『リー・リトナー』
L.A.の超テク・ギタリスト

今回の特集は、リー・リトナーです。フュージョン初期の人気者で、70年代後半のフュージョン・ギター・
フリークは、猫も杓子も、リー・リトナーのコピーに熱中していました。

今回は、そのリー・リトナーの初期の名盤をご紹介します。アルバムを通して聴くと、フュージョン・ギター
の代表的なスタイルは、これらのアルバムの中につまっており、フュージョン・フォーマットのギターの
ジャンルは、結構、早い時期から、リー・リトナーの手によって確立されていたことが判ります。

ここでは、彼の代表作2作をご紹介します。



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Lee Ritenour / Gentle Thoughts

1.Captain Caribe/Getaway
2. Chanson
3. Meiso
4. Captain Fingers
5. Feel Like Makin' Love
6. Gentle Thoughts







このアルバムがリー・リトナーの出世作。後には「ソフト&メロウ」がウリの大人のギタリストとして
名声を馳せるリトナーが、ここでは、溌剌としたハードなギターを聴かせて、とても充実したアルバム
に仕上がっている。

さて、まずは、一曲目の「キャプテン・カリブ〜ゲッタウェイ」のメドレーだろう。この曲は、リー・
リトナーの出世曲のみならず、フュージョンの名曲のひとつとして挙げられるべき名演だろう。デイブ・
グルーシン作曲の「キャプテン・カリブ」は、出だしのテーマ部から、非常にキャッチャーなメロディー
で親しみやすく、リトナーやベースのアンソニー・ジャクソンのテンションの高いハイテクで充実した
演奏で、聴く者を飽きさせないどころか、ぐいぐい引っ張っていきます。

2曲目・3曲目は、うって変わって、後のフュージョンの代名詞にもなった「ソフト&メロウ」な演奏と
なりますが、演奏の充実度が高く、曲も良く、後に過剰生産されたフュージョンが陥った「テクニックに
頼ったソフトでメロウで単調な演奏」とは違い、結構、聴き込ませます。

4曲目の「キャプテン・フィンガーズ」は、リトナーのギターの独り舞台です。当時のギター・キッズの
あこがれの曲でした。今、聴くと、ベースのアンソニー・ジャクソンも結構、いけてるんですよね。
5曲目の「愛のためいき」は、リトナーの面目躍如。ソフトで、繊細でいながら、一本芯の通ったタッチ
で「聴かせます」。デイブ・グルーシンのキーボードもなかなか味わい深く、この「愛のためいき」は、
フュージョンで結構カバーされてますが、このリトナーの演奏は、五指に入る名演ではないでしょうか。
最後の「ジェントル・ソウツ」は、後のリトナーを思わせる佳作。

このアルバムのリトナーのギターを聴いていると、フュージョンギターとして、ロックギターとは違った
特徴を見せるには、「ソフト&メロウ」な感覚は必須だったのかもしれないと思ってしまう。




Lee Ritenor / The Captain's Journey

1.Captain's Journey Pt. 2: The Calm/Pt. 2: The Storm
2. Morning Glory
3. Sugar Loaf Express
4. Matchmakers
5. What Do You Want?
6. That's Enough for Me
7. Etude






出世作「GENTLE THOUGHTS」に続くリーダー第3作目。ここでのリトナーは、自信に満ちあふれた
プレイを縦横無尽の繰り広げる。ソフト&メロウ、時に鋭く、時に煌めくようなテクニックを披露しつつ、
ストリングスを入れた大仕掛けのアレンジや、ファンキーなボーカル入りの曲、ドラマチックな曲の展開
など、後のフュージョンのスタンダードとなる演奏スタイルの、ほぼ全てが、ショーケースの様に並んで
いる。

特に、このアルバムは、フュージョンのギタリストがリーダーのアルバムとしては最高のものだろう。
このアルバムと同じコンセプト、同じ展開、同じ構成で、このアルバムを凌駕したフュージョン・ギタリ
ストのアルバムは無いと思う。ジョージ・ベンソンは、元、純粋ジャズのギタリストの資質を活かして、
煌めくようなテクニックに走るより、味のあるギターと(ベンソンのギターテクニックがリトナーに劣って
いると言っているわけでは無い)メロウなボーカル路線で一世を風靡したし、パット・メセニーはあくまで、
純ジャズの世界からフュージョンへアプローチし、決してジャズのテイストを忘れず「純ジャズからフュー
ジョンへのアプローチ」にこだわった。

そういう意味で、このアルバムから判るのは、リー・リトナーは、フュージョンから生まれた生粋のフュー
ジョン・ギタリストなんだ、ということだろう。その生粋のフュージョン・ギタリストの名演中の名演は、
3曲目の「SUGARLOAF EXPRESS」。この曲の中でのリトナーのプレイは、リトナーのギターの特徴と
長所を余すことなく伝えている。甘く流れることのないソフィストケイトされた、それでいて力強いギター
ソロ。打ち込みやサンプリングでは出せない「ハイテクニックで人間味のある」リズム。

そう、この時代のフュージョンの名演は、まだまだ、人間が、人間の手で、リズムを刻み、人間の手で、
メロディーを奏でていた。プロのミュージシャンが、プロとして君臨し、最高の羨望を集めていた頃の
素晴らしい演奏の数々。僕は好きだ。




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