〜〜〜 オススメの本 〜〜〜
 
**************************************
**************************************
**************************************
**************************************
**************************************
**************************************
**************************************
独り身の『金欠』から『散骨』まで 死なないノウハウ(雨宮処凛、2024年2月、第1刷、光文社新書、900+税円)
                                 
本のカバーに
「社会保障を使いこなすコツや各種困り事の相談先など、
 人生の荒波の中で『死なない』ためのサバイバル術を一冊に。」とある。
 
第1章から第6章まであり、それぞれ、お金、仕事、親の介護、健康、トラブル、死、のテーマで書かれている。
各章末には、その分野の専門家との対談がある。
 
解説はわかりやすく、具体的だ。
 
「あとがき」で著者はこう記す。
「さて、この本はフリーランス・単身の自分のこの先が不安すぎるから、その不安要素を潰すために書いたようなものだ。そんな私が『死なないノウハウ』を獲得していく過程で気づいたことがある。
 それは『不安がなくなると、人は優しくなる』というこの世の真理だ。
 
 ・・・・私はとても冷たい人間だった。
 当時はとにかく勝ち続け、人を蹴落とし続けなければ生き残れないと思っていたし、失敗した人間は『自己責任』だと思っていた。
 同時にいつも不安だった。
・・・・
 私は死なないための知識を得ることによって、ずいぶん優しく、人間らしくなれたと思う。
 この本が、あなたにとってそんな存在になれたら、と思っている。」(P255〜257)
                           (2024年3月13日)
 
**************************************
 
**************************************
「アメリカに潰された政治家たち」(孫崎享、2021年5月、第1刷、河出書房新社、830+税円)
                                
この本はもともと2012年に、小学館から出版された。2021年に河出書房新社から文庫として出版された。文庫化に当たり、「文庫化のためのまえがき」と「文庫化のためのあとがき」が加筆された。
 
「文庫化のためのまえがき」で、著者は次の指摘をする。
「・・・アメリカは過去外国に選挙介入をしたことがあるでしょうか。・・・・2020年12月2日、ニューヨーク・タイムズ紙はピーター・ベナール氏の論文を掲載しましたが、・・・『1945年から1989年にかけ、米国は63回、外国の選挙に介入している』と記述しています」(P5)。
「アメリカは世界各地で自分たちに好ましくない政治家を潰してきました」(P12)。
 
最後の方に「特別付録」として「アメリカと闘った12人の政治家」があげられている。
1番最初に1976死去の鳩山一郎があげられている。最後の二人は、現政治家の小沢一郎と鳩山由紀夫である。
 
「文庫化のためのあとがき」で、「小沢一郎や鳩山由紀夫以降の政治家の名前が無いのは何故か」という問いに対して、著者は回答する。
「2009年、2010年以降、”アメリカに潰された政治家”はいません。理由は簡単です。
それ以降、アメリカと対峙する政治家は表舞台では誰もいなくなりました」(P224)。
 
しかし、中国の国力が増大し、中国との関係改善、強化を主張する「政治家、経済人、学者等」が必ず出てくる。そこで、アメリカが潰そうとする政治家が登場する事態が起きると、著者は主張する。                (2024年2月7日)
**************************************
 
**************************************
「『断熱』が日本を救う 健康、経済、省エネの切り札」(高橋真樹、2024年1月、第1刷、集英社新書1100+税円)
                                
著者は、マスコミが全く報じない「断熱」に、10年程前から注目し、取材を始めていた。
その成果がこの本で示されている。
 
あとがきで、著者は指摘する。
「『ほんとうにたいせつなものは目に見えないんだ』
 『断熱』の大切さを語るときにいつも思い浮かべるのは『星の王子様』(・・サン=テグジュベリー著・・・)に登場するこの言葉です。・・・断熱材は壁で覆ってしまえば住む人には見えません。・・・」。
 
 著者は次のように確信している。
「着実に社会を変えていけるのは、断熱・気密のような、すでに完成されたローテクです。・・・断熱材の厚さを何mmにするとか、窓硝子を1枚から2枚にするとか、・・・そういった地味なことです。・・・地域の工務店が施工でき、安くて壊れにくく、計算通りの性能を発揮してくれます。・・・」。
 
 著者の一推しは「内窓」である。
「そして『まずは何から始めようかな?』と迷ったら、ぜひ内窓を付けることからやってみてほしいと思います」(P222〜P225)。
 私も、内窓から挑戦してみよう。              (2024年1月31日)
**************************************
 
**************************************
「イスラエル軍 元兵士が語る非戦論」(ダニー・ネフセタイ、2023年12月、第1刷、集英社新書1100+税円)
                                
1957年、イスラエル生まれのダニーさんは、空軍パイロットにあこがれ、高校卒業後3年間空軍で兵役に従事する。
そもそもイスラエルでは、「パレスチナ人やアラブ人諸国から攻撃され、生きていけないと思い込んでいます。だから自然に軍隊や軍人をあがめることになる」という。
 
この本では、イスラエルという国が、「軍隊」や「愛国心」の価値を高めていく様々な仕掛けや工夫を紹介している。その中で最も影響力があるのはやはり教育だ。
「たとえばどの小学校、中学校、にも卒業生の戦死者の顕彰碑があります。国のために命を捧げたことは学校をあげて讃えられます。・・・また、多くの学校では、かって実戦で使用されていた戦闘機や大砲が飾られています。毎日、それを見て、わたしたちは『カッコいいなあ』と軍隊への憧れを強め、『軍隊のおかげで安心して眠れるんだ』と感謝し・・・この戦闘機や大砲を見て、『こんなもののせいでパレスチナの子どもたちは眠れないんだ』と想像する子はまずいません」(P35、36)。
 
また、ダニー氏は、戦争と武器産業との関係も指摘する。
「戦争はイスラエルの武器産業の雇用だけでなく、アメリカの武器産業の雇用も生みます。元イスラエル軍准将のサッソン・ハダットは、イスラエルの国家安全保障研究所のサイトに・・・論文を寄稿しています(2020年)。/その中でハダットは『ドル建て援助の大部分はアメリカ経済に還元され、アメリカの防衛産業における何千人もの雇用を支えています』と書いています」(P111、112)。
 
ダニー氏は、「イスラエルは、アメリカから強力な軍事的支援をも受けていながら、パレスチナ(アラブ)人や周辺諸国との間で1948年の建国から2023年現在まで75年間ずっと殺し、殺される泥沼の争いを続けています。・・・復習が復讐を呼ぶ現実が続いています。/『武力による平和』。これがウソであることは毎日のようにイスラエルで証明されているのです。・・・歴史が証明しています。・・・憲法9条の理想を実現させましょう。」(P179、180)。                     (2024年1月10日)
**************************************
 
**************************************
「マイナ保険証の罠」(荻原博子、2023年8月第1刷、文春新書、850+税円)
                                
筆者は、マイナンバーとマイナンバーカードとは全く別物だと指摘する。
マイナンバーは、「国から強制的に与えられ、・・・その人に一生涯付いて回る『個人番号』」、「マイナンバーを『利用できる主体』は・・・行政機関や雇用主・・・情報流出などのトラブルがあった場合、100%国が責任を持ちます。・・・個人情報が芋づる式に漏れるということもありません。それは『情報の分散管理』が行われているからです」(P36、37)。
 
一方、マイナンバーカードは本人が「任意」で取得したものなので、マイナポータブルの利用で情報流出などの不利益が生じても、デジタル庁は特別な場合を除き、責任はとわれない、すべて本人の「自己責任」となっている(P79、80)。
しかも、マイナンバーカードを管理するシステムは、「1つの番号で芋づる式に個人情報が引き出せる弱点を持つ」フラットモデルを採用している(P74、75)。
 
実際このフラットモデルを採用しているアメリカで、「なりすましによる被害者は、・・・2006年から2008年までの2年間で、約1170万人。被害総額は・・・2兆円と言われる途方も無い金額になっています」(P76、77)。
 
さらにマイナンバーカードに基づいたマイナ保険証が、医療現場や介護現場に悲惨な状態をもたらすことを筆者は警告している。         (2023年11月22日)
**************************************
 
**************************************
「風神雷神 上・下」(柳広司、2021年3月第1刷、講談社文庫、各720+税円)
                                
「風神雷神図屏風」の作者・俵屋宗達の20代から晩年までを描いている。
 
話は、1598年(慶長3年)3月15日、時の天下人・豊臣秀吉が京都醍醐寺で開いた花見から始まる。そこに、まだ20代の扇屋の伊年(いねん/後の宗達)の姿がある。
 
それ以降、時代は大きく変動する。
1603年、徳川家康が征夷大将軍に。
1616年、大坂夏の陣で、豊臣家が滅ぶ。
1623年〜、第3代将軍、徳川家光。
 
扇の絵付けをしていた伊年が、屏風の絵師・宗達まで成長する過程が、時代の変遷とともに描かれている。
 
と同時に、権力者がいかに権力を掴み、保持、拡張しようとしているか、も描かれている。
 
例えば、勃興しつつあり、民衆を熱狂させる「カブキ」に対して、徳川家康はどう対処したか。
 
「そこで家康はまず、
 ―今後、かれらのことは傾奇者(かぶきもの)ではなく、徒者(いたずらもの)と呼ぶ べし。
 というふれを出した。
 『行為』は『言葉』によって意味を与えられる。・・・
 『カブキ』の語が持つ燦めきに惹かれる若者たちを、『イタズラ者』と呼ぶことで貶め、矮小化する。・・・」(上 P261,262)。             (2023年11月22日)
**************************************
 
**************************************
「ウクライナ戦争即時停戦論」(和田春樹、2023年8月第1刷、平凡社新書、1000+税円)
                                
著者は、「ウクライナ戦争は、米国主導の戦争」であり、アメリカにとってこの戦争は「夢の戦争」「新しい戦争」と指摘する。
 
 「アメリカの青年はこの戦争で誰も死んでいない。アメリカ製の武器が政府の際限なく購入され、ウクライナの戦場で消費される。武器産業は喜びに沸き・・・」
 「だが、この戦争が進むと、・・・ロシヤの力を弱めるためには、一定の限度内でウクライナに戦争をさせ続ける無理になってくる。アメリカにとっての『夢の戦争』、ウクライナにとっての代理戦争を強いることの矛盾が露呈してくる・・・」(P121)。
 
著者は、ウクライナ戦争を、巡っての日本、アメリカの「平和運動」の限界、変化も指摘する。
 
2023年5月3日に出された「市民の意見30」の意見広告を例に挙げる。
 
岸田政権は、このウクライナ戦争によって高まった安全保障の危機に対処するとして「大軍拡」を主張している。それに対して意見広告では「大軍拡がいのちと暮らしを脅かす」、「戦争回避が政府の役割!」を主張するが、それでは「国民の支持を得られないだろう」(P282)。
 「政府にぶつける自分たちの主張なら、『戦争の回避』ではなく『戦争の停止』、『平和の実現』だと言わなければならない。東アジア、東北アジアでは米中戦争、米朝戦争がおこるのを防ぐことが死活問題である。そのことをはっきりと言うべきである」(P283)。
                           (2023年11月14日)   
**************************************
 
**************************************
「ゼロからの『資本論』」(斉藤幸平、2023年2月第3刷、NHK出版新書、1023円)
                                
マルクス「資本論」の卓越した、わかりやすい解説書だ。
しかも、著者は後期マルクスが格闘したテーマにも触れ、著者のマルクス像を示す。
それによると、マルクスが目指した「コミュニズム」は次のようだ。
 
「目指すのは、お金のあるなしに関係なく、みんなにとって大事なものを、みんなで管理し共有できる豊かさであり、すべての人が『全面的に発達した個人』・・・として生きられる社会です。商品として貶められてきた社会の『富』が持つポテンシャルを最大限に発揮させ、さらに発展させることができる社会と言ってもいいでしょう。
 この大転換の結果、経済成長を目的としない脱成長型社会が実現され、生産は初めて持続可能なものになる。・・・」(P217)。
 
著者は、21世紀に入ってスペインの第2の都市バルセロナの呼びかけた「ミュニシパリズム(地域自治主義)」を紹介する。この流れにあるオランダのアムステルダム、ドイツのベルリン州の取り組みを紹介する。
 
