唾液魔人・ベロゲルゲ

作:らいだーまん

深夜の2時。千草は懐中電灯を手に深夜の病棟を見回っていた。人の生死に直面する看護婦とは言ってもまだ24歳の女性だ。やはり深夜の見回りはいつも気持ちの良いものではない。千草の勤める総合病院は築40年以上経つ古い建物で、増改築を重ねたためか内部は迷路のような造りになっている。千草が第1病棟から第3病棟への連絡通路を歩いているとどこからか奇怪な呻き声が聞こえてきた。べ〜ろべろべろ・・・。その声は低い声で繰り返された。
「一体、何の音かしら?」千草は恐怖に駆られながらも声のする方向へ進んでいく。そして彼女がたどり着いたのは病棟の外れにある標本室の前だった。確かに声はこの部屋から聞こえてくる。千草が恐る恐るドアノブを廻すと、ドアは「ギィィッ」と軋むような音を立てて開いた。
「変だわ。鍵が開いてるなんて・・」千草は懐中電灯の光を頼りに中に入った。
「バタンッ!!」その瞬間、彼女の背後でドアは勢いよく閉じた。千草は慌てて外に出ようとするがドアは全く開く気配すらなかった。
「ぴちゃ、ぴちゃ」彼女の耳に粘着質の物が近づいてくる音が聞こえた。音のする方向へゆっくりと明かりを向ける千草。その光の輪の中に映ったのは口から全身の皮膚を裏返したように内蔵や粘膜が剥き出しになったおぞましい怪物の姿だった。その顔は半分以上が唇で占められ、なおかつその間からはてらてらと光る舌が覗いている。
「きゃーーーっ!」その姿に思わず悲鳴を上げる千草。「べ〜ろべろべろ」ベロゲルゲはゆっくりと彼女の方へ近付いてくる。
「誰か!助けて!お願い・・」千草は半泣きになりながらドアノブをガチャガチャと廻したが開く気配はなかった。「女、逃げようとしても無駄だ。お前はこのベロゲルゲ様の餌食になるのだ」そう言うと同時にベロゲルゲの舌がするすると伸び、千草の全身に巻き付いた。舌先はまるで別の意志を持った生き物のように彼女の全身を這い回る。白衣の襟元から入り込むと薄いブルーのブラジャーに包まれた乳房を嘗め回す。「あっ・・・んん・・・」死の恐怖に脅えながらも千草の肉体は舌の動きに敏感に反応していた。やがて舌は腹部を伝い、白のストッキングとショーツを引き裂き股間に侵入した。
「あっ!いやっ・・」舌が動くたびに千草は小刻みに全身を痙攣させる。彼女の全身はベロゲルゲの唾液に濡れドロドロになっていた。湿った白衣は彼女の肌にぴったりと貼り付き、下着のラインもはっきり浮き出ていた。
ベロゲルゲの舌で登りつめてしまった千草はへなへなと倒れ込んでしまった。ベロゲルゲは若い女性を嘗め回すことでそのエキスを吸い取っていたのだ。「十分いただいたな。もうお前に用はない」そう言い放つとベロゲルゲは長く伸びた舌を巻き取ると、今度は横方向に拡大した。その巨大な舌の表面からは悪臭とともに白い粘液が吹き出ている。ベロゲルゲは呆然と座り込んでいる千草の体を抱き起こし抱え込むと、ベロリと彼女の顔面をひとなめした。「う・・・ん・・」顔面はもちろん、前髪やナースキャップまで粘液でべとべとにされた千草は、そうかすかに呻き声を残してバタリと倒れ込んだ。千草の全身から湯気が立ち上りはじめると同時に白衣の襟元や袖からモコモコと泡が噴き出しはじめた。みるみる泡に包まれる千草。「シューッ」一段と激しくなる湯気。やがて湯気と泡が消えると、そこにはボロボロになった白衣とドロドロのゼリー状に変質した蛋白質を纏った白骨が残されていた・・・。