ジャズ界最高のコンボ 「モダン・ジャズ・カルテット」
モダン・ジャズ・カルテットとは、昨年11月のジャズの小径でご紹介した、ミルト・ジャクソン
をはじめとして、ピアノのジョン・ルイス、ベースのパーシー・ヒース、ドラムのコニー・ゲイと
いう、ばりばり、プロフェッショナルな4人組でした。というのも、バイブのミルトが昨年、他界
してしまった為、グループはそこで、活動休止となったからです。このグループの特徴は、ジャズ
といえば、飛び散る汗と煙とお酒、ファンキー、グルービーなどど連想されますが、このグループ
はちょっとばかし、アカデミックです。クラシックの弦楽四重奏を聴くような、ジャズらしからぬ
緻密さと構築美があります。昔、このグループが活躍した、50年代後半から60年代にかけて、
結構、ジャズに否定的だったエグゼクティブな人々もこのグループの演奏には足を運んだ、という
逸話が残っていますが、それもありなん、と納得します。こんな雰囲気のジャズもあるんだなあ、
という感じで耳を傾けていただければ幸いです。
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MJQ / DJANGO
MILT JACKSON (vib) JOHN LEWIS (p)
PERCY HEATH (b) KENNY KLARKE (ds)
1.DJANGO
2.ONE BASS HIT
3.LA RONDE SUITE
a)piano b)bass c)vibes d)drums
4.THE QUEEN'S FANCY
5.DELAUNAY'S DILEMMA
6.AUTAMN IN NEW YORK
7.BUT NOT FOR ME
8.MILANO
最初に一言。このアルバムは名盤中の名盤。そして僕が、生まれて初めて買ったモダンジャズのアルバム。

なぜ、最初のモダンジャズのアルバムが、モダン・ジャズ・カルテットだったのか。それはというと、昔、
FMレコパルという雑誌で、解散とラストコンサートのエピソードが中心のコミック(確か石ノ森章太郎だっ
たと思う)を高校時代に読んで、なんだかとっても感動し、その感動をふっと思い出して、大学1年の時
(1978年)に購入した、というのが経緯。ジャケットデザインもなかなかで、どきどきしながら、レコー
ドプレイヤーの針を落としたのを覚えている。

さて、いきなり耳にとびこんでくるのが、アルバムタイトルの「ジャンゴ」だ。哀愁を帯びたマイナー調の印
象的なテーマ提示から、緊張感溢れる展開が広がる。MJQでのミルトは、凛として、スインギーで素敵だ。
その「素敵さ」を存分に発揮して「ジャンゴ」は定番になった。2曲目の「ワン・ベース・ヒット」、3曲目
の「ラ・ロンド組曲」は、4人のメンバーの職人芸のショーケース。舌を巻くような、味のある演奏が繰り広
げられます。3曲目の「クイーンズ・ファンシー」は、ルイスの「王朝趣味」というか、気品と威厳のある
テーマ部と、いかにもお洒落な洗練されたジャズ的雰囲気のアドリブ部と、好対照な演奏が印象的です。そし
て、このアルバムの「隠れ名演」は、6曲目の「ニューヨークの秋」。ミルトの奏でるバイブの響きが、否が
応でも、センチメンタルな気分にさせ、枯れ葉散るセントラルパークを彷彿とさせる素晴らしい演奏です。最
後の曲「ミラノ」は、これからのMJQの特徴の一つを如実に物語る曲です。

ファンキーとは無縁な、クラシックの室内楽を想わせるような洒脱な演奏。これもジャズなんです。午後のお
茶のひとときにどうぞ。

MJQ / CONCORDE
MILT JACKSON (vib) JOHN LEWIS (p)
PERCY HEATH (b) CONNIE KAY (ds)
1.RALPH'S NEW BLUES    5.SOFTLY AS IN A MORNING SUNRISE
2.ALL OF YOU        6.CONCORDE
3.I'LL REMEMBER APRIL
4.GERSHWIN MEDLEY
  Soon 〜 For you,For Me,Forever-more 〜 Love Walkde In 〜
  Our Love Is Here TO Stay
このアルバムの最大のハイライトは「朝日のようにさわやかに」。MJQの十八番であるが、このアルバムが
初演。もともと、この曲、テーマが、やや哀愁を帯びていて美しい旋律でできているため、このテーマを、バ
イブのミルト・ジャクソンが奏でるだけで、キュンとしまう。そして、その背後で少ない音数で、しっかりと
バッキングするピアノのジョン・ルイス。

