You were mine
作・丸呑みすと様
「・・・やああっ、嫌っ!」
女子高生の悲鳴は、折からの豪雨と雷鳴でかき消された。
その肢体は、乳白色のどろりとした塊に圧し掛かられ、埋まってしまった。
(お前は俺のものだ。俺とひとつになるんだ)
塊は昂ぶる気持ちを己の体を通じて、解き放った。
「あがあxcgj!」
強力な消化液が下敷きにした少女にぶちまけられる。
細胞組織を分解する液の効果で、女子高生の肉体は、熱湯をかけられた角砂糖の様に崩れていく・・・
教室の隅、彼は俯いていた。 いつもの事だ。
グジと呼ばれ、クラスからは疎まれている彼だったが、俯いたその下の顔は笑みを浮かべている。
(・・・もう誰も、和音には手を出せないんだ。何故なら・・・)
「・・・君、起きてる?」
考え事はそこで中断された。英語担当で、クラスの副担任も勤める結城なほみ先生だ。
今年、28歳になるが、パッと見は20代前半位に見える若々しい美貌の持ち主で男子生徒の一番人気だ。女子バスケの顧問でもあり、さっぱりした気性は女子生徒からも支持が高い。
「ちゃんと聴いてなきゃだめよ。シュウジ君が亡くなって、松下さんが行方不明になって心配なのはわかるけど・・・」
結城先生の言葉をグジは適当に聞き流していた。(シュウジを心配?あいつは邪魔だから消してやったんだ。和音は俺のものだ、誰にも手は出せないよ。だって、ボクと和音はひとつなんだから)
教壇へ戻る結城先生の、タイトスカートに包まれたヒップがゆれた。
(先生も、俺のものだよ・・・)
その夜も激しい雨だった。
(あの日もこんな雨だったわね)
なほみはアパートの自室で、遅い夕食の片付けをしながら思った。
ほんの数日前に教科を受け持ってるクラスの生徒が無残な死体で発見され、傍らには被害者と同じ学校の女子生徒の制服―だけでなく、ソックスや下着まで―が残されていた。
そして、一人の女子生徒が行方不明になったという事件だ。
(一体誰が・・・)
その時、ドアチャイムが鳴った。
覗き窓から外を見る。物騒なご時世、いきなり開けるなんてことはしない。
「先生、僕です」
「まあ、グジ君?」
答えたあとでしまったと思った。
綽名、それもマイナスイメージのそれで呼んでしまうなんて。
「どうしたの?こんな時間に?」
「大事な話です。松下さんの」
(上手くいった・・・)
グジは踊りだしたい気分だった。
なんとか結城先生にドアを開けさせて、部屋に入ることが出来た。
Tシャツとショートパンツの後姿を舐めるように見ては舌舐めずりをする。
不意に、グジは結城先生の背後から抱きついた。
「ちょ!何を!?」
先生を抱えたままベッドの上に倒れ込む。
「今やめてくれたら冗談ですませるわ!」
「悪いがやめる気は無い」
振り向きざまになほみが見たものは見慣れた生徒の顔ではない。
ナメクジの化け物だ。
「俺はドルゲ様に選ばれし、魔人ナメクジゲ。結城なほみ!お前も俺とひとつになるのだ!」
魔人の体がフライパンで熱せられたバターの様にとろけ始める。
165センチと女性としては長身のなほみの肢体を包み込んでゆく。
「やめて、助けて、嫌ッ」
もがく女教師が乳白色のスライムに覆い尽くされた。
文字通り全身でなほみの感触を楽しむナメクジゲは体表から直接、肉体分解液をたっぷりと浴びせた。
その時、ナメクジゲの中に残るグジの意識は射精にもにた高揚を感じていた・・・
魔人の下で柔らかいものが崩れていく。かつてのなほみだったモノはじっくりとナメクジの化け物に啜りつくされてしまった。
翌日、無断欠勤したなほみの部屋を学年主任が尋ねた。
そこに部屋の主の姿は無く、ベッドの上に彼女の部屋着が残されているだけだった。
(終)