BloodBeach〜血に飢えた砂浜

作:丸呑みすと様

夏が始まろうとする季節の陽が落ちて、闇の帳が下りる海沿いの街。
海と浜辺を分ける海岸線を走って来たクーペは、屋外駐車場に乗り入れると、枠の一つにバックで停めた。
ドライバーが降り立った。

芦川由紀。27歳の女である。

すらりと伸びた長身スレンダーな肢体だが、クリーム色の半袖ブラウスの胸元ははち切れ象に張っている。
スカイブルーの膝丈15センチのスカートからのびた腿や脚は素晴らしい形をしている。
早めの夏休みをとった由紀は、中学まで過ごした街にやって来た。

幼なじみの家に世話になる予定だった。
海岸線から懐かしい浜辺を見る彼女を一陣の風がみまった。

「…あ」
風を孕んだスカートがふわりと広がる。慌ててスカートを抑え、下着の露出をガードした由紀だったが、長い髪の毛がなびき、白いハットが飛ばされる。
「もぉ…」
ハットは砂浜へ落ちた。由紀は拾う為に砂浜へ下りる。
エナメルのパンプスが足首近くまで沈み歩きにくい。

由紀はハットを拾い上げ、砂をはたき落とすと頭に乗せた。
由紀の脚が沈み込む。腿の半ば辺りまで。

「いやっ、嫌ぁ!?」

両手を着いて突っ張り、自らの身体を引き抜こうとする彼女だったが、更に強い力で引っ張られ、鳩尾の辺りまで沈む。

「助けて!!」
悲鳴をあげようと開いた由紀の口の中に砂が入って来る。
長い髪の毛が、必死に伸ばす両手が砂の中に消えていく。
後にはハットが遺された。


高さ数メートルはある空洞。そいつはそこに居た。もし暗闇で目が利くなら、全長10メートルはある芋虫か蛇の様な姿が見えたろう。
斜め上の土壁に突き込まれていた一方の先が引き抜かれた。陰茎の先のような頭部が、必死に抗う獲物を咥え込んでいる。怪物は口を開き、土の床に獲物を放り出した。
獲物は人間の女だ。
穴を引きずり込まれる間にスカートは下ろされ、膝の辺りで両足を拘束している。ストッキングに透けるビキニパンティは白だ。
ブラウスもめくれ上がり、女の顔を覆い両腕を拘束している。
引き締まったくびれやブラジャーがずり上がり露わになった白い乳房がもがくのに合わせて揺れている。

正体不明─哀れな由紀にとっては確認しようも無い─の怪物は乱杭歯だらけの口を三つに分けて開くと、半裸の女にかぶりついた。
暗闇の中、断末魔は咀嚼音にかき消され、もがく由紀の肢体は怪物に呑み込まれてしまう。

未知の怪物の胃の中に充ちた消化液に落とし込まれた若い女の豊満な肉体は、跡形も無く溶け崩れて……
 
(終わり)