白鷺が一羽 一輪の白菊のように
汚れた河のほとりで 空き缶に埋もれ
静かに水を みつめてる
かくれんぼを知らない子供が増えたって 誰かが話してた
ひとり暮らしの老人達が増えたって 誰かがつぶやいた
僕がこんな風におまえを抱きしめている時に
何処かで誰かが お腹を空かせて死んでゆく
ああ いつだって 彼等を追いつめているのは僕だった
そう そのくせに 手を差しのべるふりをするのも僕だった
それが時代の正体だと嘘を承知で
笑える程に 大人を演じ
ふと気がつけば 僕は卑怯な顔になっていた
世論調査では国民の九割が 中位満足してるって
何かとひきかえにこの国も
一流の服を手に入れた 僕がこんな風にお前を抱きしめている時に
どこかで誰かが ピストルに射たれて死んでゆく
ああいつだって 失いたくないものたちが多すぎて
そうそのくせに 失くしたあとで気付くものばかり
それが幸福の証だと嘘を承知で
悲しみながら 迷いながら
それでも精一杯に 誰もが現在を生きている
2016年の夏に子供が 今の僕の歳になる
その時代は彼に自由に唄を唄わせてくれるだろうか
卑怯な顔になって生きることに彼が迷う頃に
僕は何かの答えを出せるだろうか
JASRAC作品コード:002-7994-3
−音楽のページ−
空缶と白鷺
作詞・作曲:さだまさし