それとも自分の体型から相撲取りに親近感をもっているのかこれがイズの相撲シリーズ第2弾。チャッキー・ボーイ・チョックの作で今度は貴の花と曙が主役です。もっとも97年1月にハワイ出身の関取「大和」が誕生しましたので、何年か先には武蔵丸と二人で横綱を張り、「武蔵、大和時代」などと呼ばれるかも知れませんね。(注:その後大和は廃業、フラの清水直子さんと結婚し、ハワイアン・レストランを東京に開店しました。)

  11. ナ・カ・プエオ/鍵穴のフラ
    1本マストのフクロウ号という船がダイヤモンド・ヘッドの見えるホノルル港を目指して航海する様を唄ったトラディショナル曲「ナ・カ・プエオ」とレナ・マシャードの作った「鍵穴のフラ」(原題は「カウオハ・マイ」)のメドレーです。「鍵穴のフラ」は「外出から戻ったら家に鍵が掛かっていた。そこで鍵穴から覗いてみると四つ相撲の真っ最中」というちょっとアブナイ唄なのです。

  12. ザ・フライ :
    このアルバム最後の曲は1台のウクレレと打楽器だけをバックに小さな蠅の唄「ザ・フライ」を軽く唄ってオ・シ・マ・イというところ。お疲れさまでした。

    マット・コバヤシ 


    Jam Selections