さらに著者は「あとがき」で重大に指摘をする。
「現状への不満や未来への恐怖が排外主義などの反動的欲望へと転化しないようにするためには、別のより魅力的な選択肢が存在することを、説得力ある形で示す必要があります」(P235)。                          (2023年8月27日)
**************************************
 
**************************************
「ブルーカーボンとは何か 温暖化を防ぐ『海の森』」(枝廣淳子、2022年9月第1刷、岩波ブックレット、580円+税)
                                
1981年、「二酸化炭素吸収源として大型海洋植物に注目すべき」という「ブルーカーボン」の考え方が登場した。
その30年後、2009年に国連の環境計画、食料農業機関(FAO)、ユネスコなどが共同出版物「ブルーカーボン:炭素をつなぎとめる健全な海の役割」が公表され、ブルーカーボンが世界的に大きな注目を集めることとなった。
 
海の豊かさを取り戻し、大気中の二酸化炭素を回収・除去し、気候変動の進行に歯止めをかけようとする取り組みがブルーカーボンだ。
 
著者は、ブルーカーボンをめぐる世界の動向、日本の動向を紹介する。
最後に著者自身が関わっている「ブルーカーボン・ネットワーク」(BCN 2021年11月〜)を紹介し、実践の中で出てきた課題を取り上げている。
                            (2023年7月17日)
**************************************
 
**************************************
「習近平が狙う『米一極から多極化へ』 台湾有事を創り出すのはCIAだ」(遠藤誉、2023年7月第1刷、ビジネス社、1870円)
                                
この本の価値は第6章「台湾有事はCIAが創り出す」だ。
 
アメリカは第2次世界大戦以降も、ずっと戦争をしてきた国として知られている。
図表6−2には、「朝鮮戦争以降にアメリカが起こした戦争」の一覧がある。
絶え間なく戦争をしている。また、その戦争にCIAが、密かに関与していることも(少しは)知られている。
 
しかし、この本の価値は、1983年当時のレーガン大統領のもと、ネオコン主導で民間非営利団体であるとする「全米民主主義基金、略称NED」が設立され、その実態を明らかにしたことだ。NEDは、名目上は非政府組織だが、実際はアメリカの国家財政に依存し、米政府の命令に従って、「世界中の多くのNGOを操作および支援して、・・・『標的国・地域』における政府転覆や民主化運動の浸透を実行してきた」(P240)。
 
「NEDの支援を受けて新しく誕生した他国の新政権は、当然『親米』となる。・・・紛争や戦争が起きるので武器を必要とし、アメリカの戦争ビジネスが儲かるという仕組みなのである」。「・・・NEDは『第二のCIA』と国際的には呼ばれている」(P241)。
 
図表6-4には、「『第二のCIA』NEDが起こしてきたカラー革命」の一覧がある。
 
図表6-8は、3ページにわたり「『第二のCIA』NEDの活動一覧表」である。これを見ると圧倒される。
 
著者の遠藤氏も正直にこう述べる。「このリストを作成してみて、われながら驚き、・・・・まさか、ここまで多いとは思ってみなかったからだ」(P256)。
 
著者は次のようにNEDの活動を評価する。
「世界中いたるところで、・・・NEDが『各国の民主化を支援する』という建前で『活動』し・・・実際に『民主化』された『標的国・地域』は非常に少ない。ほとんどはエンドレスの紛争と混乱を巻き起こしただけで、合計すれば数千万にのぼるかもしれない命を奪いながら、アメリカの軍需産業がもうけているだけなのである」(P266)。
 
ウクライナでの代理戦争で、アメリカの軍需産業は大笑いをしているだろう。
                             (2023年7月9日)
**************************************
 
**************************************
「100分 de 名著 ショック・ドクトリン ナオミ・クライン」(堤未果、2023年6月第1刷、NHK出版、545+税)
                                
この名著の著者、ナオミ・クラインはこう述べる。「政府にとって大惨事(ショック)は、民衆を思いのままに支配する政策(ドクトリン)を実行に移す、絶好のチャンスである」。』名著「ショック・ドクトリン」には、世界中で巧みに実施された実例が紹介されている。
 
そこでは、どんな政策が実行されたのか?
 
シカゴ学派のミルトン・フリードマンは、ウオール街の銀行家、投資家、多国籍起業家群の資金援助を受け、次の3つのドクトリンを全世界に実現しようとした。
1、規制緩和 2、民営化 3、社会保障削減 。
 
1の規制緩和には、「政府は自国の産業や所有権を保護しようとしてはならないこと」、「最低賃金は定めてはならないこと」も含まれる。
2の民営化は「医療、郵政、教育、年金さらには国立公園まで」も対象とされる。
3 社会保障は削れるだけ削り、自己責任社会にすること(P25〜27)。
 
名著「ショック・ドクトリン」で紹介されている実例を次にいくつかあげる。
 
1973年9月11日、チリ。選挙で正当に選ばれたアジェンデ大統領への軍のクーデター。
(現在、アメリカの国務相、CIAの関与が明らかになっている)。
 
1997年のアジア通貨危機。韓国では、1997年12月3日が「国民的屈辱の日」として記憶されている。
1989年6月、中国の天安門事件。
1991年12月、ロシアのエリツィンによるソ連崩壊。
2003年のイラク戦争。
 
そして堤による日本の考察。
2011年3月、東日本大震災後の宮城県
コロナ禍の2021年、どんな法律が成立していったか。
 
しかし、ショック・ドクトリンの手法に気づいた人々による「反撃」も広く始まっている。
                              (2023年6月18日)
**************************************
 
**************************************
「世界で最初に飢えるのは日本」(鈴木宣弘、2022年11月第1刷、講談社α新書、900+税)
                                
現在、日本の食料自給率は37%と言われている。しかし著者によれば、「種と肥料の海外依存度を考慮したら日本の自給率は今でも10%に届かないぐらいなのである」。「世界的な不作や国同士の対立による輸出停止・規制が広がれば、日本人が最も飢餓に陥りやすい可能性があるということである」(P5)。
「『お金を出せば輸入できる』ことを前提にした食料安全保障は通用しない・・・国内の食料・農業を守ることこそが防衛の要、それこそが安全保障だ」(P6)。
 
この危機意識のもと、著者は、「世界を襲う『食の10大リスク』」や、「日本人が知らない『危険な輸入食品』」などを述べる。
 
最後の第5章は「農業再興戦略」である。一般に流布している「『日本の農業は過保護』というウソ」を指摘し、「ローカルフード法」や「新しい食料システム」を紹介し、これからの取り組みへの道筋を描く。
                             (2023年6月18日)
**************************************
 
**************************************
「縛られる日本人」(メアリー・C・ブリントン、2022年9月第1刷、中公新書、900+税)
                                
「誠実な」研究者とは、どんな人だろうか?
学問的な蓄積がしっかりしており、現実への問題意識を持ち、それへの対処方針を打ち出せ、しかもわかりやすく説明できる。この本の著者は、そのような「誠実な」研究者と言えるだろう。
 
人口が急減する日本。なぜ出生率や幸福度が低いのか。著者は、日本、アメリカ、スウェーデンの子育て世代へ、2012年、2019〜2020年に2回にわたるアンケートを実施した。
 
それを元に最終章でいくつかの政策提言を行う。
 
たとえば、「追加の政策提案」として(P246〜247)
「 子どもが生まれたあ八週間以内に、少なくとも四週間の育児休業を取得するよう男性  たちに義務づける。 」
 
そしてすべての政策提言に続き、次の各項目び沿ったコメントが続く。
 
 必要な賛同者(・・・):政府、財界団体、企業、男性と女性の働き手たち
 期待できる短期効果  :夫婦にとって子育ての役割分担の選択肢が広がる。
 期待できる長期効果  :・・・・子育てが夫婦二人の責任と見なされるようになる。             それに伴い、ワーク・ライフ・バランスが「女性の問題」で             はなく「人間の問題」と位置づけられやすくなる 
 
 著者の根本の問題意識は次の示されている。
「・・・日本の厳しい労働環境、雇用主が男子社員の職業生活を(ひいては家庭生活も)強力にコントロールする状況、そして、そのような夫の状況に合わせて妻が自らの職業生活と家庭生活を調整しなくはならない現実は、日本社会全体にとって不健全ではないか・・・このような状況は、家庭や個人、そして社会全体に恩恵をもたらしているのか・・・
」(P249)。                        (2023年5月14日)
**************************************
 
**************************************
「最悪の予感 パンデミックとの戦い」(マイケル・ルイス、2023年1月第1刷、ハヤカワノンフィクション文庫、1080+税)
                                
この本は、新型コロナのパンデミックの最中、2021年に書かれた。
トランプ政権のもと、2019年10月に、頭脳明晰な人々が、パンデミックに対する準備で世界各国をランク付けした。第1位がアメリカ、第2位がイギリスだったという。
 
しかし2021年2月、医学雑誌「ザ・ランセット」は、アメリカのパンデミック対応を批判する長文記事を掲載した。その時点で、新型コロナウイルスによるアメリカ人の死者は45万人に達していた。世界の人口の4%強を有するアメリカが、新型コロナウイルスの死者数の20%を占めていた。他のG7六カ国と死亡率が同じであれば、45万人のうち18万人がまだ生存していたはずだ(はじめに)。
 
2023年3月24日段階でのCDC(アメリカ疾病対策センター)発表によれば、感染者数は約1.04億人(人口比約31%)、死者は112万人(人口比0.34%)に達している。同時期に、日本は、感染者数は約0.334億人(人口比約27%)、死者は7.37万人(人口比0.06%)である。死者の人口比では、アメリカは日本の約5.7倍となっている。
 
世界に冠たるアメリカの公衆衛生に何が起こっているのか?
一体CDCはどうなっていたのか?
 
この本は、CDCや連邦政府に頼れない状況で、多くの良心的な研究者の奮闘を描いている。
 
同時に、1983年レーガン政権で起こったCDCを巡る重大な機構の変更が明らかにされている。それまでは、CDC所長は内部の推薦で決定されていたが、これ以降、大統領が人事権を握ってしまった。過去の所長のように政権をまたいで留任することはまずなくなってしまった。「科学の世界」に政権への忖度が幅を来すようになってしまった。
 
これは、内閣が官僚の人事権を実質的に全面的に握るようになれば、何が起こるかを如実に示している。その弊害はすべての人々に降りかかる。
                            (2023年3月13日)
**************************************
 
**************************************
「習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン」(遠藤誉、2022年12月第1刷、PHP新書、1000+税)
                              
著者は「おわりに」で次のように書く。
「日本には『日本メディアによる、日本人の耳目に心地よい、日本人だけに通じる中国論』が横行している」。「習近平がなぜ第三期目を狙ったのか、・・・その真相を直視しないと、日本は戦略を誤り、またしても中国につぎつぎと追い抜かれ・・・」と危機感を示す。
 
著者が明らかにする習近平の生い立ちは、すざましい。日本の2世、3世の政治家とは雲泥の違いだ。また、中国は「独裁国家」と一般に理解されているが、政策決定のための作業グループは充実している。政治家に忖度する日本の官僚が勝てるとは思えない。
 
アメリカの制裁で沈没した日本の半導体について「P120〜P126」で書かれている。
リストラされた日本の技術屋が韓国のサムスンにヘッドハンティングされたことはかなり知られているが、窓際に追いやられた日本の技術者が「土曜日曜ソウル通い」をして、韓国の半導体企業の飛躍的発展に貢献していった事実も紹介されている。
 
一方、アメリカの制裁をうけても「製造大国」になった中国のカラクリも紹介している。
2022年10月の中国宇宙ステーションの稼働や、2018年12月、世界初の月の裏側着陸のための月面探査機打ち上げ成功は、世界レベルの中国技術力を示している。しかしこの技術的な重要性が日本ではきちんと認識されていない。
 
いつまで中国を「バカ」にできると思っているのか?
                             (2023年3月13日)
**************************************
 
