ハエ男 真伝


作・丸呑みすと様

ハエ男の手に、ロボ ットバエが戻ってきた。
ショッカー特製の精神操作薬の飲料水への混入は完了した。
冷水機から水を飲んだ者は、ハエ男の電波の命ずるままに破壊の衝動を沸き起こし暴れまくるだろう。
「ライダーとて子供を手にかけるわけには行くまい」

ハエ男はうそぶいた。
ここは都内のニュータウンに建つ小学校。時刻は夕刻。誰もいない理科準備室に潜んでいたハエ男は頃合を見て、アジトへの引き上げ時を図っていた。
その時、引き戸が開かれた。
 
「誰なの?鍵開けっ放しにして」

5年生を担当する、板垣えり教諭は少し怒 りながら入室して来た。
26歳のえりはウェーブのかかった髪に、きりっとした美貌の持ち主である。
ルックスやスタイルの良さに加え、テキパキとした行動で児童はもとより、父兄からも人気が高い。
白いブラウスの上にマゼンタのカーディガンを羽織り、膝より少し上の黒いタイトスカートを穿いている。

 
 ぶるるるっ・・・・ぶるっ・・・

怪しい唸りを捉えたえりが、その方向を向いた。
 
「ひ!?・・・・」
そこにいたのは大きな複眼を光らせた、メタリックグリーンに輝く異形の怪人だった。
逃げようとするえりに怪人――ハエ男は襲いかかった。

肩を掴むといとも容易く、体を半回転させる。

ぢゅ―――っ!!

ハエ男の口から白い泡が高速でほとばしり、えりの端正な顔から、豊かな胸元へと降りかかっていった。
 
「・・・あ、あふっ・・・うんっ・・・」

顔を覆われ息が出来ない。ハエ男に両肩を掴まれたえりの身体から力が抜けていった。
ハエ男は無造作にえりを突き飛ばした。

背中からえりは仰向けに倒れた。脚が大きく跳ね上がり、スカートの奥に白いものが覗いた。
ぶしゅ、ぶしゅしゅしゅ・・・ビールの泡が弾けるような音がする。
えりの胸が、空気を抜かれた風船のように萎んで行く。白い泡はえりの肉体を餌にしているかのように量を増やし、全身を包んでいった。
 
誰もいない準備室。床に僅かに残っていた泡もやがて跡形も無く消えていった。一人の若い女と共に・・・