美しき獲物たち


作・taka様


 とある小さな公園。一本の大木の下で佇む一人の少女が、近くの建物に付けられた大時計に目を向けた。

「遅いな・・・」

そう口をとがらせて呟いた少女の顔は、何とも美しく、また可愛らしいものだった。と、その時??

「え・・・?きゃあああああああああっ!!」

突如少女は悲鳴を上げた。近くの草むらから一本の不気味な触手のようなものが現れ、少女の首筋に勢いよく絡みついたのだ。

「ううっ!」

呻き声を上げる少女。やがて彼女の体は金色に点滅し始め、その度に彼女の養分が触手に吸い込まれていく。

「いやああああっ!誰か・・・誰か助けてええええええええええっ!!」

絶叫を上げる少女だったが、その叫び声はすぐに止んだ。少女の体はやがて金色の光になって消滅し、完全に触手に吸い込まれてしまった。そして少女を吸い込み終えた触手はそれに満足したのか、再び現れた草むらへと消えていった・・・

「あれ?この辺りのはずなんだけどなあ・・・」

人気のない街の入り組んだ路地で、営業先を訪れようとしている一人のOLが困ったような声を上げた。どうやら道に迷ってしまったらしい。

「もう、ほんっとこの辺分かりづらいんだから・・・え・・・?」

OLはその美しい顔を不審そうにゆがめた。
背後に、何かとてつもなく不気味な気配を感じたのだ。

「いやああああああああああああああっ!!」

振り返ったOLは悲鳴を上げた。彼女の背後から、一本の巨大な触手のようなものが、音もなく迫ってきていた。

「あっ・・・ううっ・・・」

OLの首に触手が絡みつく。そしてその触手は彼女の体から養分を吸い始め、その体を金色に点滅させてゆく。

「ああっ、あ・・・・・・ううぅん・・・・・・」

悶えるような声を上げると、OLの体は完全に崩れ、金色の光となって触手に吸い込まれた。



 とある高校の体育館。そこに設置されたバスケットボールのゴールに、勢いよくボールが入り込んだ。

「ナイスシュート、千佳!」

チームメイトが明るく一人の美少女に声をかけた。千佳、と呼ばれたその少女は眩しい笑顔ではにかむと、後輩部員が手渡したタオルで手早く顔の汗を拭いた。

「ちょっと顔洗ってくるね」

千佳はそう言うと体育館を抜け出し、すぐ傍にある共同の水道で顔を洗おうとした。

「あれ・・・?」

だが、彼女が蛇口をひねっても水は出なかった。その代わりに現れたのは、一本の細い蔦のような触手だった。

「きゃああああああっ!!」

千佳が驚いて悲鳴を上げる。触手はそんな彼女の首に勢いよく巻き付き、その首を絞めつけた。

「ううっ!」

触手は千佳を捕えると、その体から養分を少しずつ吸い上げていった。

「助けて!誰か、誰かあああああああぁぁぁぁぁっ!!」

千佳の体は金色に点滅を繰り返すと、やがて完全に崩れて金色の光になり、触手に吸い込まれてしまった。触手は千佳を吸収すると、現れた水道の蛇口へと引っ込んでいった。

「ドーラナルシスは順調に成長しているね、いい感じだ・・・!」

宮殿に置かれたモニターのようなものから女性を襲う触手の映像を見ていた、魔女・バンドーラが満足げに呟いた。

「でも、今のままじゃ効率が悪いね・・・もっと成長を早めないと・・・ん?」

バンドーラはモニターに映り込んだ二人の少女を見て、その顔に冷酷な笑みを浮かべた。

「そうだ、いいことを思いついたよ・・・!」



「お母さん、行ってきまーす!」

「行ってらっしゃーい、車には気を付けるのよ!」

「はーい!」

翌朝。とあるマンションに住む一人の若い母親が、学校に向かう三人の娘に明るく声をかけた。

彼女の名は福田佑月(ふくだゆづき)、30歳。高校1年生の頃に初めて妊娠・出産を経験して高校を中退、それから二年後には双子の娘を授かった。その後しばらくは夫と共に三人の娘を育てていたのだが、数年前に夫の浮気が発覚し、二人は離婚。親権は佑月が勝ち取り、彼女は今働きながら三人の娘を育てていた。

