純正律音楽工房
主宰 高梨正義 Presented by Masayoshi Takanashi

自然倍音列だけにもとづく、完全ノービートの澄み切った純正協和和音を生む音律、それが完全純正律です。どうしても和音が濁ってしまう平均律とはまったく違う、新鮮、鮮烈、神秘的な響きです。

「純正律音楽工房」では、新開発の理論と方法により、本格的楽曲を、完全純正律で、どんな転調にも的確にフォローしながらMIDI演奏し、それをMP3のオーディオファイル化しております。

「完全純正律音楽連続MIDIコンサート」として、ルネッサンス、バロック、古典派、ロマン派、印象派、現代と幅広く、さまざまな時代のさまざまなジャンルの曲の演奏を、MP3ファイルのオーディオサウンドでお届けします。どうぞ、完全純正律のノービート協和音の素晴らしさをお楽しみください。

( Latest Updating: September 15, 2001 )

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完全純正律の音楽の楽しみ[1] 全3巻、一挙大公開

コンサート・プログラムと制作ノートへ

古典音律再発見への旅
…ピュタゴラス音列の列柱に刻印された古典音律の鳥瞰図…
代表的な古典音律…ピュタゴラス律、純正律、中全音律 (アロン律、ミーントーン)、
ヴェルクマイスター律、キルンベルガー律、ヴァロッティ・ヤング律、ヤング律等々…
の構成音のセント値、音律構造、相関関係などが一望のもとに鳥瞰できます。

完全純正律音楽連続MIDIコンサート(MP3ファイル)

What's New & 制作ノート (in Japanese) 
↑ぜひご一読ください! (MP3ファイルを開かなくとも)

曲目

フォーレ ラシーヌ賛歌

ウルトラ・カデンツ
(平均律和音が発音中に純正律和音に変化する驚異的カデンツ)

ダウランド : メランコリー・ガリアルド
ヘンデル : ラルゴ
グノー : アヴェ・マリア
ラッソー : バビロンの流れのほとりにて(再制作)
カデンツ
モーツァルト: アヴエ・ヴェルム・コルプス
バッハ : ちしおしたたる主のみかしら*
ドビュッシー : アラベスク第1番*
ラッソー : バビロンの流れのほとりにて*

(*印は、容量の関係でサイトから撤収しました)

波形イメージ(完全純正律と平均律の比較) 増補版

完全純正律…入門編(解説))

だれにも分かるギターの調弦理論

ギャラリー・コーナー

プロファイル

FAQ: デスコトップ上にダウンロードされたMP3ファイルを、そのままダブルクリックして再生したときに、音がブツフヅとぎれるという現象が生ずることがあります。これはMP3ファイルの欠陥ではなく、受信側のハードディスクの状態によるもののようです。ディスクの荒れた部分(フラグメンテーションが起きている部分)にダウンロードされ、そのままの状態にしておかれると、データがうまくつながらないで音切れが起こるようです。ほとんどの場合、ダウンロードされたファイルをディスクの別の場所にコピー(移動ではなくコピー)すると、つまり、ディスクの別の部分に移しかえて、ある種のショックを与えると、まったく正常に復帰します。また、ディスクのデフラグメンテーションを実施すると、音切れになることが少なくなります。

このwebサイトの各ページのオーディオ音響を含むすべての内容を、いかなる方法においても提供者に無断で複写、転載することは禁じられています。

             

 波形イメージ (増補)

完全純正律音楽連続MIDIコンサート第5回コンサートで、カデンツの演奏を完全純正律と平均律とで弾き較べてみました。2つの音律の違いはオルガンの場合にもっとも鮮やかに現われ、そのMIDI演奏の波形が次の画像のように記録されました。
完全純正律と平均律の和音の響きの違いは、もちろん耳で明瞭に聴きとれるのですが、このように目でも見ることが出来ます。

C長調のもっとも簡単なカデンツは、しばしば C - Dm/F - C/G - G7 - C あるいは C - Dm7/F - C/G - G7 - Cのようにも弾かれますが、ここでは音律の違いによる響きの違いがより明瞭に分るようにするために、度上の和音や七の和音を外し、協和和音だけからなる C - F - C/G - G - Cにしてあります。

