1000万部を超える超ベストセラーが存在する。

戦前の日本家庭の必需品となった「赤本」。
人々の健康のため尽くした、偉大な人物を
ここに紹介します


築田 多吉 氏       
     (つくだ たきち 1872 〜1958)



築田多吉 氏に贈られた

東郷元帥肖像牌
  (三笠保存会)
山崎 光夫 氏 著書 「赤本」の世界  より 以下抜粋紹介します。




通称、「赤本」と呼ばれている「家庭に於ける實際的看護の秘訣」
(副題・實地方面の養生手当と民間療法、女の衛生と子供の育て方)
という大部の本は、築田多吉(つくだ たきち 1872 〜1958)によ
って書かれた。

「赤本」は戦前に生まれた日本人ならまず知らない者はないというほど、
人口に膾炙している本である。
だが、「赤本」の名は知っていても、正式タイトルである「家庭に於ける
際的看護の秘訣」の表題は知らないという奇妙な現象も起きている。
不思議な"家庭医学書"といえるだろう。

「赤本」は大正十四年(1925)2月に初めて上梓された。以来、版を重ね、
2000年10月刊行本は、1617版で、累積発行部数は1000万部を優に
超えている、超べストセラ-である。

ひと昔前、日本の各家庭には富山の置き薬が置かれていたものだが、
同じように「赤本」も一家に一冊、常備されていた。
今日のように医学もそれほど発達せず、結核が死の病といわれ、
また、健康保険制度も整備されていない時代だったから、配置売薬や
「赤本」は庶民の強い味方だった。


今日、健康雑誌が多数刊行され、毎号、健康にまつわる情報や健康法などが
提供されている。むしろ氾濫状態といえる。
こうした健康雑誌の企画の"根"はほとんど「赤本」から出ているといっても
過言ではない。
指圧療法、健康摩擦、マッサ-ジ、カイロプラクティック、灸、腹式呼吸法、
食事療法、青汁療法など、これら現代人にも支持されている健康法の源は
「赤本」にある。

だが、こうした健康雑誌の記事の中には"多吉の精神”を忘れ、また、方法を
はきちがえた内容が見受けられる。

「赤本」は日常生活に密着した健康生活ガイドブックである。刊行以来、
七十五年以上を経て、いま"多吉の精神"をたどり、原点を振り返るのは
決して無駄ではないだろう。

「赤本」通りに生き、多吉は八十六歳で天寿を全うした。
「赤本」の表紙の裏に多吉の詠んだ歌が短冊風に記されている。

   人の行く裏に道あり
    病む人の近路をしらで
      逝くぞかなしき

「赤本」に書かれた”健康道"を知らずに早死にする愚を嘆いているのである。
いまこそ"多吉の精神”を学びたいと考える。



第17回新田次郎文学賞 受賞者
       山崎 光夫 氏 の著書

           
「赤本」の世界 
                        民間療法のバイブル
      
                    文春新書 発行

赤本の世界

著者 
築田 多吉氏 が広めた和漢薬
  製法を公開し現在でも広く使用されています。

   梅肉エキス

   卵 油