「ふう、ようやく行ってくれたわね・・・」

娘たちを送り出した後、佑月は思わずため息をついて部屋のソファーに腰を下ろした。
本来ならこの後彼女もすぐ仕事に出かけなければいけないのだが、幸運なことに今日は彼女は仕事が休みだった。

「今日一日くらいゆっくり休まなきゃねえ・・・あ、今のうちに洗い物済ませちゃお・・・」

佑月は立ち上がると、小走りで水道に向かった。彼女は小柄だったがむっちりとした肉付きの良い体をしており、そのスタイルはすれ違った男を思わず振り返らせるほどだった。また、彼女は30歳とは思えないほど童顔で、とても三人も娘がいるなどとは思えないほど美人だった。

「ふんふ〜ん・・・あれ?」

鼻歌を歌いながら洗い物をしようとした佑月は怪訝な顔になった。蛇口をひねったにもかかわらず、少しも水が流れてこないのだ。

(やだ、故障・・・?)

そう思った時だった。

「きゃああああああああああっ!!」

佑月は悲鳴を上げた。水道の蛇口から水ではなく、植物の蔦のような不気味な触手が出現したのだ。

触手はするすると伸びると佑月の首に絡みつき、勢いよく絞めつけた。

「ああっ!」

佑月は短い悲鳴を上げた。彼女はなんとか触手をはずそうと首に手をかけたが、触手は佑月の体から養分を吸収し始めた。

「ああっ、うん・・・・・・ああぁ・・・・・・・」

養分を吸われるたび、佑月の体は金色に点滅した。やがて彼女は金色の光になって蔦に吸い込まれ、完全にこの世から消滅した。

それから数時間後??

「愛花(まなか)―、待ってよー!」

「遅いよ愛実(まなみ)、置いてっちゃうよ!?」

双子の少女が笑顔を浮かべながら、追いかけっこでもしているかのように帰り道を駆けていた。

二人は佑月の娘で、姉の愛花、妹の愛実ともに12歳。幼いころから人形のように生き写しの美しい双子だった。見分ける点としては、妹の愛実の左目の近くに泣きぼくろがあることだった。これが彼女のチャームポイントでもある。

「ねえ愛実、また・・・“アレ“しよっか?」

愛花が妹に笑顔を向けながら言った。

「うん!」

愛実も笑顔でうなずいた。

やがて二人は、今は使われていない街の廃工場を訪れた。

「誰もいない、っと・・・」

「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ、ここ滅多に人来ないし」

愛実は愛花の言葉にうなずいた。やがて二人は地べたに座り込むと、互いの体を優しく抱きしめ、相手の唇にキスをした。

「ちゅっ・・・んちゅっ・・・」

「むちゅぅっ・・・はあっ・・・」

二人はわざと音を立てて相手の唇を吸い、舌をお互いの口に入れて甘い唾液を存分に飲み下した。


これこそ、この二人が最近覚えた“新しい遊び”だった。きっかけは愛花の愛実へのいたずらだったが、初めての体験に二人はすっかりこの遊びの虜になり、今では週に二回か三回はこうして誰も来ないところで体を合わせるようになっていた。

「んん・・・ああっ・・・」

「ああ・・・はあん・・・」

二人は嬌声を上げると、全く同じタイミングでお互いの服をまくり上げ、ブラの留め具をはずした。そして露わになった乳首と乳首を密着させ、そこに唾液を垂らして擦り付けあった。