右側の平均律の波形で、鋭いとげのようにささくれだっているところが、唸り(ビート)です。耳で聴いたときにも電車の発車ベルのようなけたたましい衝撃音としてはっきりと聴こえます。平均律の協和和音が唸ることをこのように目でも確かめることができます。

なお、この下に続く完全純正律…入門編に、唸り(ビート)などに関連する記事があります。また、上の波形のもとになったカデンツのサウンドは完全純正律音楽連続MIDIコンサート第5回コンサートで聴くことができます。

さらに、完全純正律音楽連続MIDIコンサート第10回コンサートに、平均律の和音が、鳴っているあいだに純正律の和音に変貌するという「ウルトラ・カデンツ」のMP3と「ウルトラ・カデンツのコードと波形と演奏」をアップロードしましたので、ぜひご視聴ください。

ご質問、ご意見など、どうぞご遠慮なくお申し越し下さい。

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 完全純正律…入門編

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プロローグ

完全純正律っていったい何なの? 
そんなもの、だれも知らないよ。
知らなくても困ることなんか何もないじゃない。
どうして知らなければならないの?
分ったら、どんな得があるの?
 
本当の空気、ほんとうの空と星、ほんとうの海?
「よごれのない自然の本当の姿」はどうなっているの? 
ほとんどの人は、そんなものを知らない。知らなくとも困るとは日頃は感じていない。
けど、「よごれのない自然の本当の姿」を、どうして知らなければならないのかと問い返す人は少ない。
分ったらどんな得があるのかともあまり言わない。
みんな、素晴らしい、「よごれのない自然の本当の姿」が存在することと、その大切さを知っているからだ。

もう一度、完全純正律っていったい何なの? 
完全純正律とは要するに、音楽の世界での、「よごれのない自然の本当の響き」を生み出す仕掛けなんだ!
 
先に進む前に、ちょっとだけ回り道をしよう。
平均律という言葉を聞いたことがことがあるだろう。
ドレミファ…のスケールの音のピッチ決めをするときの物差しの一種だ。
いまの音楽は、ほとんど全部、平均律を使っている。
平均律は、東京やニューヨークやパリの空気のようなものだ。
多彩な文化や芸術を生み出す、だが、濁っている。
平均律の響きも、かならず濁ってしまうのだ。

完全純正律もスケールの音のピッチ決めをするときの物差しの一種だ。
こちらは、ヒマラヤの未踏峰の山頂の空気のようなものだ。
完全純正律は、濁りがまったくない、あくまでも澄んでいる響きを生み出す。
だが、そこはあまりにも険しくて、人を寄せつけなかった。
 
それが、いま、未踏峰…完全純正律もついに征服された。
そう、DTMの力で。
登攀ルートも整備され、だれもが登れるようになった。
「よごれのない自然の本当の響き」を聴けるようになった。
それが得かどうかは、まず実際に聴いてから考えても遅くない。
が、聴いた人の音楽世界が、はるかに広がり、そしてぐんと深みを増すことは間違いないと思う。

