魅惑のウクレレ名曲集
「魅惑のウクレレ名曲集」

ユニバーサル・ミュージックEJS 3040

ハーバート・オオタ、
サーフサイド・ストリングス・オーケストラ

ポリドール・レコードの復刻版
ハワイアン音楽評論家であった故・早津敏彦氏が克明に記録しておられた日本発売のハワイアン音楽アルバムのリスト 作成を、早津氏の没後に引き継いでいらっしゃる小山慎一郎氏から先日このCDを送って頂きました。小山さんはこのCD をご近所のスーパー・マーケットで発見されたとのことですが、これはまちがいなく1971年に日本ポリドールからリリー スされたオータサン(ハーブ・オオタ)のステレオLP「南国の夜」(POLYDOR MR-3169)のオリジナル・テープから の貴重な復刻版なのです。
HERB OHTA DISCOGRAPHY (3/4) 」No.36を参照してください。
内容は30歳代という若い頃のオータサンが弾くハワイアン音楽アルバムですので、現在の円熟した演奏とはまた違った迫 力のある演奏で、それでなくても数少ない「オータサンのハワイアン音楽アルバム」という意味からも見逃せないCDと言 うことができます。

曲目紹介
このCDには解説文が挿入されていますが、一応簡単な紹介をいたしましょう。

1) 南国の夜:
日本の市場を意識して、「私たちに馴染みのあるハワイアン音楽」として採り上げられたこの曲も、原曲は 「ヴェラクルスの夜」というラテン・ナンバーでした。CDの解説文で「灰田勝彦も唄った」とありますがこれは完全 な誤解です。灰田勝彦の唄った「南国の夜」は兄の灰田晴彦(NUA創設者、灰田有紀彦の旧名)が作曲し、永田哲夫 が作詞をした同名の曲のことであって、混乱を避けるためにこちらの曲を「南の夜」と呼ぶこともあります。

2) ひき潮:
ハープの名手、ロバート・マックスウェルが作曲したこの曲は、ウクレレの音色がハープに似ていることもあ り、オータサンのレパートリーとして、よく演奏されます。ここでもウクレレの音がバックとよく調和しています。

3) ダヒル・サ・イヨ:
この曲は元来フィリピンの音楽でしたがハワイへ渡ってヒットしました。ちょうど日本からの「こ こに幸あり」がハワイでヒットしたと同様のケース。ここでは珍しくバースと思われる部分も演奏されています。

4) ケ・カリ・ネイ・アウ:
C.Eキングが1925年にオペレッタのデュエット曲「君を待つ」として作りましたが、1958 年にA.ホフマン達が「ハワイの結婚の唄」というタイトルで英語の歌詞も変更したものを発表し大ヒットしました。

5) ラハイナルナ:
タイトルは「ラハイナの月のこと」と解説されていますが、これは解説者の誤解でしょう。歌詞に「私 は峡谷の島のラハイナ、ラハイナルナへ行こうとしている」とあるように明らかに地名を指していると思われます。

6) ハーバー・ライツ:
ポピュラー曲「港の灯」として一般に知られている曲。ハワイアン音楽の雰囲気も持っています。

7) 珊瑚礁の彼方に:
ハワイが好きでイギリスから移住したピアニストのジャック・ピットマンが作った悲恋の唄です。

8) ブルー・ハワイ:
プレスリーの唄として知られていますが、元々はアメリカ映画「ワイキキの結婚」主題歌のひとつで ビング・クロスビーが唄いました。なおこの映画の主題歌「スィート・レイラニ」はアカデミー賞を獲得しました。

9) 小さな竹の橋:
山口軍一のスチール・ギターも加わりハワイアン音楽の雰囲気が溢れていますが、この曲は米本土でつ くられたハワイの「カルア」にある架空の橋上での恋物語の唄なのです。カルアは地名、人名として多用されます。

10) ハワイ:
このCDのオリジナルLP録音時期より5年前に封切られたばかりのアメリカ映画「ハワイ」の主題歌で、 同名の曲が多い(オータサンの作品にもあります)ため、この曲は普通「アイ・アム・ハワイ」と呼ばれています。

11) ヤング・ハワイ:
このアルバム唯一のオータサンのオリジナル曲。彼はこれ以外にも沢山の作品を作っています。

12) バリバリの浜辺で:
「小さな竹の橋」同様米本土製のハワイアン音楽で、これまた架空の浜辺で逢った女性との恋物 語です。「バリバリ」にしても「バリハイ」にしても米本土人にとってポリネシア的な響きがあるのでしょうね。

13) 真珠貝の唄:
その昔、ハワイ王朝時に開催されたソング・コンテストの優勝曲「プープー・ア・オ・エヴァ」をハワ イ・コールズのウェーブリー・エドワーズがレオン・ポーヴァーと一緒に手直しした曲で世界中で大ヒットしました。 これに気を良くしたポーヴァーは、似たイメージの「タイニィ・バブルズ」を作りふたたびヒットさせました。

14) アロハ・オエ:
ハワイ王朝最後の王であるリリウオカラニ女王の代表的な作品。アルバムの最後を飾るにふさわしい 荘重なアレンジによるサーフサイド・ストリングスの演奏をバックにオータサンが華麗にメロディーを奏でます。

マット・コバヤシ 


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