第45号(2003年8月)






殴る蹴るは教育なのか!
市立高校の野外活動で教師が暴力

学校側 再調査申し入れで初めて事実確認

体罰の通報を受けた丸尾まきは、被害を受けた生徒の親に連絡をとり、体罰を受けた生徒全員から話を聞きました。
その情報を基に「A高校の野外活動で3人の教師(氏名を特定)が数人の生徒に体罰を加えたと聞いた。事実確認をしたい」と市教委に問うたのです。
市教育委員会からの回答は「校長からそういうことはなかったとの返事があった」というものでした。そこで、丸尾まきは生徒から聞いた内容を書面にして市教委に渡し、「再度調査をするよう」申し入れたところ、数日後に市教委から「体罰があった」との報告を受けました。
当初の質問に対して、校長は体罰教師に事実確認をせず回答したようで、被害生徒のことを考えない極めて軽率で無責任極まる対応でした。
生徒が消灯後もおしゃべりしていたことは、他の生徒の迷惑にもなり良くないことです。しかしその態度を正すために生徒に暴力を加えるやり方は、教育とはほど遠いものです。シャツが出ていたことについての教師の行動も同様です。
力づくで生徒を服従させるという、まるで昔の軍隊のようなことが学校現場で行われているのは重大です。これは教育ではなく、教師が自己感情の発散のためにする暴力であり、生徒への教育的愛情を全く欠いたものです。

尼崎市立高校における体罰事件の概要
<丸尾まきが体罰を受けた生徒4人から聞き取り調査>
・今年4月、尼崎市立高校1年生の野外活動が行われた。この高校には普通科と、体育科がある。午後10時の消灯後もしゃべっていた3人の男子生徒(1人は他の部屋から来ていた)が、生徒指導部の体育教師A・Bから、殴る・蹴るなどリンチまがいの体罰を受けた。体罰教師とは別に担任など4人の教師がその場にいたが、体罰を止めもせずただ傍観していただけ。夜11時半頃におしゃべりが見つかり解放されたのは午前1時頃。
・最終日の朝、朝食の場において、生徒のシャツが出ていたことから教師Aが生徒の足を1回軽く蹴り、平手で頬を1回叩いた。
・野外活動から帰って来た時に、生徒がトイレに行ったが、戻って来た時にシャツが出ていたため、生徒指導部の体育教師Cが生徒の腹の付近を1回蹴る。
【体罰に関する情報、ご意見を丸尾まきまでお寄せ下さい】


教師の暴力を排除し 真の教育の場を作れ

【同僚の暴力を傍観する担任教師たち】
暴力的な教師と同様に問題なのは、体罰の現場にいた担任など他の教師の態度です。今回の事例では目の前でリンチまがいの体罰がおこなわれているのに、担任など4人の教師は傍観しているだけでした。この学校では、決して少なくない教師が体罰を容認していると考えられます。

【暴力が生徒を壊し教育を壊す】
体罰を受けた児童、生徒には次のような悪影響をおよぼすと、兵庫県教育委員会の資料は指摘しています。
1、自分より強い者に追随し、弱い者を従わせようとする。
2、話し合いで解決しようとせず、強い者の意思を優先しようとする。
3、陰湿な嫌がらせやいじめが多くなる。
4、知的好奇心や興味、関心が失われる。
5、主体性、創造性の発達が阻害される。
6、教師への不信感を強め、批判的・反抗的になる。
私の経験でも、体罰が容認されているところでは、児童、生徒が話し合いで問題解決をするのではなく、安易に暴力によって問題解決を図ろうとする傾向があります。そこでは体罰によって表面的にトラブルが封殺されるだけで、教育的効果は全くありません。
学校教育法第11条で体罰は禁止され、子どもの権利条約でも精神的、身体的暴力は否定されています。体罰は暴行罪というれっきとした刑事犯罪です。過去には体罰で生徒が死亡した事例が存在します。暴力は人を死に至らしめる力を持っていることを教師は自覚すべきです。
また、「しつけの場は家庭であり、学校ではない」との認識も必要です。

【教師の体質改善と子どもの人権確立を】
コミュニケーション能力の乏しい体罰教師の意識や能力を改善する必要があります。そして少人数学級にするなど、生徒と粘り強く話し合える仕組みと時間的余裕を教師に与えることが必要です。
また、体罰だけではなく、いじめ・虐待などを含め、子どもの人権が侵害された時の救済システムを作ることが急務です。具体的には川西市にあるような「子どもの人権オンブズパーソン制度」の導入が必要です。この制度では、被害者がオンブズパーソンに相談すれば、いろんな助言をしてくれると共に、場合によっては学校や教師に対して、勧告などをすることもあります。
なお、白井市長は「子どもの権利条例」の制定には積極的な姿勢を表明しています。

尼崎で最近起こった体罰事件
年度 学校区分 内      容
2000年度 中学校 新聞報道によると、クラブ活動時、部員がミスをしたときなどに平手打ちや蹴ったりしたよう。
2001年度 小学校 児童が友人をいじめたと勘違いし、児童の頬を平手で2回叩く。
2002年度 中学校 校長先生がごみ収集作業員に渡すためタバコ10箱をごみ焼却炉近くに置いていたが、それを生徒が見つけ3人で山分けした。生徒指導担当教諭が1人の生徒にそのことを問いただしたが生徒が否認したため教諭が生徒の頬を叩き、腹部を数回蹴った。さらに他の生徒指導担当教諭と担任が生徒の顔や頬を殴る。

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