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完全純正律と平均律

完全純正律と平均律を聴きくらべてみよう
とにかく、完全純正律連続MIDIコンサート第5回コンサートの「カデンツ(純正律・平均律比較)」のMP3ファイルをダウンロードし、プレイバックして実際の音を聴いてみよう。
同じ3小節のカデンツが6回繰返されている。完全純正律/木管、平均律/木管、完全純正律/ピアノ、平均律/ピアノ、完全純正律/オルガン、平均律/オルガンの順だ。
平均律になったとたんに、それまでの完全純正律とは、あきらかに違う響きに変わる。タタタタッ…というかなり早い衝撃音や音のゆれや、独特の響きを感じただろう。
そして、平均律とくらべて、完全純正律の響きは、音が互いに溶け合って、澄んでいることを実感できただろう。
たとえ、すぐには分からなくとも、なんどか聴いているうちには、かならずはっきりと分かるようになる。
いちど分ってしまえば、こんどは聴き逃すことはない。
平均律での衝撃音や音のゆれは、唸り…ビート…といわれるものだ。
音量を上げて聴くと分りやすい。電車の発車ベルやカナカナ蝉の鳴き声のようだ。
また、平均律独特の…おおくの人を、わが家に帰ったときのようにホットさせる…響きは、平均律という、スケールの音のピッチ決めのやり方から出てくるもので、あまりにもなれているため、日頃はとりたてて意識することもまずない。
それにしても、いま聴いた平均律はひどすぎるじゃないか。
うそだろう、こんなにひどい響きは聴いたことない、と思う人も多いだろう。
確かに、ふだん聴く平均律はこれほどひどくは感じない。
このカデンツでは、ビブラートなどのメーキャップをぜんぶ落として、平均律の素顔をさらけださせているからなんだ。
音楽はふつう、平均律の素顔があからさまにならないように秘術のかぎりをつくして作られ、演奏される。
だが、すべてを隠しつくすことはできない。
平均律は、平均律独自の響きを出している。
では、完全純正律の響きは、なぜ音が互いに溶け合って澄んでいるのだろうか。
それは完全純正律が、自然のままの音でできているからなのだ。
自然のままの音とは、いったいどういうことなのか?

自然倍音・ハーモニックス

ここでどうしても、倍音ということばを持ち出さなければならない。
自然のままの音とは、自然倍音、自然倍音列の音をさしていっている。
倍音を英語ではハーモニックスという。
ハーモニックスなら、ギターや弦楽器を触った人ならだれでも知っている。
開放弦の音が鳴っているとき、弦のちょうど真ん中あたりに指をふれると、途端に音は1オクターブ上がる。
オクターブ高い音がハーモニックス…倍音の1つである2倍音だ。
倍音、つまりハーモニックスの音、を出す奏法がハーモニックス奏法…フラジョレット奏法ともいう…だ。
ひょっとして、日本語よりも英語の方がポピュラーかもしれないことばの典型だ。

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12フレットと5フレットのハーモニックス…オクターブ

ギターの5弦のA弦を使ってハーモニックスを調べよう。
まず、弦の長さの2分の1のところが12フレットだ。弦の長さが2分の1になれば、音の高さ…振動数…は2倍になる。
高さが2倍の音を1オクターブ高い音という。
というわけで、12フレットのハーモニックスは、開放弦よりも1オクターブ高い2倍音のAとなる。
次に、弦長の4分の1のところが5フレットだ。
ここのハーモニックスは、開放弦よりも2オクターブ高い4倍音のAを出す。

7フレットのハーモニックス…完全5度

7フレットは弦長の3分の1のところにあって、ハーモニックスは3倍音だ。
これを1オクターブ下げると、もとの開放弦の音の2分の3倍の高さのEになる。
この音を、もとのAの音の完全5度上の音という決まりになっている。

4フレットのハーモニックス…長3度

もう1つが4フレットで、弦長の5分の1にあり、ハーモニックスは5倍音だ。
5倍音を2オクターブ下げ、開放弦Aの4分の5倍の高さにした音C♯を、長3度上の音と呼ぶ。

自然倍音がつくる純正長3和音

いままでに出てきた4フレットと7フレットのハーモニックスをもう一度弾いて確かめよう。
その上でこんどは開放弦を弾く。
開放弦Aの音のほかに、5倍音C♯、3倍音Eが同時に鳴っているのを聴きわけるられるに違いない。
こればっかりは、だれにでも聴こえてしまうのだ。
音には、いろいろな倍音が初めから含まれているということがよく分かる。
実際は2、3、4、5、6、7、8、9…倍音と無数の倍音が、いろいろな具合に含まれていて、それが音色を決定している。
いまのA弦の5、4、7フレットの順にハーモニックスを弾けば、Aメージャーの和音になる。
もとになる音、その4分の5倍の高さの音、そして2分の3倍の高さの音を同時に鳴らしてできる和音こそが、完全純正律の純正長3和音に他ならない!
倍音としてもとの音に含まれていた、分身の音だけで出きている。
自然のままの音だ。だから、音が互いに溶け合い、完全に響きあう。