**************************************
「[新版]習慣の力」(チャールズ・デュヒック、2019年7月第1刷、ハヤカワノンフィクション文庫、1020+税)
                              
著者は、ニューヨークタイムズでビジネス担当記者として長年活躍していた。
著者は、習慣のなかで最も重要な要となる「キーストーン・ハビット」に着目し、個人、企業、社会それぞれこの「キーストーン・ハビット」がどう働き、それをどう変えるかを、紹介・検討する。
 
取り上げられた事例はどれも、興味深いもので、著者の分析に同意しなくても、十分楽しめる。
私が特に面白かったものは、次の3つだ。
個人では、「第2章  習慣を生み出す「力」―― ファブリーズが突然ヒットした理由」
企業では、「第7章 買わせる技術 ―― ヒット商品を自在に生み出す秘策」
社会では、「第9章 習慣の功罪 ―― ギャンブル依存は意志か習慣か」
この9章では、カジノにはまる女性が登場する。カジノ側が女性を徐々にカジノ依存にさせていく手法は「見事」だ。大阪維新がやろうとしているIR/カジノがもたらす悲劇を痛感した。                        (2023年1月24日)
**************************************
 
**************************************
「『廃炉』という幻想 福島第一原発、本当の物語」(吉野実、2022年2月第1刷、光文社新書、1100+税)
                              
著者は、2011年3月11日の福島第一原発(1F)の事故に遭遇し、それ以来10年以上1Fに関わっているジャーナリストだ。
1Fの情報がマスコミのほとんど登場しなくなり、「廃炉は順調で、廃炉は30〜40年で完了する」という根拠のない話が流布されている。
著者は、これが全くの幻想であることをきちんと説明する。
 
主な章のタイトルは次の通りだ。
第1章 廃炉の「現実」
第2章 先送りされた「処理水」問題
第3章 廃炉30〜40年は「イメージ戦略」
・・・
第6章 破綻した「賠償スキーム」
・・・・
終章 「真実の開示」と議論が必要だ
 
2013年9月7日、オリンピックを招致するためのIOCl総会で、当時の安倍首相が1Fが「アンダーコントロール」されていると発言した。その発言を受け、流れ出す汚染水への対応として「凍土壁」が建設された。それ以降「凍土壁」の効果がやはり不十分であることが判明しているにもかかわらず、効果的な「遮水壁」の建設はなされていない。
 
その場しのぎの権力者への忖度が、いまだ検証されずに続いて、膨大な費用と人的資源が浪費されている。また、その浪費を指摘するマスコミの力も弱い。
 
「誤り」を訂正できない権力者、担当の官僚、東電、「無関心」な人々、この集まりが行き着く先は「破滅」ではないかと思ってしまった。
                           (2023年1月24日)
**************************************
 
**************************************
「プリズン・サークル」(坂上香、2022年3月第1刷、岩波書店、2000円+税)
                              
2020年1月に、映画「プリズン・サークル」が一般公開された。
その監督、坂上氏は2009年12月に初めてこの映画の「舞台」―「島根あさひ社会復帰促進センター」という名の「刑務所」に向かった。2014年から刑務所内で2年間、出所者の取材を含め5年間カメラを回したという。
 
映画やこの本で紹介される「島根あさひ」の先鋭的な取り組みは、日本の刑務所の「常識」に挑戦したものであると同時に、現在の日本社会/家庭の問題点をもあぶり出す。
 
本の紹介文は次の通りだ。
「受刑者が互いの体験に耳を傾け、本音で語り合う。
 そんな更生プログラムを持つ男子刑務所がある。
 埋もれていた自身の傷に、言葉を与えようとする瞬間。
 償いとは何かを突きつける仲間の一言――。
 日本で初めて「掘りの中」の長期撮影を実現し、
 繊細なプログラムを見届けた著者がおくる
 渾身のノンフィクション。」
 
プリズン・サークルで大切なものが、「エモーショナル・リテラシー」という。
「島根あさひ」のワークブック『変化への入り口』には、次のように説明されている。
 
感識(エモーショナル・リテラシー) 自分の心の動きや感情を感じ取り、それと認識し、表現する力。感情の読み書き能力。「感情の筋肉」を鍛えること。
 
「エピローグ」と「あとがき」で、著者はこの「プリズン・サークル」は、「私自身の物語でもあった」と、自らの体験を語る。
 
私自身もこの「プリズン・サークル」を読みながら、自らの物語をしまい込んでいた記憶の中から一部拾い出していた。                (2023年1月15日)
**************************************
 
**************************************
「ルポ 食が壊れる」(堤未果、2022年12月第1刷、文春新書、900円+税)
                              
著者は2019年の夏から世界各地での取材を始め、3年かかってこのルポを上梓した。
ブームとなろうとしている「人口肉」、ゲノム編集がもたらす「フードテック」の新潮流、それらの背景をさぐると、遺伝子組み換えビジネスや農薬メーカー・モンサント、マイクロソフト社のビル・ゲイツが登場する。これらの多国籍企業や投資家は何を考えているのか?
第六章「日本の食の未来を切り拓け」、第七章「世界はまだまだ養える」は、読書への希望の章だ。著者が土壌微生物と「循環」に注目する。日本の土壌の可能性は高い。それだから日本食が豊かだと納得させられる。
 
「おわりに」で著者は、自分自身の体験を記す。著者はアメリカ留学後、ファーストフードなどのアメリカ的食生活を10年以上続けた後、消化系に深刻な障害を抱え、日本に帰国する。「病院の胃腸薬、漢方、整体、サプリ、有機食」などを試みたが改善せず、絶望感にとらわれる。その後、中国医学のある医師のアドバイス、「薬を使わずに腸内蘇生術(+発酵食)」を3ヶ月実施したところ、症状が治まったという。まさに、「食べたものが私になる(We are what we eat)」を、実感したという。
                         (2023年1月10日)
**************************************
 
**************************************
「ミラーニューロンの発見」(マルコ・イアコボーニ、塩原通緒訳、2009年5月第1刷、ハヤカワ文庫、780円+税)
                              
訳者は、ミラーニューロンの発見を「脳の中の幽霊」の著者、神経科学者のラマチャンドランの次の言葉を紹介する。「DNAが生物学の分野に果たしたのと同様の役割を、ミラーニューロンは心理学の分野で果たすだろう」。DNAが生物学を根本から変えていったように、ミラーニューロンは心理学/神経科学を根本から変えるものだと、ラマチャンドランは指摘した。
読んでみてこの「予言」は決して大げさではないと感じた。
 
ミラーニューロンとは、他者の行動を自分の脳内で「鏡」のように映し出す神経細胞のことだ。さらにミラーニューロンは、他者の行動ばかりか、他者の「意図」までも識別できるようだと考えられている。
このような神経細胞が存在するとは、10数年前には誰も予想していなかった。
 
このミラーニューロンは、精神の発達、教育、ビジネス、政治にも新しいフロンティアを
開いていくに違いない。善い面でも悪い面にも。
                            (2022年12月12日)
**************************************
 
**************************************
「パンとサーカス」(島田雅彦、2022年3月第1刷、講談社、2500円+税)
                              
 作者は、この本で1945年敗戦後の日本の姿を「アメリカの傀儡政権」が支配したものとして描く。そして、21世紀になり米中の対立の狭間で、日本が向かおうとしている状況に警告をならす。
―・・・日米同盟の先にあるのは中日戦争です。・・・中国もアメリカも総力戦を行うつもりはありません。・・・しかし、軍事衝突が起きる可能性は常にあります。その場合、
米軍は出動せず、日本はアメリカの代理として戦争をさせられます。アメリカは停戦の調停役として介入し、中国での利権を拡大するでしょう。
―日本だけが再び手痛い敗戦をする。・・・(P528,529)
 
この作者の「予想」は、2022年のウクライナを日本と読み替えてみるとよくわかる。
                             (2022年10月9日)
**************************************
 
**************************************
「何が記者を殺すのか 大阪発ドキュメンタリーの現場から」
(斉加尚代、2022年7月第4刷、集英社新書、9400円+税)
                              
著者は、1987年毎日放送(MBS)入社後、報道記者等を経て、2015年からドキュメンタリー担当ディレクター。
この本では、次の4つのドキュメンタリーと1つの映画が紹介されている。
「なぜペンをとるのか〜沖縄の新聞記者たち」(2015年9月27日放送)
「沖縄 さまよう木霊〜基地反対運動の素顔」(2017年1月29日放送)
「教育と愛国〜教科書でいま何が起きているのか」(2017年7月30日放送)
そして今回、特に詳しく報告されているのが次のドキュメンタリー。
「バッシング〜その発信源の背後に何が」(2018年12月16日放送)
巻末に臨場感あふれる台本がある。
 
また、映画は、2022年5月に劇場公開がきまった「教育と愛国」である。
 
著者の問題意識は次の言葉でよく示されている。
「大阪を拠点として公教育について考え続けてきた自分にとって、教育に対する政治介入とは、先生や子どもたちそれぞれが『自分に誠実であり、他者を尊重する』という基本姿勢を実現しにくくする社会への歩みだと、この時はっきり感じとったのです。・・・本来の自由が失われ、競争をする自由が押し付けられて、政治圧力が充満し、ヘイトやデマまで生んでいるのではないか。・・・」(P256)
                          (2022年8月27日)
**************************************
 
**************************************
「維新ぎらい」(大石あきこ、2022年6月第1刷、講談社、900円+税)
                              
著者は、2008年3月、橋下徹大阪知事の就任後、最初の朝礼で、橋下氏に「どんだけサービス残業やっていると思ってるんですか」と抗議した。その後、府庁に抗議電話が約1000件かかり、総務部などの電話がパンクしたという。著者は、事態をきっかけに「よし闘おう」と腹を決めたという。
 
内容は、橋下氏が大阪に残したもの、著者の生い立ち、維新が狙った大阪都構想がいかに「詐欺」か、現状の息苦しさの正体、と続く。
 
語りは平明、リズムが良い。
「あとがき」の6ページにその秘密が明かされる。「あとがく」だけでも読む価値がある。大石あきこは、ひょっとすると大ブレークするのでは、と感じさせる「あとがき」だ
 
                              (2022年6月18日)
**************************************
 
**************************************
「エシカル革命」(末吉里花、2021年12月第1刷、山川出版社、1600円+税)
                        
著者は、フリーアナウンサーとして世界各地を旅した中、2004年、アフリカでキリマンジェロの氷河が減少している現場にショックを受ける。
その後一般社団法人エシカル協会を設立、代表理事。
 
著者はエシカルを次のように説明する。
―エシカルとは、直訳すると「倫理的な」という意味ですが、・・・エシカル協会では「人や社会、地球環境(人間以外の生き物も含む)、地域に配慮した考え方」(P5)。
 
エシカル消費について、次の3つを指摘する。「環境への配慮」、「社会への配慮」、「地域への配慮」。それぞれ具体的にわかりやすく説明している。
 
コロナ禍で、著者は体調を崩したが、それを「克服」する過程も丁寧に語られている。
 
最後の8ページには、「今日から始めるエシカルアクションガイド」としてチェックリストがあり、役に立つ。                 (2022年6月5日)
**************************************
 
**************************************
「ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略」(遠藤誉、2022年4月第1刷、PHP新書、980円+税)
                        
著者の遠藤氏は、中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授である。
ウクライナ戦争で、「ロシアが極悪非道」というマスコミの論調の中で、この本を出版した著者の「勇気」を思う。
 
著者はロシアの行動は支持しないが、この戦争が「なぜ起こった」をきちんと明らかにするべきだと考えている。この本で日本ではほとんど知らされていないことが示されている。六章からなる。
 
 第一章 中露間に隙間風 ― ロシアの軍事侵攻に賛同を表明しない習近平
 第二章 習近平が描く対露『軍冷経熱』の恐るべきシナリオ
 第三章 ウクライナ軍事侵攻は台湾武力攻撃を招くか?
 第四章 習近平のウイグル「太陽光パネル基地」戦略とイーロン・マスク効果
 第五章 バイデンに利用され捨てられたウクライナの悲痛
 第六章 ウクライナを巡る「中露米印パ」相関図 ― 際立つ露印の軍事的緊密さ
 
