イリス覚醒


作・恩田様



奈良県南明日香村―。

「ただいまぁ」
 
8月の蒸し暑い夕方、剣道部の練習から帰ってきた黒髪ロングの女子中学生・佐々木さやかは自宅の古い日本家屋の玄関を開けた。

「あ、今日は2人ともいないんだ」

2人は結婚記念日の今日、近鉄特急が停車する地方都市のしゃれたレストランで食事をすると言っていた。
妹のさなは友達の家にお泊り会。
さやかにとって、今日は家で一人でいる貴重な日だった。

麦茶を取り出した冷蔵庫には、笑顔の絶えない家族写真が。
農業の仕事はいろいろ余裕はないけれど、それでも家族は助け合って生活していた。

「ふぅ」

自転車をこいでいたせいでセーラーの夏服は汗で濡れ、かすかに13歳の女の子らしい初々しい白い下着が浮き出ている。
そのまま椅子に座り込んでふと部活の先輩の事を思う。
そばかすだらけで不器用でそれでも優しくて一生懸命な杉山先輩。
先輩の事を考えると胸がどきどきしてくる。
つい2年前まで村の男の子と野山を駆け回り秘密基地を作って遊んでいたさやかは、恋する乙女の顔になっていた。

お風呂が沸いたチャイムが聞こえ、さやかは思い出したかのように浴室に向かう。
赤いスカーフ、そしてセーラー服のファスナーを外し、スカートを床に脱ぐと洗濯機の上に畳む。
背中に手を回してブラジャーのホックを外し、ピンクのセンターリボンがかわいい白いブラジャーの上にお揃いのパンティが置かれた。

 お風呂場でプラスチックの椅子に腰かけてシャワーで体を洗う。
柔らかな女らしさが少しだけ出てきたお尻がシャンプーをしようと前かがみになったときに弾み、スポンジで痛くないように優しく洗われている小さな膨らみは固くプルンと弾んで花恥ずかしい桜色の乳首が気持ちよさそうに泡で愛撫される。
少女がシャワーで石鹸を洗い落としながらマッサージするように柔らかく思春期の乳房をたゆませると、杉山先輩の優しい笑顔が脳裏に浮かぶと同時に甘い刹那が未成熟な体に走り、少女は「ん」と声を上げる。

「ふぅ」

さやかはお湯で泡を洗い流し鏡を見た時だった。
自分の背中に何かうねうねと気持ち悪い触手が蠢いているのが見える。
はっと振り返ると2メートルはある悍ましい軟体動物のような異形の存在がグロテスクに女子中学生の前に立ちふさがっていた。

「いやぁっ」

恐怖のあまりシャワーのノズルを投げつけられたのが合図のように巨大な触手がそれこそ発射されるかのように目の前の新鮮な餌食の一番おいしそうな果実のような膨らみに発射され、鋭い外骨格の先端がまだ膨らみかけの敏感な女の子のシンボルに、幼い乳首を裂くように突き刺さる。

「ああああああっ」

少女は激痛と恐怖に悲鳴を上げた。泣き叫び痙攣する小鹿のような乙女。
邪神イリスは牙を突き刺したまま上下に動かし、5年生の時から少しずつ少しずつ膨らんできた固い敏感な思春期の女の子の組織を引き裂くような凄まじい激痛を少女にもたらす。

「きゃぁああっ、あっ、うっ…痛い、痛い、助けて、やめてぇええ、あっあっ」

じゅ…。
彼女の体から何かが吸い取られていく。
その鼓動とともに彼女の全裸全体にひきつるような激痛が走り、さやかは「うっ」と苦しげな声を上げ、怪物の食指を震える手でつかみながらうるんだ目で見た。

「あっ、痛い…やめて…うっ、うっ」

一体目の前の怪物は何なのかわからないまま吸われるたびに切なげなうめき声をあげて苦しむさやか。
3回吸われた時には、もう息もだえだえとなり、ひきつる刹那に死の恐怖を感じていた。

(助けて…死にたくない…怖い…お父さん、お母さん…痛い…死にたくない…さな…杉山先輩…)

力が吸われたさやかの柔らかな淡い毛で包まれた割れ目から黄色い液体がタイルに流れ出した。
それがちょろっと止まったとき、もはやさやかの目に光はなく、艶やかな肌は水分を吸われてしなび、無残なミイラ死体がそこにあった。


(おわり)