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完全純正律のスケール

トニック、サブドミナント、ドミナントの3つの和音を主要3和音とよぶことは知ってのとおりだ。
この主要3和音が全部純正長3和音になるように音を組み合わせると、完全純正律のスケールができあがる。
冒頭で紹介したカデンツの完全純正律の分が、このスケールでできている。
聴いていただいたとおりの響きを生み出す。
完全純正律のC長調の場合、C、D、E、F、G、A、B、Cのそれぞれの音の高さ…振動数比…は、
1、9/8、5/4、4/3、3/2、5/3、15/8、2
という関係になる。
トニックC・E・Gのそれぞれの音の高さは、1 : 5/4 : 3/2 、つまり4 : 5 : 6 というきれいな関係だ。
サブドミナントF・A・Cでは、4/3 : 5/3 : 2で、同じく4 : 5 : 6 となる。
ドミナントG・B・Dでは、3/2 : 15/8 : 2×9/8で、やはり4 : 5 : 6 だ。(2×9/8は9/8の1オクターブ上という意味)
完全純正律のG長調の場合、G、A、B、C、D、E、F♯、Gのそれぞれの音の高さは、C長調の場合を3/2倍して、
3/2、27/16、15/8、1、9/8、5/4、45/32、3/2
となる。(比の数字は、1と2の間に収まるように、2を掛けたり、2で割ったりして調節してある)
G長調のドミナントD・F♯・Aのそれぞれの音の高さは、9/8 : 45/32 : 27/16 で、ここでも4 : 5 : 6 の関係が保たれていることが分かる。

転調ができなかった完全純正律

ところが、大きな問題がある。
いま出てきた例を振りかえってみよう。
C長調のAの音の高さは5/3だった。
G長調のAの音の高さは27/16になっている。
同じAのはずなのに、高さが変わってしまった!
Aを5/3のままにしておくと、G長調のドミナントD・F♯・Aのそれぞれの音の高さは、9/8 : 45/32 : 5/3、つまり108 : 135 : 160となってしまう。純正長3和音の4 : 5 : 6 とはぜんぜん違う。
Aが5/3のままで、C長調からG長調に転調すると、G長調のドミナントは聴くにたえない不協和音になってしまうことがよく分かるだろう。
完全純正律は、少なくとも固定ピッチの楽器では、転調ができない。
これが決定的な要因となって、完全純正律が一般に実用されることはなかったのだ。

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歴史的音律

前に、完全純正律とか平均律というのは、スケールの音のピッチ決めをするときの物差しの一種だといった。
これは、正しくは音律といわれる。
いろいろな音律が登場し、そして消えた。
歴史的にもっとも古いのがピュタゴラス律だ。ピュタゴラスの定理の、あのピュタゴラスだ。
純正完全5度の積み重ねだけでできている。
だが、純正長3度は使わない。だから、主要3和音は純正和音ではなく、よくは協和しない。
ところで、このピュタゴラス律は、むかしの話だと思っていると、全然違う。
ピュタゴラス律は。いまもますます元気になって生きていて、ヴァイオリン類の調弦に使われている。
ヴァイオリンの4本の弦は下から、G・D・A・Eと純正完全5度の音程で調弦される。
ピュタゴラス音列の一部にほかならない。
G・D・A・Eを上下にさらにのばして12個にすると、それがピュタゴラス律そのものになる。
だから、ピュタゴラス律は、かならずしも過去の音律だと極めつけるわけにはいかない。
さて、歴史的音律に話を戻そう。
転調ができないという完全純正律の致命的欠点を克服するために、いろいろな音律が工夫された。
アロン律(ミーントーン、中全音律)、ヴェルックマイスター律、キルンベルガー律など数多い。
アロン律は、純正長3度を温存するが、完全5度の幅をせばめている。だから、完全な純正和音はできない。
音律によって、さらには調によって、それぞれ特徴をもつ唸りや響き、あるいは歪み、が生み出される。
ある種の歪みを偏愛するという耽美主義的な傾向も過去にはあったらしい。
それにしても、どの音律も、使い勝手も調律もむずかしいという問題を抱えていた。
なお、ピュタゴラス律とアロン律は、それぞれ純正完全5度と純正長3度を、片方だけでも含んでいるので、ときに純正調、純正律と呼ばれることもある。
これらの音律と区別するために、純正完全5度と純正長3度の両方を使い、しかも、その組合せだけでできあがる音律を、完全純正律と呼ぶことにしたわけだ。