そして、「おわりに ―戦争で得をするのは誰か?」で、次のように指摘する。
「このようにいくつかピックアップしただけでもアメリカはアメリカ本土以外の地で絶え間なく戦争を起こしては金儲けをしている。その間に失われる命など、将棋の捨て駒としか思っておらず、ビジネスで戦争をしているのだ」(P216)。
                          (2022年4月23日)
**************************************
 
**************************************
「韓国社会の現在」(春木育美、2020年8月第1刷、中公新書、880円+税)
                        
「ヘル朝鮮」という言葉がある。韓国の「生きづらさ」を示したものだ。
韓国の合計特殊出生率は2019年に0.92と過去最低を記録し、OECD諸国で最低となった。10代の7割が大学に進学するが、多くは定職に就けないまま30代を迎える。
婚姻件数自体が激減している。2017年で、未婚率は20代で日本は79.7%に対して韓国91.3%、30代では日本の34.8%に対して韓国36.3%となり、家族形成という社会のシステムが急速に崩れつつある。
 
国民年金制度が未熟のため高齢者の6割近くが無年金である。
受験体制は日本よりきつく、若者は大企業への過酷な競争へ駆り立てられている。
 
この本は5つの視点で韓国社会を描く。「世界で突出する少子化」、「貧困化、孤立化、ひとりの時代の到来」、「デジタル先進国の明暗」、「国民総高学歴社会の憂鬱」、「韓国女性のいま−男尊女卑を変わるか−」。
 
少子化というのは社会全体の価値観やシステムの結果であり、労働市場の多様化/安定化、多様な価値観の必要性が求められている。          (2022年4月5日)
**************************************
 
**************************************
「南極の氷に何が起きているか 気候変動と氷床の科学」(杉山慎、2021年11月第1刷、中公新書、860円+税)
                        
著者によれば、「21世紀に入ってから南極を観察する技術が飛躍向上して・・・実際この分野は、10年前の教科書は古くてとても使えない」(はじめに)。
 
国連の機関IPCCの2019年の報告で2100年までの環境変化が焦点となった。温室効果ガスが制限なしで放出された場合、21世紀末には海水面の上昇は、84センチから最大1.1メートルになる。最大の原因は、海水の温度が上がることによる海水膨張であり、山岳氷河の融解、グリーンランドの氷床の融解が続き、14%が南極の氷床の融解によるものと考えられている(P165・166)。
2021年IPCCの第六次の評価報告では、南極氷床の変動次第では、最悪の海面上昇は「2100年までに2メートル、2150年までに5メートルに迫る可能性を完全には否定できない」としている(P176 )。
気候変動の影響が深刻化するなか、南極氷床の正しい理解が求められている。
                           (2022年3月5日)
**************************************
 
**************************************
「グローバリゼーションの中の江戸」(田中優子、2012年6月第1刷、岩波ジュニア新書、820円+税)
                        
「江戸時代は鎖国」と言われることがある。しかし実態はどうか?
豊臣秀吉の2度にわたる朝鮮侵略が失敗に終わり、それを踏まえて出発した江戸幕府は、江戸城に諸大名がやってくる参勤交代制度を作った。また、朝鮮通信使、琉球使節、オランダ商館長、アイヌ民族の挨拶制度を作った。この参勤交代制度と挨拶制度は、日本各地に経済的、文化的に多くのものをもたらし、世界とつながる日本を作り出した。
 
田中氏は「おわりに」次のように書く。
「社会は進歩しているわけではなく、進化しているわけでもありません。社会は人間が作っているのですから、放っておいて自然に良い方に向かうことなど、あり得ないからです。しかし、変化はしています。」・・・・
「自分が生きているその地域が、そこにふさわしい発展をするように、世界のなかにある様々な可能性を取捨選択することです。」        (2022年2月3日)
**************************************
 
**************************************
「デジタル・ファシズム 日本の資産と主権が消える」(堤未果、2021年12月第6刷、NHK出版、880円+税)
                        
3つのテーマで構成されている。
「第T部 政府が狙われる」では、「デジタル庁」や「スーパーシティ構想」が取り上げられている。知らされていないことが多い。
例えば、「アマゾンのような企業が日本でデジタルビジネスをする際、個人情報などを管理するデータ設備を日本国内に置く要求は、2020年1月1日に発行した『日米デジタル貿易協定』によってできなくなっている」(P35)。
「第U部 マネーが狙われる」では「スマホ決済」、「デジタルマネー」、「お金の主権」が取り上げられている。やはり知らないことが多い。
「PayPayなどの資金移動業者は、国の厳しい審査を経て認可される銀行と違い、登録制になっている。/万が一不正利用された場合、『預金者保護法』のような共通ルールはない。つまり、いつ、どんな条件の下にどう保証されるのかは、個々の企業次第となる」(P131))。
「第V部 教育が狙われる」では、「グーグル」、「オンライン教育」、「教科書のない学校」が取り上げられている。
次の事実は、デジタル機器の教育的効果について何よりも雄弁だ。
「ビル・ゲイツは自分の子供たちに14歳までスマホやタブレットを持たせず、・・・
西海岸のテック企業幹部の子供たちが通う、・・・一番人気のある学校・・・・では、13歳より前の子供たちをテクノロジーに触れさせることを、以下の理由から許可していない。
<デジタル機器の利用によって、子供の健康な身体、創造性と芸術性、規律と自制の習慣や、柔らかい頭と機敏な精神を十分に発達させる能力が妨げられるためです>(P255)。                            (2022年1月5日)
**************************************
 
**************************************
「無料(タダ)よりやすいものもある お金の行動経済学」(ダン・アルエリー&ジェフ・クライスラー、2021年11月第1刷、ハヤカワ文庫NF、1040円+税)
                               
原題は「DOLLARS AND SENSE どのようにわれわれはお金を誤解し、どのようにより賢くお金をつかえるか」。
著者のアルエリーは、消費者行動の研究者でアメリカ、デューク大学の教授。
第1章は、カジノでのジョージの経験から始まる。「カジノは私たちからお金を引き離す術を極めている」。
そして「じつは世界は思ったよりずっとカジノに似ている」。「ジョージがカジノで犯したまちがいは、日常生活の多くの場面でも起こる。そうしたまちがいの原因は、主にお金の本質に関する根源的な誤解にある」(P24)。
著者らは13の事例をもとに「お金への誤解」を明らかにする。
 
「さてどうする!思考のあやまちを乗り越える」として最後の4章がある。
 
著者らの立場はまとめると次のようになる・
「私たちの心理や行動、傾向、愚かさを、これからも価格設定者販売員、商業利益に食い物にされるがままにすることもできる。社会や政府が、私たちを・・・守る施策を導入しれくれるのを待つこともできる。あるいは、自分の限界をより強く意識し、あやまちを修正するための自分なりの仕組みを設計し、お金の決定を自分でコントロール」(P390)することもできる。
 
キャッシュレスが叫ばれる現在、自分を守るために大変示唆に富む本だ。
                          (2022年1月5日)
**************************************
 
**************************************
「スマホ危機 親子の克服術」(石川結貴、2021年9月第1刷、文春新書、820円+税)
                        
2021年12月18日、MBSテレビ(毎日系)の報道特集(17時30分〜18時50分)が「深刻化するスマホ依存の子供たち」を放映した。中学生らの子供たちが4泊5日の共同生活をおくる姿があった。一体どこまで子供そして大人にスマホ依存が広がっているのか?
 
この本で、著者は子供たちの実態を示し、親が「子供の現実」に向き合う必要性を訴える。スマホ依存の現実に「紙のチェックシート」で親子で向き会うことを勧める。提案は具体的で実践的だ。いろいろな相談機関の紹介とその利用の仕方の説明も丁寧だ。
具体的な事例も示唆に富んでいる。            (2021年12月19日)
**************************************
 
**************************************
「グリーン・ニューディール ー世界を動かすガバニング・アジェンダ」(明日香壽川、2021年6月第1刷、岩波新書、860円+税)
                        
著者は、現在、東北大学大学院教授である。ジュネーブのCOP2以来、気候変動の国際交渉の現場に立ち会ってきた。また、仙台での石炭火力差し止め訴訟の原告として、活動をしてきた第一人者である。
 
著者らが関わる研究グループは2021年2月に日本版グリーン・ニューディールとして「レポート2030―グリーン・リカバリーと2050年カーボン・ニュートラルを実現する2030年までのロードマップ」を発表している。著者らのグリーン・リカバリー戦略では、CO2排出量が「省エネ・再エネの既存技術のみで2030年に1990年比で55%減・・・、2050年に1990年比で93%減となる・・・」。これは政府や産業界が宣伝している「2050年カーボン・ニュートラルには革新的技術が不可欠」に対する反論となっている。(P156、157、170、171)
 
全体的に多岐にわたる問題点をしっかり検討している。
 
忙しい人は、第5章「日本版グリーン・ニューディール」、第6章「グリーン・ニューディールの課題」、終章「現世代と未来世代の豊かさと幸せをめざして」をどうぞ。
 
第6章に斉藤幸平氏の「人新世の『資本論』」について、多くを評価しながら、気候変動との関連で批判的検討がある(P229〜235)。私も明日香氏の批判に同意する。
                            (2021年10月18日)
**************************************
 
**************************************
「マンガ認知症」(ニコ・ニコルソン/佐藤眞一、2020年6月第1刷、ちくま新書、880円+税)
                                 
漫画家のニコ・ニコルソンの祖母が認知症を発症した。祖母を巡って奮闘する母、娘のニコ。認知症にまつわる11のショートストリーがマンガで描かれる。「お金を取られた」、「同じことを何度でも言う」、「突然怒り出す」、「家にいるのに『帰りたい』という」、「徘徊」など、多くの介護者がであう事例が描かれている。老年行動学を研究している大阪大学の佐藤先生がマンガの中に登場して、介護者にアドバイスをする。各ストーリーのマンガの次に佐藤先生の解説があり、理論的な背景を知ることができる。
10章「介護に疲れ果てました。どうしたらいいですか?」、番外編「なんでお尻を触るんですかコラー」は、介護の切実さがよくわかる。
「認知症」を知ることが、当事者も介護者も「救う」ことになる。
                           (2021年10月10日)
**************************************
 
**************************************
「象は忘れない」(柳広司、2016年2月第1刷、文藝春秋、1350円+税)
                                 
巻末に、2011年3月の原発事故以来、震災関係で作者が読んだ本の一覧がある。これらの参考資料をもとにこの作品は書かれた。この作品はいわばフィクションの形をとったノンフィクションだ。
 
5つの話からなる。そのうち4つは、「オール讀物」の2015年4月号から2016年1月号に連載されたものだ。残りの1つは、書き下ろしである。
 
原発作業員の原発事故での経験、原発から30キロ離れたところへ避難しようとしている若者、仮設住宅に入ったが元々漁師の夫が「壊れた」ため東京に出てきた母と子、そして米国の「トモダチ作戦」、最後は「避難指示解除」を巡って引き裂かれた仮設住宅の若者たちが描かれる。
 
「オール讀物」には掲載されなかった「トモダチ作戦」を巡る話は衝撃的だ。
避難所で救援物資を配るという「トモダチ作戦」は、もう一つの「ゼロ作戦」も遂行していた。「ゼロ作戦」とは、「核戦争対応モード」の作戦で、事故原発周辺という放射能汚染地域に上陸し、行動データ、土壌データ収集の任務遂行の作戦だったと描かれてる。
 
作者の勇気に拍手!!
                          (2021年10月6日)
**************************************
 
**************************************
「津波の霊たち 3・11 死と生の物語」(リチャード・ロイド・バリー、2021年1月第1刷、ハヤカワノンフィクション文庫、1020円+税)
                                
著者のロイド氏は、1969年イギリス生まれ、1995年来日、現在、英「ザ・タイムズ」紙アジア編集長および東京支局長。六年をかけて執筆したのが本書”Ghosts of the Tunami:
Death aind Life in Japan's Disaster Zone”。2017年にイギリス、アメリカで出版されて以来、フランス度、中国後、韓国後などに翻訳され、世界中で読まれている。
 
