CDジャケット写真

 

ロビ・カハカラウ

「 シスタア・ロビ 」

レイ・レコードLEIR-0026

KANAI'A KNRCD 1262 Sistah Robi
Robi Kahakalau



【 解  説 】

■ ロビ・カハカラウ  1996年度ナー・ホークー・ハノハノ・アウォード(ハワイのグラミー賞)で栄えある女性ボーカリスト賞とアイランド・コンテンポラリー・アルバム賞という2つの大賞を受賞したロビ・カハカラウのソロ・アルバム「シスタア・ロビ」をお届けしましょう。

 今回のナ・ホク賞では前年に引き続きケアリイ・ライシェルがレイ・レコードからリリースされたセカンド・アルバム「想い出のレイ」を対象として男性ボーカリスト賞など4つの大賞を受賞しました。ロビはこの「想い出のレイ」にゲスト・ボーカルで参加しておりますし、ハワイアン・スタイル・バンドのアルバムにも参加していましたが、この「シスタア・ロビ」が自分自身のフアースト・ソロ・アルバムなのです。

 このアルバムは彼女の親友ダイアン・ホーと姪のイイニマイカラニ・カハカラウが「シスタア・ロビ・プロジェクト」をつくり、なんと36名ものミュージシャンが演奏に参加して完成しました。オーケストラならともかく、ハワイアン音楽のソロ・アルバムにこれだけの人数が参加するのは極めてマレな事件です。これもひとえに彼女の人柄による交際の広さを物語っていると言えましょう。彼女と協同して曲を選定したフィジ・ヴェイコソが11曲中8曲に参加している他は、みな交代で2〜3曲ずつ楽器や唄で参加しているという楽しいアルバムができあがりました。

 さらにこのアルバムの最後にはユニークな曲が入っています。彼女の父親で有名なジャズ・ベーシストのボブ・カーター(クレジットにあるポップス・カハカラウのポップスとは「お父チャン」の意味)の友人達がハリウッドに集まって録音したインストルメンタル曲がそれです。「コハラ・マーチ」という曲名はどうも??ですが、演奏自体はあの有名なボビー・ハケットのコルネットのリードで大変ノッています。 ナー・ホークーの授賞式ではロビを含め各部門の受賞者のかなりの人達が彼らの母国語(マザー・タング)であるハワイ語を交えて挨拶をしました。彼女は両親が住んでいた関係でハワイからはるか離れたドイツで生まれましたが、ハワイ語を一生懸命勉強した結果ハワイ生まれのハワイ人よりも正確なハワイ語をマスターし、友人のアルバムのハワイ語の検証を手伝ったりもしていました。この実力が彼女のスピーチにつながっているのでしょう。ちなみに彼女の姉クー・カハカラウもハワイ語のスペシャリストとして有名で、このアルバムでも新しいハワイアン音楽ピイ・マイ・カ・ナルの作詩をして彼女にプレゼントしました。

■ シスタア・ロビ

 ハワイの人たちは尊敬する友人のことを、相手が男性なら「ブラダ」とか「ブラ」、女性なら「シスタア」、年配の女性は「アンティ」、男性のことは「アンクル」と呼んでいるようですが、ロビも皆から「シスタア」と親しみを持って呼ばれています。唯一の例外はマカハ・サンズのメンバーで、あちこちの演奏会に連れて行った彼女のことを「ブラダ・ロビ」と呼んでオンナ扱いをしないのがかえって嬉しいとスピーチの中でロビは話していました。

 36人もいるミュージシャンの全てを紹介するスペースはとても無いので、主なメンバーをベーシストから紹介していきましょう。まずローランド・カジメロです。言わずと知れたカジメロ兄弟の弟で、兄のロバートがピアノを弾くときはベースを、そしてベースに移るとギターを弾いている人物。ロビのお父さんがアップライト・ベースを弾くジャズ・ベーシストのため親近感があるようで、お母さんがローランドのベースを聴くたびに感激の涙を流すというエピソードもご披露されました。

 デーヴ・イナミネはハワイアン・スタイル・バンドからヘルプに来てくれました。キモ・ベルは今年のナ・ホクでアルバム・オブ・ジ・イヤー賞など4つの大賞を獲得したナ・レオ・ピリメハナのアルバムをはじめ数多くのグループと共演しています。ロビは彼のことを「誰とでもプレイするキモ」とちょっとアブナイ表現で紹介していました。 ギターのショーン・ナアウアオもこのアルバム製作の中心人物のひとり。彼はマナオ・カンパニーの出身で自分自身のアルバムもリリースしています。

 ウクレレのトロイ・フェルナンデスとギターのアーニイ・クルス・ジュニアはご存じカアウ・クレイター・ボーイズを組んでいたデュオ。トロイのウクレレ・テクニックはクウ・ホアとカ・オーパエで堪能いただけると思います。彼がウクレレを介して若い人達に音楽の楽しみを伝えていることで、ロビは大変尊敬しているとのことでした。

【 曲目の紹介 】

■ クウ・ホア:「ホノルル・シティ・ライツ」でデビューしたケオラ&カポノ・ビーマーの祖父ポノ・ビーマーの作品。ロサンゼルスに仕事で滞在中、故郷ホノルルに残してきた子供たちを想って作った曲です。

■ カウアイ・ナニ・ラー:カウアイ島の美しさを讃えてつくられたフラ・ソング。ワイアレアレは世界一の降雨量を誇る山の名前。モキハナはカウアイ島の島花。そしてマノカラニポーは島の支配者であった人の名前です。

■ テイク・ケア・オブ・ミー:シーケンサー担当のマイケル・グランデとフィジ・ヴェイコソのラップ風リズムによる作品。「何度か失恋したけれど本当の恋がしたい」とロビが歌っています。

■ フォー・ア・リトル・ラブ:「こんな小さな恋でも私は貴方の近くに居たいので何でもやり遂げるわ」という曲。ロビ以外で唯一の女性シンガーのレイチェル・ゴンザレスが澄んだ声でバックをつとめます。

■ ピイ・マイ・カ・ナル:ロビのお姉さんクー・カハカラウの作詩になる波乗りをうたった軽快な曲。ドラムはお兄さんのジョン・カハカラウが担当するという兄弟総出のナンバーです。

■ マークア:今度はロビの作詩作曲のナンバー。マークアというのはオアフ島西端にあるひなびた村。この場所であれば(白人に迫害されている)ハワイ人も安心して暮らせると歌っています。

■ テ・ノオ・ネイ・アウ:つぎはガラッと変わってラロトンガの曲になります。バックのミュージシャンもタヒチのバンジョーとかトエレ等々ユニークな楽器で参加しています。

■ アイ・キャント・メイク・ユー・ラブ・ミー:「どうやっても貴方が私のことを愛してくれるようにはできないのが悲しい」という歌です。

■ ゴッド・ブレス・ザ・フール:「神様、このおろかな私の願いを叶えていただけませんか?」という歌。サビ部分からの掛け合いがちょっとウィ・アー・ザ・ワールドのイメージです。

■ バイ・ザ・リバー・オブ・バビロン:このアルバムの中心人物ロビ、フィジ、ショーン3名のボーカルにジャズ・グループのアウト・テイクスからサックスのデビッド・チョイが加わりました。

■ カ・オーパエ:モロカイ島ハーラヴァで取れるオーパエというエビをうたった歌。カというのは英語のザに相当する冠詞です。

■ コハラ・マーチ:ロビの「お父チャン」を中心としたインストルメンタル。ただし本当の曲名は「マウイ・チャイムス」もしくは単に「チャイムス」の筈ですが・・・。

マット・コバヤシ 


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