< color="#408080" size="7" face="DFG康印体W4">ドクロイノシシの恐怖>

作:らいだーまん

で〜すとろ〜ん・・で〜すとろ〜ん・・。朦朧とした意識の奥で真知子はそんな奇妙な声を聞いた。少しずつ覚醒していく意識の中でその声だけはいつまでも消えなかった。
やがて真知子は自らの全身が意識を失っているうちに鎖で縛られ、磔にされていることに気付いた。それは強固で抵抗の仕様がなかった。
「一体、私はどうなるの?」自分の置かれている状況は把握できないが、ただ確実に死が迫っているという予感と泣き叫びたい程の恐怖が彼女を襲っていた。
やがて真知子の前に大きな棺が運び込まれると軋むような音とともに中から奇怪な化け物が起き上がった。
「グウェェッ!」化け物は奇怪な雄叫びをあげながら真知子の方へ近付いてくる。
「いやっ!誰かっ!!助けて!」真知子はそう泣き叫びながら渾身の力を込めて鎖を振りほどこうとした。しかし化け物、ドクロイノシシはもう真知子の眼前に立ちはだかっていた。そして、ドクロイノシシは前屈みになったかと思うと真知子の白いブラウスの胸元を引き裂いた。
「キャアァァッ!」次の瞬間、全身に切り裂かれるような激痛が走り真知子は悲鳴を上げた。ドクロイノシシの牙が真知子の胸に突き刺さったのだ。やがて真知子の体から激痛とともに感覚が失われていく。彼女の体内には牙の先から緑色の消化液が注入されていたのだ。それは真知子の静脈に入り込み血管を溶かしながら瞬時にして全身を巡っていた。まず血液成分が破壊されたことで脳への酸素の供給が停止、真知子の全身から急速に感覚機能が奪われていった。次に血管を破壊した消化液は末梢神経や細胞を破壊し、内部から彼女を液化していく。もはや真知子に意識はなく、かろうじて溶解しながらも筋肉だけが痙攣を続けていた。
ドクロイノシシは牙の先から真知子の液化した動物性蛋白質を吸収するとゆっくりと彼女の体から離れた。もう真知子の体には何ら有用な物は残っていないのだ。
栄養分を摂取し満足そうなドクロイノシシの前で真知子の全身はもはや人間の姿を留めてはいなかった。各細胞は完全に液化し、ゼリー状になって骨から剥がれ落ちていく。ドロドロに溶けながらもかろうじて苦悶の表情が読みとれた真知子の顔面もやがて崩れ落ち、みるみる白骨が露わになってくる。溶けた肉体から激しく水蒸気が上る。高温になった体液が気化しているのである。やがて湯気が消えた後には醜い骸骨が磔になったまま遺されていた。真知子の最後の姿を表すように