この本は、2011年3月11日に起こった東日本大震災を扱ったノンフィクション。
大きなテーマは2つ。
1つは、宮城県石巻市の大川小学校での津波による大惨事である。学校側の不適切な判断により児童78人のうち74人が亡くなり、教職員の11人のうち10人が亡くなっている。後日、遺族による裁判が起こされる。ロイド氏は、様々な保護者との関わりの中で「日本社会」の特質を描き出す。
2つめは、震災後に頻発した心霊現象について。宮城県栗原市にある通大寺の金田住職を通じて「津波の霊たち」の実相に迫っていく。
 
「生きるとは」、「死とは」、「親子とは」を考えてしまう作品だ。いくつの箇所は涙なしでは読めなかった。
 
なお、関連した「心霊現象」については次の本も参考になった。
「魂でもいいから、そばにいて 3・11後の霊体験を聞く」(奥野修司、2020年3月第1刷、新潮文庫、590円+税)」
また憑依体験につては
「死者の告白 30人に憑依された女性の記録」(奥野修司、2021年7月第1刷、講談社、1600円+税)」                      (2021年9月29日)
**************************************
 
**************************************
「二度読んだ本を三度読む」(柳広司、2019年4月第1刷、岩波新書、780円+税)
                        
岩波書店発行の月刊誌「図書」に、2017年10月号から2019年2月号に連載されたもの。最後の書き下ろし1つを加え、18作品/著者が紹介されている。
作品を紹介しながら、その当時の日本社会の状況も感じられる書評になっている。
 
『動物農場』(ジョージ・オーウェル)では、次の指摘がある。
「・・・オーウェルが繰り返し主張するのは『政治の堕落と言語の堕落は不可分に結びついている』という命題だ」。
「現実から目を逸らして次に待っているのは、より悲惨な現実である」。
 
『スローカーブを、もう一球』(山際淳司)では、オリンピックについての事実を示す。
「かってオリンピックは『アマチュアスポーツの祭典』と呼ばれた。・・・スポーツでわずかでも金銭を受け取った事実が判明すると選手名簿から除名、メダルを剥奪されるという徹底ぶりだった。百八十度方針が転換したのは、1984年のロサンゼルス大会からだ。大手スポンサーを引き入れ、莫大な放送権料を設定することで、オリンピックは一転”もうかる商売”へと変貌した。・・・スポーツのショービジネス化と、なし崩し的なプロ選書の参加である」。
 
柳広司というプロ作家の作品分析は、「小説」を仕上げるということが並大抵の作業ではないことを知らせてくれる。                  (2021年9月8日)
**************************************
 
**************************************
「百万のマルコ」(柳広司、2007年3月第1刷、創元推理文庫、755円+税)
                        
13世紀末、ジェノヴァの牢獄。囚人たちは「退屈」に苦しんでした。そこに小柄でボロをまとった囚人マルコ・ポーロが入ってくる。マルコは17年間、東方の大ハーン・フビライに仕えていたという。マルコが囚人たちに語る世界各地の不思議な体験談は、いつも謎を残して終わり、囚人たちはその謎解きに挑戦する。最後の13話で、意外な結末を迎える。プロの小説家の面目躍如だ。            (2021年9月8日)
**************************************
 
**************************************
「アンブレイカブル」(柳広司、2021年1月第1刷、角川書店、1800円+税)
                        
 
作者は、この作品を歴史ミステリー小説と位置づけている。
 
昭和2年(1927年)から、米軍による大空襲が行われた昭和20年(1945年)3月までの歴史小説である。この期間に4つの話が順に展開する。
 
最初は、「蟹工船」で有名な小林多喜二が登場する。
第2話は、川柳作家“鶴彬(つるあきら)”と憲兵大尉が登場する。
第3話は、昭和18年(1943)、「第2のゾルゲ事件」ともいわれた「横浜事件」。雑誌「中央口論社」、「改造」関係者が登場する。
第4話は、昭和20年(1945年)、有名な哲学者、三木清が登場する。
 
次の東京大空襲後の焼け跡の描写は、多くの示唆に富む。
「焼け跡に歩み出て最初にひざまずいた男は、クロサキが仕込んでおいたサクラだ。信じがたい物を目の当たりにした時、人間はショック状態に陥る。判断停止となった者たちは、きまって最初の一人の行動に従う。一種の条件反射だ。
 最初の一人が土下座し、涙を流して、陛下に謝罪する。
 方向が決まれば、その後に全員が続く」。
 
4つの話すべてに登場するクロサキは、特別高等警察(特高)/1911年発足、内務省元締め/の幹部である。
歴史的事実に一定程度基づきながら、巧妙な会話と展開で、読み手をとりこにする。                            (2021年8月16日)
**************************************
 
**************************************
「囚人服のメロスたち:関東大震災と二十四時間の解放」(坂本敏夫、2021年5月第1刷、集英社文庫、814円)                     
 
1923年9月1日、関東大震災が発生した。横浜刑務所も大きな被害を受け、外堀は全滅、大規模火災が発生。その時、典獄(刑務所長)の椎名は、監獄法第二十二条の規定により「本日六時三十分諸君を解放する。解放とは二四時間に限り無条件で釈放するということだ。明日の午後六時三十分までに、ここに必ず戻ってきてもらう。よいな」と、囚人に宣言する。934人の釈放された囚人に何が起こったか、その結末はどうか。また、「朝鮮人虐殺」とこの釈放がどう関係するか。
 
著者30年にわたる取材と、4年の執筆期間を経て本書が世に出た。
 
単行本としては、2015年12月「典獄と934人のメロス」(1600円+税)として、講談社から発行された。                  (2021年8月7日)
**************************************
 
**************************************
「ボケ日和」(長谷川嘉哉、2021年4月第1刷、かんき出版、1300円+税)
                              
著者は、在宅医療では開業以来5万件以上の訪問介護、500人以上の在宅看取りを実戦している医者。この本の副題は「わが家に認知症がやって来た! どうする? どうなる?」である。豊富な実践を元に、認知症の実態をわかりやすく説明する。
著者によれば認知症は4つの段階で進行する。「認知症予備軍」→「初期・軽度」→「中期・中等度」→「末期・重度」。いずれの段階でも、その進行段階の知識があると家族は大変対応がしやすい。よく恐れられている排便のトラブルや幻覚が生じる「中期・中等度」の時期は「2年で終わる」という。また、認知症本人の状態よりも、世話をする家族の健康状態を優先すべきと主張する。様々な社会的援助を利用すべきとアドバイスする。
私はこの本を読んで、かなり気が楽になった。
                          (2021年7月25日)
**************************************
 
**************************************
「日本再生のための『プランB』 医療経済学による所得倍増計画」(兪炳匡(ゆう・へいきょう)、2021年3月第1刷、集英社新書、920円+税)                              
日本は「世界第2の先進国」だとまだ多くの人が思っている。しかし経済指標、男女平等、報道の自由などのランキングは、日本はすでに「先進国から脱落した」ことを示している。
 
著者は多くのデータでアメリカの「実像」も提示する。例えば、1960年から2018年にかけての「産業別GDP寄与率の経時的変化」である。1960年と1980年では製造業は1位(それぞれ25.4%、20.5%)、2000年では製造業は2位(15.1%)、2018年では製造業は4位(11.2%)となり、医療・福祉が5位(7.4%)に入ってくる。このことは当然「産業別雇用寄与率の経時的変化」にも表れる。1960年と1980年では製造業は1位(それぞれ26.7%、20.8%)、2000年では製造業は2位(12.6%)。しかし2018年には製造業は5位以内に入らず、一方医療・福祉が3位(12.4%)となっている。しかも2028年の雇用創出の予想値では医療・福祉が1位(13.8%)となっている。
 
著者はこのアメリカの変化を踏まえ、これからの日本で「医療・教育・芸術」の分野で雇用を創出することを、データを踏まえ主張する。「99%の人々の生活を豊かにしよう」という志を感じる力作だ。                 (2021年7月14日)
**************************************
 
**************************************
「武器としての『資本論』」(白井聡、2020年4月第1刷、東洋経済新報社、1600円+税)                              
著者は「資本制社会の中で生きる、生き延びるためにも、地図が必要です。頼りになる地図はどんなものでしょうか。」と問う。「頼りになる地図」を目指して、著者はマルクスの資本論を材料に、14の講義を展開する。
第4講では、新自由主義について、英米で活躍するマルクス主義者の次の言葉を紹介する。「これは資本家階級からの階級闘争なのだ」「持たざる者から持つ者への逆の再配分なのだ」(P69)。
最後の14講で、著者は主張する。「・・・人間の基礎価値を信じることです。『私たちはもっと贅沢を享受していいのだ』と確信することです。贅沢を享受する主体になる。つまり豊かさを得る。私たちは本当は、誰もがその資格をもっているのです」(P279)
                            (2021年6月30日)
**************************************
 
**************************************
「デジタル・ポピュリズム 操作される世論と民主主義」(福田直子、2018年5月第1刷、集英社新書、740円+税)
                                
著者はアメリカとドイツに30年上住んでいるジャーナリスト。
「あとがき」で、ミュンヘン工科大学データサイエンティストのヘゲリッヒ教授の言葉を紹介する。「もともとフェイスブックは政治に利用するためにつくられたわけではないのに、これほど政治や選挙に影響をおよぼすように使われるとは、フェイスブックにとっても意外であったはずだ」。
著者は、2016年、イギリスでのEU離脱の国民投票、アメリカの大統領選挙でのトランプ陣営の選挙キャンペーンをふまえ、フェイスブックやツイッターの「威力」を分析する。また、ロシヤのサイバー作戦を分析する。
これらハイテク企業の持つ力を認識し、著者はハイテク企業の規制と、人々の「メディアリテラシー」教育の必要性を主張する。
文章は大変読みやすく、多くの示唆に富んでいる。
 
なお、2016年、イギリスでのEU離脱の国民投票に深く関わったCA(ケンブリッジ・アナリティカ)については、
「マインドハッキング」(クリストファー・ワイリー著、2020年9月第1刷、新潮社)が貴重な内部告発の本となっている。
                            (2021年5月18日)
**************************************
 
**************************************
「ドローダウン 地球温暖化を逆転させる100の方法」(ポール・ホーケン編著、2021年3月初版第3刷、山と渓谷社、28000円+税)
                                
アメリカの環境保護活動家の著者は、多くの専門家とともにこの本を完成した。
地球温暖化への対応は、エネルギーだけに限らない。著者はデータをもとに100の対応を解説する。
この対応は大きく7つの分野にわたる。「エネルギー」、「食」、「女性と女児」、「建築と都市」、「土地利用」、「輸送」、「資材」。最後に「今後注目の解決策」が示される。
これらの対応によるCO2削減効果が、数字で示される。
巻末に「解決策総合ランキング」が示される。
2位から5位は「風力発電(陸上)」、「食料廃棄の削減」、「植物性食品を中心にした食生活」、「熱帯林」である。なんと1位は「冷媒」である。
冷蔵庫やエアコンに使われている冷媒は、クロロフルオロカーボン(CFC)とハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)であるが、これらはCO2の1000〜9000倍の温室効果をもつ。これらの冷媒をきちんと管理し回収することが大変重要になっている。
この本で、我々の様々な行動が、気候変動を止めることにつながることが理解できる。
                             (2021年5月7日)
**************************************
 
**************************************
「民衆暴力 ー 一揆・暴動・虐殺の日本近代」(藤野裕子、2020年8月第1版、2021第6版、中公新書、820円+税)
                                
著者は、明治以降の4つの民衆暴力について、その歴史的背景をふまえ、参加者像に迫る。
1860年代後半から1870年代後半に起きた「新政反対一揆」、1884年の秩父事件、1905年の日比谷焼き討ち事件。
そして圧巻が、1923年9月1日の関東大震災の後発生した「朝鮮人虐殺」の分析。この朝鮮人虐殺は、1919年に朝鮮半島での「日本からの独立を求める大規模な反乱」(3・1運動)とつながっている。この反乱の鎮圧後、新聞記事に「不定鮮人」といいうフレーズが登場し、「テロリスト」のイメージが朝鮮人と結びつけられていった。この「基板」のもと、大震災で、警察や政府の誤報により各地で朝鮮人虐殺が引き起こされていった。
著者は、この4つの事例を踏まえ、次の指摘をする。「暴力という、日常抑圧されている行動に一歩踏みだすと、人々の『可能な幅』が急速に広がり、日常では明確に意識されていない願望や欲求が噴出する」(p204)。この「暴力」が現在twitter と置き換えられるかどうかと、考えてしまう。
                              (2021年4月6日)
**************************************
 
