オーダーは貴女


作・丸呑みすと様

 メリーアンジェラといえば、ウエイトレスの制服が話題を集めたファミリーレストラ ンである。
胸を強調したブラウスや過激に短いスカート丈が、一時期騒がれたこともあり、
「可 愛くて、スタイルが良くないと似合わない」とまで言われている。
ここ、ベイサイドプラザ店はとりわけ美人が多いと噂されている。
杉山あずみはこの店でアルバイトする21歳の女子大生だ。
栗色の長い髪は、店に立つときはシニオンにして纏めている。
ブラウスのボタンが弾 け飛びそうな豊かなバストとむっちりとしたヒップは男性客からいつも視線を受けて いる。スリーサイズは88・60・88とたわわなものだ。
あずみは隅の席へオーダーを取りに向かった。そこに居るのはずんぐりとした体形の中年男だった。
「ご注文はいかがいたしましょう?」
いつもの様な笑顔でオーダーをとるあずみ。
「・・・君」
「は?」
「い、いや君の何かお勧めはありますか?」
「そ、そうですね。このグリルチキンセットなどは・・・」



「・・・で、あたしが届けた後も『おいしそうだねぇ』ってこっちの胸とか腿とか ジッとみてんのよ」 仕事が終わったあずみは更衣室で着替えながら、仲間たちとしゃべっていた。
「そりゃ、あずっちの胸ならね」胸に視線をやりながらバイト仲間の大下亜衣が応じ た。
あずみの一つ下の亜衣は、むっちりタイプのあずみに対し、スラッとしていた。
ただ しバストサイズはあずみとそう変わらない。
スリーサイズは89・59・84だ。
「まあ、ウチの制服なんか、モロ男の視線意識しすぎてるもんね」
亜衣が続けた。
「そう言いながら、年中ミニやショートパンツなのはだれよ」
あずみが返す。
二人は店を出た。路地裏を抜けた方が駅に近い。
あずみは水色のミニ丈ワンピースの上にクリーム色のタイニージャケットを羽織り、 ブーツをはいている。
亜衣はピンクのニットアンサンブルと黒のティアードミニを合わせ、やはりブーツで 決めている。 二人が路地を抜けようとしたとき、目の前をワンボックスカーが塞いだ。
「ちょ・・・何よ・・」
二人が身構えたとき、スライドドアが音もなく開き、何本も の黒い手が伸びてきた。
二人の娘はあっという間に車中に引っ張り込まれた。
車が走り去った。あとには何も残らなかった。
二人の家族が帰ってこない娘を案じて、店に問い合わせた頃には二人を地獄が待って いた。 あずみは目を覚ました。
(あたし、どうしたんだっけ、バイトが終わって、亜衣 と・・・そうだ、亜衣は!?) がばっと身を起こす。ひんやりとした薄暗い空洞だ。
「ふふふ・・・」
不気味な含み笑いのほうをあずみは向いた。
影が歩いてくる。そして含み笑いとともに微かな呻き声が聞こえてくる。
「!」
あずみの大きな目が一際大きく見開かれた。
それはまさに悪夢の中から這い出てきたような化け物だった。
2メートル程の巨躯、 幅も厚さもある。 さながら冷蔵庫が手足を付けているような姿だ。
何より異様なのはその顔だ。
顔全体が巨大な口だ。
その半開きの口から何かがはみ出 ている。
「・・・ああ、亜衣・・・」
大下亜衣だった。
わずかに胸から上が外に出ている。
「・・・あ・・ず・・ み・・・」
ぐったりとした顔を上げて助けを求めている。
不意に亜衣の半身が引き込 まれた。
喰われた。親友が目の前で怪物の餌食になったのだ。
「あああ――――――っ」
あずみの絶叫は空洞に虚しく響く。
「お嬢さん、今日私は注文させて頂きましたよ。貴女をね」
化け物の声に聞き覚えがあった。
あの客か!?
「美しいままの貴女をこのクチビルゲが丸ごと頂く。御一緒のお嬢さんもなかなか美味でしたが」
「いや、いやぁ――――」
逃げようとするあずみだったが、クチビルゲの僕であるア ントマンたちに取り押さえられてしまった。
後ろからかぶせるように呑み込みはじめる。
体を起こし、舌であずみの尻をぐいっと 持ち上げる。 肉付きのいい脚がバタつき、スカートの奥の白い布に包まれた部分がチラチラと見え隠れする。
ずるっ ブーツのつま先が口の中に滑り込んでいく。
今夜はじっくりと若い娘二人の、肉感的 な肢体を堪能することにした。
腹がゆっくりと蠕動し、恐怖と苦痛を餌食に味あわせながら押しつぶしていく。
あとは腐食したヘドロと化すまで・・・・。


(終)