第58号(2007年1月)






兵庫県の財政を解剖する
全国ワースト3位 原因と責任どこに

06年度の兵庫県の実質公債費比率は、全国ワースト3である19.6%でした。このようなひどい財政状況になった原因を分析するため、兵庫県の財政状況の推移を見てみます。
<実質公債費比率とは、分子を地方債の元利償還金+公営企業等の支払う元利償還金とし、分母を地方税・交付税等の収入とし求めた財政指標です。この比率が18%を超えると、地方債の発行、すなわち借金をするのに国の許可が必要になります。25%以上になると一部の地方債の発行が制限され、自治の足元がゆらぎます>

05年度一般会計決算で2兆1千億円規模の兵庫県。ここ10年ほどの財政推移を見てみると、全国と同様の割合で県税収入は減っています。借金返済額や借金残高は大幅に増え、貯金も大きく減少しています。96年度に782億円を計上した震災復興事業は、その大半が終了。公共事業費が平常規模に戻ったことで、県政の抱える問題が鮮明に見えてきました。
兵庫県の財政状況が厳しくなった原因のひとつは阪神大震災です。しかし、震災から12年が経つにもかかわらず、財政が悪化の一途を辿っているのは、知事の舵取りのまずさや議会のチェックの甘さなどに大きな原因があります。



ムダな公共事業の見直しを
突出する兵庫県の公共事業費
同規模府県と比較

兵庫県の公共事業費すなわち投資的経費を他都道府県と比較してみましょう。東京都は財政規模が違いすぎ、北海道も面積が大きく異なります。一般会計規模・人口・面積などで比較できる自治体を全国都道府県の中から抽出しました。兵庫県と愛知県以外の自治体(下表3位以下)の公共事業費は、年2千億円ほど。兵庫県と愛知県は公共事業費が年3千億円を超えており、他より1千億円ほど高くなっていることがわかります。



赤字の但馬空港拡張費用に100億円?!

94年に県が180億円の公費を投入し1200mの滑走路を作った但馬空港。現在、但馬空港と伊丹空港を結ぶ36人乗りの便が1日2便飛んでいます。そのため県は、空港の赤字補填で年約1億4千万円、空港の維持管理費として年約2億1千万円を支出。県は発足時には、飛行機購入費用として7億5千万円を支出しています。一方で、昨年度の収入である着陸料は年306万円。大きな赤字補填をしながらの空港運営が続いています。  
ここにきて、但馬空港から羽田空港へ直行便を就航させる計画が出てきました。羽田空港は60人以下の機体の乗り入れを制限しているため、県は74人乗りの飛行機を新たに購入することを検討しています。それに加え、74人乗りを飛ばすには、滑走路を1200mから1500mに延長することが必要です。その費用は、100億円と言われています。
県当局の計画では、74人乗りの飛行機を1日2便定期運行することを想定しています。 しかし現在、但馬空港から伊丹空港に行き、羽田空港行きに乗り換える人は、1日平均20人前後です。但馬空港から羽田空港に直行便を飛ばすためには、飛行機の購入費用・赤字補填費用など、こんご多額の県税が投入されることになります。



武庫川ダム事業 当局は建設を断念せず
過小見積もりで300億円

兵庫県では、当局が事業費300億円とする武庫川ダムの建設計画がありました。昨年、公募市民や学識経験者が入り、武庫川の治水のあり方を議論した武庫川流域委員会では、「30年の整備計画では、既存の千苅ダムの利水部分を治水へ転用、学校・公園の遊水地化、河底の掘り下げなどで対応する。武田尾渓谷の自然景観破壊と、貴重な動植物の死滅をまねく武庫川ダムは建設しない」との結論を出しました。
井戸知事は、委員会提言を受け「2010年まではダム着手せず」とは言いながら、ダムの建設をにおわす発言を繰り返しています。  
丸尾まきの提言
県では、但馬空港滑走路延長、武庫川治水事業だけではなく、道路建設や砂防ダム建設や箱物建設などの公共事業が目白押しです。個々の公共事業の必要性について、客観的な実効性を持つ第三者機関で再検討し、住民への実質効果の低いものは廃止。事業に優先順位をつけて公共事業費の大幅圧縮(最低年1000億円)が不可欠です。



県当局 入札時の落札率を公表せず

県財政を考える上で、公共事業費の圧縮は最重要課題のひとつであり、その最も効果的な方法が、入札で競争を働かせ、落札率を下げることです。しかし兵庫県当局は、検証するために必要な工事の平均落札率を公表していません。直ちに改めるべき姿勢です。  

全国市民オンブズマン連絡会議が調べた兵庫県の落札率を見てみると、05年度予定価格1億円工事の平均落札率は、90.6%になっています。この数字は、入札制度改革の先進自治体である長野県・宮城県と比べて10%以上高く、入札において競争があまり働いていないことがわかります。
その上、市民オンブズマンの資料によると、兵庫県では談合疑惑のある落札率95%以上の入札が、全体の約6割もあります。このことは日常的に談合が行われている疑惑を否定できません。最大の原因は、談合がしにくいとされる制限付一般競争入札の対象工事金額が、3億円以上と高く設定されていることです。
丸尾まきの提言
入札の平均落札率を公表するとともに、制限付一般競争入札・公募型競争入札の原則化することが必要。そうすれば、平均落札率が10%程度下がり、06年度公共事業費3274億円の10%である約300億円が節約できます。



外郭団体との契約 極めて不透明

05年度都道府県の外郭団体との随意契約率と、外郭団体がさらに第3者に委託する契約金額などに関する資料を見てみます。
兵庫県の外郭団体との契約件数は719件。その全てが競争の無い随意契約すなわち随意契約率100%です。随意契約というのは、特定の企業が特別な技術を持っているときや緊急性があるときに行う契約方式ですが、それ以外は競争入札を行わなければなりません。
兵庫県では、外郭団体との契約において競争がなく、契約金額が高くなり公費が無駄に使われています。この状況は天下りの問題とも絡むことで、外郭団体との不透明な関係は、正しく清算されなければなりません。
さらに外郭団体は、違法な丸投げを疑われる第3者と契約している事例が少なからずあります。これらも詳細を明らかにする徹底的な調査が必要です。

丸尾まきの提言
外郭団体との契約は、原則、競争入札で行うべきです。それで維持・存続できない外郭団体は、廃止されるしかありません。外郭団体の統廃合については、第3者による委員会を立ち上げ、外郭団体の必要性・効率性などの評価を実施し、統廃合案について提言を求めるべきでしょう。



県議会の不思議=議員報酬とは別に尼崎市選出議員の会議出席手当は1日7千円支給される。


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