**************************************
「ぼくは挑戦人」(ちゃんへん、2020年8月第1刷、集英社、1800円+税)
                                
著者は、京都府出身、現在30代の在日3世。
複数の物を投げたり操ったりする曲芸、ジャグリングの世界的パフォーマー。
幼少、小学生でのいじめ、中学生、高校生での生活、そしてジャグリングと出会い、自ら厳しいトレーニングを課して、世界的なプロパフォーマーへの道へ。
自らのルーツを探る旅を記すことで、「日本と朝鮮」のわかりやすい歴史書ともなっている。
2012年、京都大久保でのヘイトデモの参加者2人とのやりとりは、多くの示唆を含む内容だ。
ちゃんへんのパフォーマンスは、こちらからどうぞ。
https://www.youtube.com/channel/UCAdey0x-TVo19UzRt2qdFOA
                            (2021年4月6日)
**************************************
 
**************************************
「在宅ひとり死のススメ」(上野千鶴子、2021年2月第2刷、文春新書、800円+税)
                                
よく売れている本だ。2021年1月に第1刷が出て、2月に第2刷がでている。
いろいろなテーマをうまく織り交ぜている。
私が特に興味を持ったのは第5章「認知症になったら?」、第6章「認知症になってよい社会へ」だ。ここで紹介されている認知症関係の本も読んでみようと思う。
また、第8章の「介護保険が危ない!」も知らないことが多く大変示唆に富む内容だった。「介護保険」という「制度」を作ることで、人々の「常識」が劇的に変わっていくことがよくわかった。また、この「介護保険制度」が「改悪」されようとしていることにも危機感をもった。
                              (2021年3月21日)
**************************************
 
**************************************
「『日本の伝統』の正体」(藤井青銅、2021年1月第1刷、新潮文庫、590円+税)
                             
何かにつけ「伝統」が強調されるこの頃だ。「元号」であり「国技」であり「正座」であり「桜」であり・・・・。著者はそれぞれについて歴史的に検討する。そこではなんと意外な事実のオンパレードだ。各テーマの最後に、その「伝統」が何年続いているかを数字で示す。著者は、人々が「伝統リテラシー」を持つことが必要だと指摘する。
「元号は、結構いいがげんだ」という箇所では次のように指摘する。
・・・・・
一世一元から、約150年   
元号の法的根拠ができて、約130年
元号の法的根拠がなくなって、約70年
「元号法」で再び法的根拠ができて、約40年
                             (2021年3月21日)
**************************************
 
**************************************
「新型コロナの科学」(黒木登志夫、2020年12月第1刷、中公新書、940円+税)
                               
2020年10月までに明らかになった新型コロナウイルスについてのバランスのよい解説書。日本や世界の動きもたどっている。最後の章に「再記」として、2020年11月下旬までに明らかになった各種「ワクチン」の解説もある。著者はmRNAワクチンに期待している。                          (2021年3月21日)
**************************************
 
**************************************
「地域衰退」(宮崎雅人、2021年1月第1刷、岩波新書、800円+税)
                                 
著者はここ約50年の地域衰退のメカニズムを検証する。そして自民党が推進した「大規模化」を、農業、林業、市町村合併という点でデータをもとに検証し、いずれも「失敗」に終わったことを示す。それを踏まえ、「インバウンド需要」に頼らずに、地域の発展の可能性を展望する。そこでは「地域に産業を興す」ためのひとつとして「小水力発電」も取り上げられている。「国による政策誘導をやめる」という指摘も興味深い。地域発の「」知恵」が求められている。
                            (2021年2月14日)
**************************************
 
**************************************
「砂戦争 知られざる資源争奪戦(石弘之、2020年11月第1刷、角川新書、900円+税)                            
「砂は資源だ」と言われてピンとくる人は多くない。しかしこの本を読むと、身の回りの多くの物が砂と関係していることがわかる。高層ビルを見て、そこに大量の砂を感じることとなる。砂、という切口で、中国、東南アジア、インド、アフリカ、先進国、日本を巡ると、いままでとは全く違う様相が浮かび上がる。
砂にとどまることなく、筆者は「資源と成長、地球」の未来に思いをはせ、現実を直視することの大切さを訴える。               (2021年2月5日)
 
**************************************
 
**************************************
「脱プラスチックへの挑戦」(堅達京子+NHK取材班、2020年2月第1刷、山と渓谷光文社、1600円+税) 
                                
プラスチックによる海洋汚染が懸念されている。プラスチックの問題点はそれだけではない。レジ袋やペットボトルなどのプラスチックが劣化するときに、メタンガスやエチレンガスが発生するという。メタンはCO2に比べ25倍の温室効果を持つ。
この本は、現在の気候危機に対しての格好の解説書ともなっている。世界の取り組み、2030年までの重要な10年の具体的な取り組みも紹介されている。
                            (2021年1月17日)
**************************************
 
**************************************
「バラ色の未来」(真山仁、2017年2月第1刷、光文社、1600円+税) 
                                
地方の活性化は何で成し遂げられるか?IRにその夢を見た東北の町長を軸に話が展開する。「IRの夢」に東北の県知事そして山口を地盤とする総理が交錯する。
IRに関連する「許認可権」は利権の源となる。町と県の「二重行政」は、この「利権の争奪」の別名といえる。「IRの夢」を巡って全国紙の取材の実態も描かれている。
                            (2021年1月6日)
**************************************
 
**************************************
「『男女格差後進国』の衝撃」(治部れんげ、2020年10月第1刷、小学館新書、800円+税)                            
著者は、2020年のジェンダー・ギャップ指数ランキングを紹介する。日本はなんと153カ国中121位とのこと。この事実を踏まえ、「ジェンダー」の説明、ジェンダーと地域、経営、家庭での課題へと進む。著者はもと日経BP経済記者であり、説明はわかりやすい。
「ジェンダー問題を考えることは、女性の人権や自己決定の問題を考えることであると同時に、男性をATM(現金預け払い機)的役割から解放し、人間に戻す試みでもあると私は思います。・・・男性だけが経済的責任を負うジェンダー規範は、男性も不幸にする要素として、見直す必要があるのです」(P182)。)     (2020年12月27日)
**************************************
 
**************************************
「夢見る帝国図書館」(中島京子、2019年5月第1刷、文藝春秋、1850円+税)                            
東京・上野に明治政府により「図書館」が開設された。その「図書館」を通じて明治から敗戦までの日本の歴史が語られる。そして同時進行的に敗戦から21世紀まで生きた一人の九州出身の女性を通じて、戦後の日本、家族、女性が描かれる。
昭和16年(1941年)12月アジア・太平洋戦争が勃発した。その時、香港大学から多くの図書が略奪され、翌年それらが帝国図書館あてに送られた。また、昭和18年(1943年)8月〜9月に上野動物園の「猛獣」たちが殺される。一体どんな理由でか?
そこでは戦争の「実態」、「時局」の持つ圧迫がリアルに語られる。
                           (2020年11月14日)
**************************************
 
**************************************
「経済政策で人は死ぬか?」(デヴィッド・スタックラー&サンジェイ・バス、2014年第1刷・2020年4月第5刷、草思社、2200円+税)     
公衆衛生学と医学の専門家によるデータに基づいた本。
第1部は、1930年代のアメリカのニューディール、1990年代のソ連崩壊後におこったこと、1990年代のアジア通貨危機を検討する。第2部で、2008年のリーマンショック後のアイスランド、ギリシャで起こったことを検討する。
そこでは「不況下での緊縮財政は景気にも健康にも有害」ということが明らかになる。
第3部では不況下での抵抗力となる制度として、「医療制度」、「失業対策」、「家を失うこと」を検討し対策を提案する。新型コロナ禍の現状に大変示唆になる本
                            (2020年10月13日)
**************************************
 
**************************************
「温暖化で日本の海の何が起こるのか」(山本智之、2020年8月第1刷、ブルーバックス、1100円+税)                     
「温暖化や酸性化が進む『未来の海』は、どのような姿になるのか、そして私たちの食卓はどう変わるのか」という視点で、わかりやすくデータも写真も交え、説明がある。
「たった1℃の水温上昇がもたらす海中は別世界」を、実感してしまう。
                            (2020年9月29日)
**************************************
 
**************************************
体育会系 日本を蝕む病」(サンドラ・ヘフェリン、2020年2月第1刷、光文社新書、900円+税)                     
来日22年の日独ハーフのサンドラからみた日本的なものを「体育会系」という視点から分かりやすく分析。「日本すごい」という根拠のない風潮の中、「学校」、「職場」、「女性と社会」、「外国人とカイシャ」、「世代論」に蔓延する「体育会系」発想を指摘する。読んでいて「ああ、だから日本は息苦しいんだ」と納得することが多い。
次の指摘は重要だ。
「19年7月に英金融大手HSBCホールディングスが発表した『各国の駐在員が働きたい国ランキング』では日本は33カ国中の32位というなんとも残念だな結果となってしまいました。/・・・東京や大阪が安全な都市のランキングに入っている一方で、
日本では働きたくないと考えている外国人が多いことです。・・・ニッポンは定収入、そしてワークライフバランスが悪いので、これでは人気がないのも当たり前といえば当たり前です」(P200)。                  (2020年8月29日)
**************************************
 
**************************************
「データでわかる2030年 地球のすがた」(夫馬賢治、2020年7月第1刷、日経BP、900円+税)
                               
「『世界がいままでとは違う時代に突入している』。最近そう感じる人が増えているのではないだろうか」。筆者はまずこう問いかける。
そして、9つの章で世界の現実、日本での一般的な理解をデータとともに検証する。
9つの章のテーマは次のようなものだ。
気候変動/食糧危機/消える森林/魚/水/感染症/世界のパワーシフト/グローバル化と人権問題/メガトレンドの理解度
 
たとえば2章、「迫りくる食糧危機の実態」では、「食糧危機なんて、貧しい国の話でしょ」という日本の「常識」に対して次の言葉が対比されている。
「◇世界のリアル◇すでの主要国政府は、食糧危機シミュレーションを始めている」。
                           (2020年7月26日)
**************************************
 
**************************************
「本当の貧困の話をしよう」(石井光太、2020年2月第3刷、文藝春秋、1500円+税)
                                 
著者は、若い頃から日本と世界の「貧困の実態」と向き合う経験を積んできている。それをもとに、著者は小学校から大学まで、若い人相手に何百回と抗議を重ねてきた。その講義を元にこの本が生まれた。語り方はわかりやすく、データもしっかりしている。「なぜ貧困を考えること」がすべての人にとって大切かが示されている。
第4講に「学校じゃ教えないセックスの話」がある。セックスという落とし穴がいかに貧困と結びついているかが示される。著者は言う。「大事なのは、そこから先どうするかということなんだ」(P167)             (2020年7月12日)
**************************************
 
**************************************
「アメリカの制裁外交」(杉田弘毅、2020年2月第1刷、岩波新書、840円+税)
                                
著者は、「今の世界は、経済制裁を抜きには語れない」と指摘する。これが決して誇張ではないことがこの本で示される。世界の基軸通貨がドルという現状で、アメリカファーストの独善的な、時には恣意的な制裁が、世界を揺さぶる。日本もこの「制裁」に無関係ではいられない。しかし、このアメリカの独善に世界はいつまで付き合うか?新しい動き/挑戦が始まっている。                   (2020年5月25日)
**************************************
 
**************************************
「フェイクニュース時代を生き抜く データ・リテラシー(マーティン・ファクラー、2020年4月第1刷、光文社新書、780円+税)
                                
著者は、フェイクニュース・マスターとしてトランプを紹介する。「トランプが擬情報を拡散するやり方は、実に巧妙だ」として、そのテクニックを分析する。
日本のジャーナリズムの問題点を指摘し、最後に東京オリンピックで強化される政府の
ネット監視として、総務省による「取組」への注意を喚起する。
                              (2020年5月25日)**************************************
 
