論文概要


子どもを犯罪から守るまちづくり

   『チャイルドヘルス』 特集「子どもたちを危険から守る」

       タウンクリエイター代表  松村 みち子

まちの中に存在する危険な空間

 内閣府の資料によると、2004年(平成16年)1月〜12月に子どもが被害者になった
犯罪は35万5,675件あり、これは全刑法犯罪の被害件数の1割強になるということです。
子どもが被害に巻き込まれやすい犯罪で重大なものに「誘拐」「わいせつ行為」「暴行・
恐喝」がありますが、上記の数字にはこれら重大な犯罪行為も含まれています。わいせつ
行為の被害者は女児だけに限らず男児のケースも発生しています。
 子どもは一体どのような場所で被害を受けているのでしょうか。
 千葉大学教授の中村攻氏は都市計画の専門家として子どもが犯罪に巻きこまれる実態を
丹念に調査し、子どもたちが公園、道路、学校、商店街など、まちの中のあらゆる場所で
被害を受けていることを明らかにしました。1,2) たとえば都市の中にある公園の、実に
8割以上の公園で子どもたちは犯罪にあっています。
(略)

学校を犯罪から守る

 一つの例として、学校の安全をどう守るかについて述べます。
 学校が殺害現場となる事件は、たびたび発生しています。2001年(平成13年)6月に
は大阪教育大学附属池田小学校に出刃包丁を手にした男性が侵入し、児童8名を刺殺し、
教師を含む10数名に重軽傷を負わせる事件が発生しました。私は事件発生5ヵ月後に大阪
教育大学教授ら研究者仲間と事件現場ならびに池田小学校仮校舎の防犯体制を視察しまし
た。また学校での事故・災害について海外との比較調査をしました。2)
 わが国の学校は一般的に外部に開放的であり、誰でも、どこからでも、自由に出入りで
きるような構造になっています。池田小学校でも、犯人は開け放たれた通用門から学校に
侵入しています。これに対して欧米系の学校では、校舎を道路面に配置し、あたかも城壁
のようなつくりにして、受付に管理責任者を置いて外部からの侵入を厳重に管理していま
す。(図 ならびに 以下 略)

地域で子どもを守る (略)

引用文献
1) 中村攻:子どもはどこで犯罪にあっているか.  晶文社,2000
2) 家田重晴, 阿部明浩, 松岡弘, 松村みち子, 渡邉正樹:子どもの危機管理の実態と
その改善方策に関する調査研究.(財)伊藤忠記念財団, 2004

本論文は、診断と治療社 発行『チャイルドヘルス』2006年1月号(Vol.9 No.1)
に掲載されたものの概要です。
本論文の著作権は、株式会社 診断と治療社が保有しています。
論文の複写は、(株)日本著作出版権管理システム(03-3817-5670)まで
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