平均律

いろいろの音律のなかで、一人勝ちし、ウィンドウズのような地位をしめたのが平均律だ。
リュートの調弦などに古くから使われてはいたが、百数十年前から、ピアノの大量生産にともなって急速に普及したそうだ。
完全純正律の音を少しづづ万遍なくずらせ、等間隔にした12の半音で、平均律のスケールがつくられる。
トニック、サブドミナント、ドミナントなどの和音は、純正の和音にはならない。
最初のところで聴いたとおりの唸り…ビートが出る。
しかし、平均律にはどの調にも転調できるという圧倒的な優位さがあるために音律の王者の地位を占めるにいたった。
さて、平均律には素晴らしい長所があるが、そればっかりが音律でもないだろうと考える人も増えてきた。

たとえば、ヒリアード・アンサンブルはアロン律をベースにした音律で歌っている。
ほかにも、平均律以外の音律で演奏しているミュージシャンはそれほど少なくもない。

平均律以外の音律による演奏を聴いたことのある人は、特に日本ではあまり多くはないと思われる。

ヨーロッパの古い教会のオルがンの調律もほとんどは平均律に直されてしまってはいるようだが、それでもまだ古典音律で調律されたパイプオルガンも残っていて、人びとはそういう響きにいまでも親しんでいる(に違いない(と思うのだが)。

(なお、日本でも最近できたホールにはアロン律やヴェルックマイスター律やキルンベルガー律などの古典音律で調律されているオルガンを備えるところも出てきたようだが、まだ音楽愛好家のだれもが知っているというところにまではいたっていない。それに、平均律の絶対音感を身につけた特にピアニストを中心とするプロの音楽家のほとんどの方々は、平均律以外の音律を忌避する傾向が強いので古典音律がプロの世界で普及する可能性は当面は低いと思われる。アマチュアこそが古典音律リバイバルの中心になれる存在だ)

DTMによる完全純正律の「新生」

さきほど、固定ピッチの楽器では転調ができないから、完全純正律が一般に実用されることはなかったといった。
裏返せば、ピッチを固定されていない楽器ならば、純正律の演奏ができるということだ。
現に、声楽、弦楽器、管楽器などのピッチ可変の楽器などでは、純正律が要所要所で使われることがある。
全曲を通して純正律で演奏していると主張している音楽家もいる。
しかし、いずれにしても、一般の音楽愛好家の手がとどくことではなかった。
さてここで、いよいよDTMの登場だ。
DTMは、可変ピッチの楽器として使うことができるのだ。
ビアノやオルガンやギターなどまで可変ピッチにしてしまうことがてきる。
完全純正律が、だれもが触れ、だれもが演奏できるようになった。
これは、掛値なしに、音楽の歴史始まっていらい初めてのことだといえると思う。

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セント値方式

これまで、音の高さ…振動数比…を分数で表した比で示してきた。
完全5度が3/2で、純正長3度が5/4だった。
3/2というのは、音の振動数が3/2倍、あるいは振動数比が3/2という意味だ。
音の高さや音の高さのへだたりを表す方式には、分数のほかに、セント値方式というのがある。
ここで、セント値方式をマスターしておくとこの先便利だと思う。
簡単にいえば、振動数比をその対数をとって表現するという方法だ。
対数という言葉にアレルギーのある人は、このあとの十数行をとばしていい。
しかし、思ったよりは案外簡単だから、どういう仕組みなのか見てみよう。
1オクターブの振動数比は分数表現で2だった。
2の対数は0.30103となる。
10を0.30103乗すると2になるという意味だ。
対数などというと何やらむむずかしそうな感じがするけれども、この0.30103を2の対数と呼ぶことにしたというだけのこと。
0.30103を3986.3倍に拡大すると1200になる。
このようにして、振動数比2の1オクタープを1200に区分できるようにし、セントという単位をつけたのがセント値方式だ。これを使うと、微小音程の扱いが簡単にできるというメリットがある。
さて、純正完全5度の振動数比は3/2 = 1.5で、その対数は0.17609となる。
0.30103が1200セントだったから、0.17609は1200×(0.17609/0.30103 ) で約702セントとなる。
同じようにして、純正長3度は約386セント、純正完全4度は約498セントだ。
こまかく表せば、純正完全5度は701.955…、純正長3度は386.3137…というように端数がつくのだが、実用上は端数を丸めた数字で十分で、かえってその方が分りやすくて便利だといえる。
振動数比を分数で表したときは、完全5度の純正長3度上の音は?というような組合せ音程の関係は
(3/2)×(5/4)=15/8のように、掛算、割算で求めた。
「セント方式」では、これが足し算、引き算でできる。
完全5度の純正長3度上の音のセント値は?
702+386=1088セントとなる。