「あうっ・・・はあああん!」

「ひやあ、あ・・・ひゃうううっ!」

体中を快楽が駆け抜け、その度に二人は軽い絶頂に達した。まったく同じ顔をした二人の美少女が体を重ね合っている姿は、傍から見ればどこか神秘的な雰囲気さえ漂っていた。

「はあっ・・・・・・まな、み・・・・・・おおぅん!」

「ひゃあっ・・・・・・まなかあっ・・・・・・ああん!」

二人は着ていた服から下着まで、身に着けている者を全て脱ぎ捨てた。そして自分の指を時間をかけてねっとりとなめまわすと、相手の股間にゆっくりと挿入した。

「あっ、あっ・・・ああああああああああん!」

「気持ちいいっ!あっ、いやあああああああん!」

快楽を感じるたび、相手の嬌声を聞くたびに、二人は興奮して指の速さを上げていく。それが更なる快楽となって、二人の心を容赦なく蝕んでいく。

「ひゃうっ、も、もうだめ・・・・・・ひゃああああああああああうっ!!」

「いやあああああっ!何か、何か来ちゃううううううっ、ああああああああああっ!!」

二人は同時に絶頂に達し、一際大きな嬌声を上げた。二人は放心状態で相手の唇にキスをすると、再び股間に指を入れて互いを慰め始めた。

そんな二人のすぐそばに、不気味な一本の巨大な触手が迫っていたことに、この幼い姉妹は全く気付いていなかった。

触手はするすると姉妹の許まで近づくと、勢いよく二人の首に巻き付き、養分を二人の体から吸い上げ始めた。

「あうう・・・なんか・・・いつもと違う感じがする・・・」

「うん・・・・・・いつもより、もっとずっと気持ちいいよおおおおおっ!」

二人は行為に夢中で、自分たちの首に何かが巻き付いたことにすら気づいていなかった。体から養分を吸われる苦しみも、快楽に取り込まれたこの双子にとっては、さらなる甘美な刺激となっていた。

「「はうぅっ、あ・・・・・・いやああああああああああああああん!!!」」

二人が同時に快楽の絶叫を上げ、それと同時に双子の体は金色に崩れて、触手に吸収されていった。二人を吸い込んだ触手はすぐに近くの草むらに引っ込み、やがてその姿を完全に消した・・・・・・


「ただいまー。あれ、お母さんいないの?」

更に数時間後。双子の姉で佑月の長女の早苗(さなえ)が、マンションに友人を連れて帰ってきた。

「おかしいな、愛花と愛実もいないのに、鍵が開けっぱなしなんて・・・」

中学校指定の制服を脱いでハンガーにかけながら、早苗は部屋の中を注意深く見まわした。

「もしかしてちょっと出かけてるんじゃない?大丈夫、すぐに帰ってくるよ」

友人の少女が明るい声で言った。

「それより早苗、あたし喉乾いた。水飲んでいい?」

「いいよ。そこら辺のコップ、適当に使って」

友人は近くにあったコップを手に取ると、水道の蛇口をひねった。ところが、水が一滴も出ない。

「ねえ早苗、水道壊れてるんじゃない?水でてこないよ」

「ええ?・・・ほんとだ、おかしいな・・・」

母親譲りの美しい顔を怪訝そうにゆがめながら、早苗は水道を覗き込んだ。すると??

「きゃああああああっ!」

早苗は悲鳴を上げて飛びずさった。水道の蛇口から、不気味な細い触手が飛び出してきたのだ。

「な、何なのこれ!?」

「分かんないよそんなの!誰か、誰かああああああ!」

二人は抱きつきながら悲鳴を上げた。触手はするすると伸び、まずは早苗の友人の首に巻き付いた。

「あうっ!・・・あああ・・・」

早苗は目の前の光景に体の震えが止まらなかった。友人の体から金色に光る何かが触手に吸われていき、それと同時に彼女の体も金色に点滅していく。

「うあああああ、あっ・・・ああああああう・・・・・・」

少女は触手の中で悶えると、金色の光になって触手に吸い込まれた。

「あ・・・あ・・・」

友人の消滅を目の当たりにして、早苗の体は震えが止まらなくなった。見ると、彼女の足元に黄色い水たまりができていた。彼女は恐怖のあまり、失禁してしまったのだ。

そんな彼女に構うことなく、触手はするすると早苗の首に絡みついた。

「いや、やめて・・・あああああああああん!」

自分の体の中から、何かが吸い上げられてゆく奇妙な感覚。それを味わいながら、早苗の意識は徐々に消えていった。

「ふわあっ、あ・・・あ・・・・・・」

自分の体が金色の光になるのを最期の感覚で悟りながら、早苗は短すぎる人生に別れを告げた。

崩れた早苗の体を吸い込んだ触手は、蛇口から巨大な植物の根のような物の元に戻った。吸収した早苗たちの養分が、根の各所を金色に光らせた。


「ああ、やっぱり美しい人間というものは、その親族も皆美しい!五人もの命を吸い込めたおかげで、ドーラナルシスの成長はいよいよ最終段階だよ!」

宮殿からドーラナルシスを観察していたバンドーラが、歓喜に満ちた声を上げた。

ドーラナルシスが引き起こすこの一連の女性失踪事件は、彼が恐竜戦隊ジュウレンジャーに倒されるまで続いたのであった。