Vanish in Night


作・丸呑みすと様


 
「お疲れさまでしたぁ」

とろけるような甘い声に表情を緩めたのは出入り管理のガードマンだった。
ここは港南ショッピングモールの従業員出入り口。
時刻は21時20分を過ぎたころだ。

「お疲れ様。気をつけて」
返事を返したガードマンに軽く会釈を返した鈴木富美香は20歳の女子大生だ。
このモールのフードコートにあるハンバーガーショップでアルバイトをしている。

大柄で健康美あふれるスタイルの富美香は、勤務時にはシニオンに纏めていた栗色の髪を下ろし、セミロングにしている。
明るい性格と癒し系のスマイルをもつ彼女は、同僚や客からの評判もよかった。

富美香は自宅のある集合住宅の自転車置き場に着いたところだ。
自転車で駅まで行き、帰りは駅からバイト先へ向かうのが彼女の日常だ。
ゆったりとした白いチュニックとデニムのショートパンツを着用している。
太腿の白さがいやに眩しい。

「ヒヒヒ…」

微かに聞こえた奇声に富美香は身を固くした。

「だ、誰?」

ヒュッ。


夜気を裂く音と共に飛んできた太い管が彼女の長い首に巻きつく。

「ぐ…」

解こうとするが外せない。
首を二巻きしてまだ50センチほど余った管の先端が蛇の様に鎌首をもたげ富美香の胸元へ吸いつく。そう、管の先端には吸盤のような物がついていた。

管の端が消えている物陰から一つの影が現れた。
2メートルを超える背丈。
筒のような頭部の両側には左右4つずつの眼のようなものがあった。
恐怖に見開かれる富美香の眼に映ったそれは、さながら手足をつけて巨大化したヤツメウナギだった。

「極上の獲物だ」

ヤツメウナギの怪人が呟くと、頭部の眼の様な物が点滅を始めた。

「!!」

一瞬、富美香の身体がピクンと動いたかと思うと、管がぶるぶる震えだした。

女子大生の肌がたちまち血色を失っていく。
彼女の眼から光が失われ、膝をつくように崩れる。

「まだだ、お前の全てを戴く」

やがて、辺りに異臭と湯気が漂い始めた。
チュニックの下に隠された90センチ超のバストが空気の抜けた風船のようにしぼみ始めた。富美香の体液を吸い尽した怪人の管は今度は細胞分解毒を注入し、女子大生の豊満な肉体そのものを溶かしてゆく…。

筋肉も内臓も、骨格さえも溶かされて啜り尽くされた富美香の存在した形跡は残された着衣だけだった。
サヴェッジショッカーの新怪人ヤツメウナギルの新たな犠牲者が出てしまった。