最後の夏休み


作・taka様



都内のある街で、二人の少女が買い物を楽しんでいた。
二人の名は美香と絵美、いずれも都内の小学校に通う五年生である。
成績は良いが控えめで友人の少ない美香と、成績はいまいちだが友人の多い絵美、正反対の二人が親友ともいえるほどの仲のことをクラスメイトや担任は少し意外な目で見ていた。
 この日のショッピングも、絵美が計画したものだった。美香は最初行かないと頑固に言ったが、結局絵美の何度にも及ぶ(少し強引な)誘いに根負けし、できるだけかわいい服装で出かけることにした。

 待ち合わせ場所には、すでに絵美が待っていた。ポニーテールに水色を基調とした服、それにパンストを穿いており、もう少し背が高ければ女子高生と勘違いしてしまいそうである。
(やっぱり絵美、綺麗・・・)美香は思った。
すると絵美も美香を見つけ、開口一番、

「美香、あんたなかなかかわいいじゃーん!」と言った。
今日の美香はピンクを基調としたワンピースを着ており、セミロングの髪型がとてもよく似合っていた。
視力が低いため眼鏡をしているが、それもなかなか似合っていた。
 二人はさっそく服屋や女の子に人気な店を回り、たくさんのものを買った。
その後少し疲れたので、広場のベンチに二人は腰を下ろした。
「今日はありがとう。楽しかったよ。」美香は言った。
「なんのなんの!また一緒に出掛けようよ!」と絵美は返した。
二人は顔を見合わせて笑い合った。その時だった。

「きゃーっ!」
二人の近くで女性の悲鳴が聞こえた。
二人が声のした方を見ると、ひとりの若い女性が、ゾウの牙と鼻、サイの角を併せ持った頭をした灰色のずんぐりした怪物に襲われているのが目に入った。
怪物が女性に触れると、女性は一瞬体が紫色に光ったと思うと、たちまち全身が無数の銀色のメダルに還元され、崩れ落ちてしまった。あとにはメダルの山だけがそこに残された。

 グリードのガメル・・・それがこの怪物の名である。
数百年前、人間の欲望から作られたコアメダルをきっかけとして誕生した五体の怪物、それがグリードであり、ガメルはその一人だった。
現代に甦った彼らは自身の体が不完全であることに気づき、完全復活のために必要な残りのコアメダル、及び体の維持に必要な大量のセル(細胞)メダルを集めることに奔走した。
やがてガメルは彼が愛する女性グリード、メズールと共に完全復活を果たしたが、間もなくメズールはこの世界のライダー、オーズに倒されてしまった。
その復活のためには、ガメルが手に入れたメズールのコアメダルに大量のセルメダルを融合させなければならない。
そのためガメルは、自身の力である触れたものをすべてセルメダルに還元させる能力を使い、人々を襲っていたのだ。

 そんなことは知らない美香と絵美は、突如目の前に現れたこの怪物に恐怖した。
ガメルは次のターゲットをひとりの男性に定め、勢いよく突っ込んだが、男性は間一髪これを躱した。
だが彼が寄りかかっていたベンチはガメルに触れられたことで大量のセルメダルと化してしまった。

「逃げよう!」

絵美の声にはっとした美香はあわてて逃げようとしたが、周りで逃げている人たちにぶつかり転んでしまった。
(痛い・・・)
必死に立ち上がろうとするものの、転んだ際足を激しく打ってしまい、よろよろとした動きしかとれない。
絵美はこれに気づき、美香のもとに駆け寄った。
「さあ、早く!」
絵美に励まされ、美香は絵美の手を取って走り始めた。
 だが、少し遅かった。
ガメルはターゲットを逃げ遅れたこの二人に定めた。そしてドスドスと走りよると、両手でこの二人に触った。
「あ」触れられた瞬間、二人は同時に声を上げた。
瞬間、二人の体は一瞬紫色に光ると、たちまち全身が銀色のセルメダルに還元されていった。
やがて完全にメダルに還元された二人の体は支えを失い、崩れ落ちた。あっという間に二人の少女は消滅し、彼女らが立っていたところにはセルメダルの山だけが残っていた。
 ガメルはそれには目もくれず、また新たなターゲットを求め走り出した。愛する者を甦らせたいという欲望のままに・・・