**************************************
「幻の東京オリンピック」(橋本一夫、2019年9月第2刷、講談社学術文庫、960円+税 /本書の原本は1994年、日本放送出版協会から出版)       
 1940年の東京オリンピックは「幻のオリンピック」と言われる。この4年前、1936年のオリンピックは、ヒットラー支配下のドイツ・ベルリンで行われた。なんと「聖火リレー」は、この時に「発明」され、大会記録映画も登場した。
 1940年の東京オリンピックは、皇国史観に基づく皇紀2600年とも重なる。東京市による「オリンピック招致」は、様々な困難にぶつかった。1936年7月に「招致」を勝ち取った後も、日本を取り巻く情勢は、日々に厳しくなっていく。1936年11月には日独防共協定が締結され、1937年には、中国北京郊外で盧溝橋事件が勃発し、日中戦争が本格化していく。諸外国のボイコットも予想される中、とうとうオリンピック返上への動きが始まる。
                            (2020年5月10日)
**************************************
 
**************************************
「水道民営化で水はどうなるのか」(橋本淳司、2019年6月第1刷、岩波ブックレット、580円+税)                     
・・・パリ市のように一度水道運営を民間に任せながら再公営化した事業体は、2000年から2017年の間に、世界で267事例あります・・・ただし、再公営化は簡単ではありません。譲渡契約途中で行えば違約金が発生するし、投資家の保護条約に抵触する可能性も高いのです。・・・事業を誰かに任せきりにすれば、その仕事がわからなくなっていきます。・・・コンセッションにすると料金が上がるとか、サービスが悪化すると言われますが、それは自治体の管理監督能力がなくなった結果の現象として現れるのです。(P32〜34)                         (2020年2月16日)
**************************************
 
**************************************
「韓国徴用工裁判とは何か」(竹内康人、2020年1月第1刷、岩波ブックレット、620円+税)                          
・・・国際社会は重大な人権侵害に対しては,被害者は実効性のある救済を受ける権利があるとする立場を共有しています。2005年12月、国際連合の総会は「重大な国際人権法、
国際人道法違反の被害者の救済と賠償に関する権利の基本原則」を採択しました。この基本原則では,重大な人権侵害の被害者は、真実、正義、賠償、再発防止を求める権利を持つとしています。・・・被害者の救済とは、金銭による賠償だけではなく、真相の究明、
加害行為への責任の認定、公式の謝罪などを含むものであり、・・・強制動員の被害者の救済についても、このような原則をふまえるべきなのです。(P46)
 
・・・韓国大法院は2018年10月に日本製鉄訴訟、11月に三菱広島、三菱名古屋訴訟で原告勝訴の判決を出しました。・・・まずこの判決は、強制動員と強制労働の事実を認定しました。・・・このような強制動員が、日本の不法な植民地支配や侵略戦争の遂行に直結した日本企業の反人道的不法行為であり、強制動員被害に対する慰謝料の賠償請求権があることを認めました。原告の求めるものは、未払賃金請求権ではなく不法な強制動員被害への慰謝料請求権であるとし、強制動員慰謝料請求権を確定させたのです。/日韓請求権協定で解決済みという主張に対しては、協定は両国の,民事的な債権債務関係を解決するものであり、反人道的不法行為に体する請求権は、日韓請求権協定の適用対象には含まれないと判断しました。(P53、54)
 
・・・2018年11月14日の衆議院外務委員会では、穀田恵二議員の質問に対し、三上正裕外務省国際法局長は、・・・請求権協定では個人の請求権は消滅していないこと、また、請求権協定の財産、権利及び利益とは財産的価値を認められるすべての種類の実体的権利であり、慰謝料等の請求は財産的権利には該当しないことを認めました。河野太郎外相も個人請求権が消滅していないことを認めました。/・・・協定は反人道的不法行為への慰謝料請求権を処理するものではなかったのです。大法院判決は・・・・国際法に照らして十分にありえる判断です。・・・(P60)
 
・・・日本政府は韓国の司法判断への批判を止め、植民地支配の不当性、反人道性を認め、その下での強制動員(強制労働)の事実を認知すべきです。企業と原告との協議に介入してはなりません。/・・・包括的解決に向け、日韓共同での財団・賠償基金の設立を検討するときです。法の正義とは人権の回復であり、・・・/これを機会に企業は強制労働の歴史を反省し、その清算に向かうべきです。ドイツ企業が強制労働被害者との和解のために設立された「記憶・責任・未来」財団に出資したように、和解に向けて財団。基金の設立を進めるべきでしょう。(P70、71)           (2020年1月28日)
**************************************
 
**************************************
「THIS IS JAPAN」(ブレイディみかこ、2020年1月第1刷、新潮文庫、590円+税)                               
 イギリス在住の保育士みかこが、2016年1月末から4週間、日本に滞在し、各地の地べたで活動する人と共に、日本のキャバクラ労働、保育士、貧困支援などの現場に出向き、感じ、考える。ミクロにこだわりマクロの背景を指摘する。そして「経済にデモクラシーを」と叫ぶ。
 
「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」(ブレイディみかこ、2019年11月第12刷、新潮社、1,350円+税)
 イギリス在住の保育士みかこの一人息子は、裕福な家庭が多く通っている小学校に7年間通った。その後「元底辺中学校」入学する。11歳の子供にとって大きな変化だ。
息子や友人たち、それを通じた英国社会がこの本で描かれる。
 英国の公立学校教育ではキーステージ3(7年生から9年生)でシティズンシップ・エデュケーション(・・・「市民教育」・・・)がある。その期末試験で「エンパシーとは何か」、「子どもの権利を3つ挙げよ」がでた。
「息子は『めっちゃ簡単。・・・余裕で満点取れたもん』/・・・配偶者が言った。『ええ・・・それ・・・・・難しくね?で、お前何て答えを書いたんだ?』/『自分で誰かの靴を履いてみること、って書いた』」(P72、73)
 日本の「受験」だけの教育では、このような子どもに太刀打ち出来ないし、時代の変化に対応することも出来ないだろう。            (2020年1月6日)
**************************************
 
**************************************
「消費税が国を滅ぼす」(富岡幸雄、2019年9月第1刷、文春新書、900+税)
 消費税が1989年に導入されて以降、消費税の増税分が、法人税や所得税の減税分の穴埋めに使われたことが明らかになっている。31年間の消費税の累計額は397兆円。
一方,その期間の法人3税(法人税、法人住民税、法人事業税)減税分が、累計298兆円、所得税・住民税減税額が、累計275兆円となっている。
 著者によれば、現在の法人税制を適切に執行すれば、毎年8兆9480億円の増収が見込まれる。一方2014年に消費税を5%から8%に引き上げたことによる増加分は8.2兆円。法人税制を適切に執行すれば、消費税の引き上げは必要ない。
 企業別に法人税の負担をみると、「極大企業の極小の負担」、「中堅中小企業の高負担」となっている。「高い」と喧伝されている法人税をちゃんと払っているのは,声の大きい大企業ではなく、黒字を出している中堅企業だ。
 大企業の税負担を減らしているのは,次のものだ。「研究開発減税」などの政策減税、課税されない株式投資、海外に逃げていく日本の税金、グローバル企業の課税逃れ戦略など。この本で、著者はこれらを実証的に明らかにしている。
                          (2019年10月14日)
**************************************
 
**************************************
「東京五輪がもたらす危険」(東京五輪の危険を訴える市民の会編集、2019年9月第1刷、緑風出版、1800円+税)                      
2013年9月、アベ首相は全世界に対して、「状況はアンダーコントロールされている」、「東京には被爆のリスクが全くない」とウソをついた。それ以降、2020年に向けて福島や東京の深刻な被爆状況を,マスコミはほとんど報道しない。
この本には、トリチウム汚染水の問題、福島や関東での病人発生の増加、三田医師による「新ヒバクシャ/能力減退症」など様々や指摘や科学的データがある。東京都の水道水のセシウム汚染は2018年でも増加しているというデータは衝撃だ。
「日本政府の『安全・安心』の言説を決して信じてはならない」(P101)。
「『放射能でのおもてなし』:東京オリンピックは国際社会に対する犯罪である」(P146)は、決して誇張ではない。              (2019年10月9日)
**************************************
 
**************************************
「アイス・ハント 下」(ジェームズ・ロリンズ、遠藤宏昭訳、扶桑社ミステリー、2013年5月第1刷、copyright @2013年)                 
「下」の「著者による覚書」から
 著者は、アメリカが過去に行った非人道的行為の歴史について「ごく一部の例を引いて起きたい」として、1932年から1997年まで15の例を挙げる。その内の3つを示す。
「1932年 ・・・梅毒感染の所見のある二百人の黒人男性が、・・・治療の機会を奪われ、人体実験の被験者とされた。・・・最終的に全員が梅毒で死亡した。
 
1966年 米陸軍は枯草菌の変種ナイジャを、ニューヨーク市地下鉄の全線に巻き散らした。・・・百万以上の一般市民が感染の危険に晒された。
 
1994年 ジョン・D・ロックフェラー上院議員は,少なくとも五十年のあいだ、米国防省は数十万人の軍関係者を、有害物質との意図的接触および人体実験に使ってきた旨の報告書を提出した。 ・・・・ 」 恐るべし、「軍産複合国家アメリカ」
                            (2019年7月25日)
**************************************
 
**************************************
「歴史戦と思想戦 ー歴史問題の読み解き方(山崎雅弘、集英社新書、2019年6月第2刷、920円+税)                     
 産経新聞は2014年4月から「歴史戦」シリーズを開始し、「従軍慰安婦」、「南京虐殺」、「GHQによる日本人の洗脳」について、歴史の改ざんキャンペーンを始めた。明治以降の日本の歴史には「汚点」などないというキャンペーンだ。なぜ、どの国にも「歴史的な失敗/汚点」があると素直に認められないか.不思議な態度だ。この本は、それぞれのテーマで事実に基づき、「産経史観」を論破している。
 著者は後半でこう指摘する。「先の大戦中に『大日本帝国』が行った数々の非人道的行為について,他国に言われる前に主体的に事実関係を解明し、・・・将来において二度と繰り返してならないという反省と覚悟を国債社会に向けて発信するなら、『日本国』の名誉は今以上に高まり・・」
                            (2019年7月25日)
**************************************
 
**************************************
「反緊縮!」宣言
(松尾匡編、亜紀書房、2019年6月第1刷、1700円+税)    
日本では、長い間「財政再建」という声がマスコミを支配していた。「財政再建」とは、実は「緊縮財政」という捉え方がなかった。
この本では「緊縮」を、「政府が財政を抑制して社会をどんどん貧しくしていくケチくさい態度」ととらえる。一方、「反緊縮」は「政府が積極的に財政支出をして、人びとの暮らしを豊かにする、気前のよい態度」と「宣言」する。
そこで、生じる疑問−−−「その財源は?」、「国債は大丈夫?」、「インフレにならない?」
「日銀の国債引き受けとは一体なに?」という疑問に、この本は答えている。
「金がない」ということが、「他者を殴る棒」になっているという岸政彦氏の指摘は、大変納得した。                      (2019年6月6日)
**************************************
 
**************************************
「バブルの死角 日本人が損するカラクリ」
(岩本沙弓、集英社新書、2013年5月第1刷、760円+税)から
                                  
「消費税」(欧州では付加価値税)のように、生産から小売りまでの各段階で税が課せられると、輸出企業は仕入れた分にかかる税金を還付される(注)。これは輸出「奨励金」として働く。アメリカでの「小売売上税」は、業者が最終段階の消費者(購入者)から売上税を徴収し、それを納税する。輸出「還付金」は発生しない。
→日本の医療機関では、仕入れにおいて消費税を負担しているが、患者の治療費では消費税を請求できない。しかし、輸出産業とは異なり、医療機関に「還付金」はない(P31)。
→アメリカの輸出産業にとって、輸出先の「消費税」は、「非関税障壁」として作用する。
 
(注)消費税の税額=売上げに係る消費税額(A)− 仕入れに係る消費税額(B)
 ここで、輸出企業では(A)がゼロなので、消費税の税額はマイナスとなり、還付となる。
 