完全純正律長調のスケールの音のセント値

完全純正律C長調の、C、D、E、F、G、A、B、Cのそれぞれの音のセント値は、
0、204、386、498、702、884、1088、1200となる。
EとF、BとCの間の半音は112セントだ。
DとE、GとAの間の全音が182セントで、あとの全音は204セントになっている。
長3和音C・E・Gの各音の音程をみると、C・E間が386セント、E・G間が316セント、C・G間が702セントだ。
短3和音A・C・Eの各音の音程は、A・C間が316セント、C・E間が386セント、C・G間が702セントとなる。
これが完全純正律の純正長3和音、純正短3和音の澄んだ響きを生み出す音程なのだ。
一方、完全純正律G長調の、G、A、B、C、D、E、F♯、Gのそれぞれの音のセント値は、
702、906、1088、0、204、386、590、702だ。
C長調のAの884に対し、G長調のAは906に変わっている。
さきほどでてきた、5/3のAが884セントで、27/16のAが906セントにあたる。
この22セントの差が、これからいろいろな局面で重要な意味をもってくるので、しっかりと覚えておこう。

平均律スケールの音のセント

平均律のクロマティック・スケール、C、C♯、D、D♯、E、F、F♯、G、G♯、A、A♯、B、Cのそれぞれの音のセント値は、0、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200だ。
12個の半音が全部100セント刻みになっている。
全音は、すべて200セントだ。
それぞれの音のセント値は、すべての調に共通だ。
これによって平均律は、転調の自由を獲得した。
C、D、E、F、G、A、B、Cだけを抜き出すと、0、200、400、500、700、900、1100、1200となる。
完全純正律C長調の0、204、386、498、702、884、1088、1200とくらべて、それぞれの音のセント値は、0、-4、+14、+2、-2、+16、+12、0だけくいちがってっている。
この差が、平均律を特長づけているのだ。

唸り…ビート

平均律や歴史的音律で、和音を鳴らしたとき、唸り…ビートが出るといった。
唸り…ビートは、振動数が近い2つの音が同時に鳴ったときに出る。
音の大きさが、2つの音の振動数の差と同じ数の周期で変化する現象が唸りといわれる。
重音や和音で唸りを起こすのは、倍音のしわざだ。
Cの5倍音と、Cの長3度上のEの4倍音の例でみてみよう。
平均律の場合、C40の5倍音とE44の4倍音との間では、1秒間に10回強の唸りが出る。
C40の5倍音は1,308.1 Hz、E44の4倍音は1,318.5 Hzで、2つの音の振動数が10.4 Hzだけずれているからだ。これだけ早いスピードで音の大きさが変化すると、唸りというよりもむしろ衝撃音として聴こえる。
完全純正律の場合は、その2つの音の高さはまったく同じだ。唸りは出ない。
平均律で、C・E・Gの長3和音を鳴らしたときに、この衝撃音が聴こえて協和感を損なう。
すべての音の協和音程とされる音程で、程度の差はあっても、唸りがでる。 
平均律はもともと、いろいろな音程の唸りを数えながら、音の高さを完全純正律からずらせてつくる音律なのだから仕方がない。

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(この先は、完全純正律の音楽の楽しみ[1]、[2]、[3]で解説されています) 

 

ギャラリーコーナー

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ナイル河、アスワンの急湍カタラクト

風景氈@ ちぎり絵制作 高梨敏子

風景  ちぎり絵制作 高梨敏子

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