このジョン・ルイスの音数の少ないピアノが、結構、僕は好きで、ハードバップ、ファンキー華やかな時代
に、音数の少ない、贅肉の無いピアノを演っていたルイスって結構、格好良いって思わない?ジャズ特有の汗
と煙という感じではない、一種、エレガントな、クラシックの室内楽のような雰囲気が、僕は、結構、気に
入っているのだ。このルイスのキャラクターが、モダン・ジャズ・カルテットの屋台骨となっている。

ミルトも、この雰囲気が気に入っていたと僕は思う。ミルトは、MJQの中では大人しく、ソロの時の方が
ファンキーで生き生きしているから、MJQのミルトはいまいちだ、という見方も定説めいてあるのだが、そ
れは当たらないと僕は思う。MJQの世界が、居心地悪いのであれば、こんなエレガントで、丁寧で、心から
優しい、「朝日のようにさわやかに」のテーマが演奏できないだろう。MJQには、ルイスも必要だが、違う
意味でミルトも必要なんだ。

それと、とても地味だが、ドラムスのコニー・ケイの職人気質的なドラミングとパーシー・ヒースの堅実な
ベースも、かなり味があって、じんわりと心にしみてくるのだ。MJQというグループは、この4人の組み合
わせ以外では考えられない。そんな、千載一遇の組み合わせで、ジャズ界一のユニットの、職人芸的な、室内
楽的な、味わい深い演奏を心から味わってみて下さい。このアルバムは、そんなMJQをじっくり味わえる、
格好のアルバムです。

MJQ / FONTESSA
MILT JACKSON (vib) JOHN LEWIS (p)
PERCY HEATH (b) CONNIE KAY (ds)
1.VERSAILLES         5.BLUESOLOGY
(PORTE DE VERSAILLES)   6.WILLOW WEEP FOR ME
2.ANGEL EYE          7.WOODYN YOU
3.FONTESSA
4.OVER THE RAUNBOW
このアルバム、MJQのアルバムを紹介する雑誌のレビューでは、なかなか、選択されることが少ないアルバ
ムなんだけど、ジャケットデザインも、ジャズらしからぬ垢向けしたもので、なかなかお洒落なアルバム。

まず、出だしが「ベルサイユ」という、ルイスの「王朝趣味」がモロに出た曲ですが、熱気とスピード感が溢
れ、素晴らしい出来だと思います。2曲目は、スタンダードの「エンジェル・アイズ」。ミルトのバイブが語
るように旋律を紡いでいきます。「冷たい熱気」とでもいいましょうか、ミルトの独壇場ですね。

そして、このアルバムのハイライトは、アルバムタイトルにもなっている、3曲目の「フォンテッサ」でしょ
う。全編通じて、11分の大作で、MJQのそれぞれのメンバーの職人技の全てが凝縮されています。哀愁溢
れる曲の雰囲気の中で、メンバーそれぞれが「冷たい熱気」と「静かな緊張感」を発散しまくって、唯一無二
の演奏を繰り広げます。ほとばしる熱気と飛び散る汗ではない、クリスタルな輝きと冷たい熱気。これもジャ
ズ。ジャズというジャンルの懐の深さを感じさせてくれる、MJQの名演です。

そして、僕の大のお気に入りが、4曲目の「虹のかなたに」です。映画の「オズの魔法使い」の中で出てくる
挿入歌ですが、本当にタイトル通りの情景を彷彿とさせる名曲で、特に、MJQのクリスタルな演奏は、さら
に、この名曲の魅力を最大限に引き出し、目の前に虹が、パーッと広がるが如くです。シンプルですが必聴の
名演です。

必聴の名演といえば、6曲目の「柳よ泣いておくれ」も名演でしょう。とりわけ、ルイスの音数の少ない効果
的なバッキングとミルトの奔放なアドリブがこの演奏の最大の魅力でしょう。聴き逃せません。MJQのアル
バムに駄盤はありませんが、このアルバムはとりわけ僕の愛聴盤といえましょう。
おまけ : ラスト・コンサート・ライブ
1974年、先で触れた「解散コンサート」の完全盤です。まあ、解散といって
もこのあと、1981年には再結成されるわけで、このアルバムのタイトルだけ
見れば、ちょっと興ざめする感じがありますが、どうしてどうして。MJQの
ヒット曲のオンパレード、しかも、全てが完璧な演奏で、心の底から感動を覚え
る演奏です。きっと、この時は、本当に解散するつもりだったんでしょうね。
MJQのライブの凄さと、MJQのベスト盤を求める方には、うってつけのアル
バムといえます。

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