・日本で消費税が導入された1989年度から2012年度までの23年間で、消費税の税収総額は202兆円、一方、この期間、法人税の税収が40%から25.5%へと引き下がられ、法人税161兆円の減収となっている(456−295兆円)。またこの期間、高額所得者への減税により年間2兆円の減収が発生している。2×23=46兆円。合わせて、23年間で207兆円。
法人税の減収と高額取得者への減税の穴埋めが、消費税になっている(P87、88)。
 
「益金不算入」という税務上の制度がある。これは、別の国内企業から配当金を受けた場合、全部あるいはその一部が法人税の課税対象から除外されるというもの。→これを利用すると、税務上は赤字で法人税を払わず、会計上は黒字で株主に配当金を支払うことが出来る→企業の内部留保の拡大。新型の企業間の株式「持ち合い」が常態化。
 
・2003年、小泉内閣の時、連結納税制度が導入された。これは、グループ内企業の黒字と赤字を相殺できることで、大企業にとって大幅な減税効果がもたらされた。また、この次期に非正規労働者の積極的導入が図られた。(P110)。
 
⇒これらの制度変更で、大企業とその株主、ごく限られた富裕層だけが恩恵を受けるシステムが日本社会にインストールされた。中間層が没落し、貧困層、非正規労働者が増大した。
                            (2019年4月23日)
**************************************
 
**************************************
「日本が売られる」
(堤未果、幻冬舎、2018年10月第1刷、860円+税)         
「まえがき」で2015年夏、イラクからの帰還兵、26歳の元兵士との会話が紹介されている。元兵士ジュラルドは日本に行きたいと言う。その理由としてこう述べる。
「アメリカでは保育も介護も学校も病院も、今じゃまともに暮らすためのものが全部贅沢品になっているから。売国政府が俺たち国民の生活に値札をつけて、ウオール街と企業に売りまくっているからね」
 ジュラルドのいう売国とは、「自国民の生活の基礎を解体し、外国に売り払うこと」を指している。それは例えば、自国民の命や安全や暮らしに関わる、水道、農地、種子、警察、消防、物流、教育、福祉、医療、土地などのモノやサービスを、安定供給する責任を放棄して、市場を開放し、外国人にビジネスとして差し出すことだ。
 さてこの数年の日本、ほとんど報道されていないが、「企業が最も活動しやすい日本」を目指す政権の元、これらの日々の生活の基礎が、徐々に、密かに、崩され、多国籍企業に売られようとしている。このままでは、安心・安全な日本は過去のものとなるかも。
 本の最終章には、日本も含めて各国の先進的な取り組みの紹介もあり励まされる。
                              (2018年10月7日)
**************************************
 
**************************************
「驚くべきCIAの世論操作」
(ニコラス・スカウ/伊藤真訳、集英社インターナショナル新書、2018年8月第1刷、760円+税)                            
 CIAは、一体何をしているのか?外国での諜報活動や外国政府への干渉・妨害活動がイメージされる。この本では、CIAが「報道機関を管理し、記者たちが書く内容を制限する」活動もしていることが示される。この本で2011年5月にパキスタンで起こったビンラディン襲撃事件は本当はどうだったか、示される。また、2003年3月のイラク侵攻を支えた「大量破壊兵器」は、CIAによりどうリークされたかが、検証されている。「グローバル市民として私たち一人ひとりが当局の筋書きを疑い、私たちが『ニュース』と呼ぶものの中で何が現実であり、そして何が現実でないか見極めるため」のうってつけの本。
 なお、「国境なき記者団」が発表した2017年の「世界報道自由度ランキング」では、アメリカ43位、日本はなんと72位である。        (2018年10月7日)
**************************************
 
**************************************
「広告が憲法を殺す日 国民投票とプロパガンダCM」(本間龍/南部義典、集英社新書、2018年4月第1刷、720円+税)
「権力と新聞の大問題」(望月衣朔子/マーティン・ファンクラー、集英社新書、2018年6月第1刷、860円+税)
                                 
現在、TVや新聞がどうなっているか、現場を知っている人たちによる対談。
 
前者の本では、広告業界では電通の支配力が大きく、その電通は自民党や維新と仲良しで両党の選挙公報を担当している。国民投票法でCM規制がないことの問題点がよくわかる。
 
後者の本では、アベ政権によるマスコミ対策や日本の記者クラブの実態が描かれている。また、トランプやオバマのアメリカで一体どんなことが起こり、アメリカの新聞記者がジャーナリストとしてどう振る舞っているかが描かれている。
                            (2018年6月28日)
**************************************
 
**************************************
「ここまできた小選挙区制の弊害 アベ『独裁』政権誕生の元凶を廃止しよう」
(上脇博之著、あけび書房、2018年2月第1刷、1200円+税)
                                 
 21世紀の日本の国会。首相が絡んだ件で、改ざんされた文書や「ウソの答弁」が延々と1年以上続いている。ウソの資料とウソの答弁では、審議そのものが成り立たない。これは立法府の危機であり、この事態は与野党あげて究明・克服する必要がある。
 しかし自民党の動きは鈍く、自浄作用は見られず、むしろ首相をかばい、必要な証人喚問にも逃げ腰だ。
 この事態の根本に小選挙区制度がある。1選挙区で1人しか当選しない制度では、公認権をもつ首相の権力は大きい。首相に反対する候補者は公認されない可能性がある。自民党議員で「膿は首相自身」と思っていても公言できない事態だ。
 小選挙区制度は、多くの無効票を産み民意の反映という点で問題だ。今の事態は、この制度が与党内の活発な議論の邪魔になっていることを示している。小選挙区制度を見直す時期だ。
                            (2018年6月7日)
**************************************
 
**************************************
「デジタル・ポピュリズム 操作される世論と民主主義」
(福田尚己著、集英社新書、2018年5月第1刷、740+税)       
「あとがき」(P212~214)から
 ミュンヘン工科大学政治学科のジモン・ヘゲリッヒ教授はドイツを代表するボット研究の第一人者、データサイエンティストである。・・・・ヘゲリッヒ教授がフェイスブックで、異変に気づいたのは2014年のウクライナ危機のときであった。
 「とても人間によるものとは思えない動きがネット上で見つかった」。 2016年のアメリカ大統領選と翌年のドイツ連邦議会選挙に関するソーシャルメディアの動向を研究した結果、右翼がボット(*)による大量のツイート、書き込みを拡散し、「ある種の雰囲気」を作り上げていたことが判明した。フェイスブックでは、発信されるコンテンツが感情的かつ偏ったものが多く、特定の利用者に「見たいものばかりを見せている」という。・・
 ヘゲリッヒ教授は、「トランプ政権はフェイスブックなしにはありえなかっただろうが、ドイツではフェイスブックが首相を選出するまでには至っていない。・・・」
(*)ボット
ソーシャルメディア用にプログラムされたボットは、人間よりもはるかに高速で、人間に似た行動や書き込みをすることができる。(P125)
                           (2018年5月20日)
**************************************
 
**************************************
「蚤と爆弾」(吉村昭、文春文庫、2015年4月新装版第1刷)から
                                  
「また原子爆弾の投下を知った天皇も、 8月8日には東郷外相を通じて鈴木首相に戦争を終結にみちびくようにとの内示を与えた。
 ・・・・その夜、さらに驚くべき報告がソ連の首都モスコーの日本大使館から入電した。
 駐ソ大使佐藤尚武は、日本政府の意を体してひそかにソ連に対しアメリカ、イギリスとの和平交渉を仲介してもらうようにソ連政府に働きかけていたが、その夜モトロフ外相から得た回答は、意外にもソ連の対日宣戦布告であった。
 戦闘の開始日時は、8月9日午前零時と告げられたのである。
 日本政府の首脳者たちは、この報に愕然とし、激怒した。日本は、ソ連との間にたがいに侵すべからずという原則をもつ中立条約を締結している。その有効期間は、昭和21年4月12日までであるのに、それを一方的にふみにじって宣戦を布告してきたのはあきらかに条約違反であった。
 しかし、ソ連の対日参戦はかなり以前からひそかに予定されていたものであった。ソ連首相スターリンは、アメリカ大統領ルーズベルト、イギリス首相チャーチルとの間でひらかれたヤルタ会談の席上で、日本に対し宣戦布告することを秘密事項として約束していた。そして、その時機は、ドイツ降伏の3カ月後としていた。また、ポツダム会議の折にも、スターリンは8月下旬に日本に戦争を開始するとも明言していた。
 それにしても、8月下旬を予定していたソ連の対日参戦が、なぜ8月9日に早められたか。
 それは、広島への原子爆弾投下によって日本の降伏が早められると判断したためにちがいなかった。
 日本は、ソ連軍が条約を無視して宣戦布告をおこなうだろうという危惧はいだいていた。が、原子爆弾の投下に続くソ連の参戦は、日本の為政者、軍中枢部に大打撃を与え、戦争終結の気分を一層たかめた。」(P161、162)
 
 → ソ連の対日参戦は、アメリカ、イギリスの了解のもとで行われた。
ソ連の参戦が、原子爆弾とともに、日本の降伏を早めた。
                              (2018年2月20日)
**************************************
 
**************************************
「ピケティ 『21世紀の資本論』の読み方 入門」
 (竹信三恵子、金曜日、2015年1月、第5版)から
                                
「 実はILOでは2011年に、このような家事労働者の労働権を守るための『家事労働者条約』(注)が採択されています。休暇の権利や最低賃金、団体交渉権など、働き手に保障されている労働権を家事労働者にも適用しようという条約です。家事労働者条約の中には、呼び寄せる時と帰国子の渡航費を誰が持つのか、といったこともテーマにされています。自己負担だと、大量の借金をして出稼ぎに来たのに低賃金で返せず、借金の返済のためどんな仕打ちでも我慢して働き続けなければならないという羽目に陥ります。辞める自由が結果的になくなり、人身取引に似た形になってしまうのです。・・・ ところが政府内では今のところ、この条約の批准についての議論がほとんどありません。」(P100)
 
(注)家事労働者条約 2011年6月16日、 ILO第100回総会で採択。 13年9月5日発行。労働・社会保障法の適用対象外になることが多い家事労働者を労働者と認定、家事労働者は他の労働者と同じ基本的な労働者の権利を有すべきとして労働条件改善を目指して採択された国際基準。日本は批准していない
                           (2018年1月31日)
**************************************
 
**************************************
「さらば白人国家アメリカ」( 町山智浩、講談社、2016年10月第1刷)から
                                 
<プロローグ>から
「・・・09年にオバマが大統領に就任すると、 「ティーパーティー」運動が発生した。・・・ティーパーティーは最初、草の根の市民運動と報道されたが、 10年に「ニューヨーカー」誌の潜入取材で正体が暴かれた。実は石油化学コングリマリットのコーク産業が資金を出して組織したアストロターフ(人工芝、ニセ草の根)団体だった。・・・
 しかし、ティーパーティーはもう、ない。政治に金を投じる隠れ蓑が必要なくなったからだ。
 10年、最高裁が法人も「人」として政治に参加する権利があるという画期的なを判決を下した。この判決によって、 PAC (政治活動委員会)という応援団体なら献金の額の上限がなくなった。そして、数千万ドルを集める巨大PACが乱立した。12年の共和党予備選はスーパーPACがライバル候補の中傷CMを流し合う金まみれ選挙になった。今回の選挙でも、たとえばコーク兄弟は9億ドルを投入して、今度こそ共和党に政権を奪取させると宣言していた。」(P24〜26)
 
<クリス・クリスティーは巨体のわりに変わり身が早い?  2013年11月>から
「・・・共和党に多数支配されている南部各州の議会では次々に、選挙の時、ID(身分証明書)を提示しないと投票できないとする州法を成立させている。
 「これは、民主党の奴らのケツに蹴りを入れるための法律だ」
 ノースカロライナ州共和党の執行委員ドン・イエルトンは、テレビのインタビューで笑った。つまり民主党を支持する女性や若者や貧困層は運転免許証の所持率が低いから、投票率も減るわけだ。」(P88)
 
→アメリカの大統領選挙や州議会の選挙制度は、決して公平で公正なものではない。
                             (2018年1月24日)
**************************************
 
**************************************
「アメリカ 暴力の世紀」(ジョン・W.ダワー、岩波書店、2017年11月第1刷、1800円+税)                             
 「2016年は、ヘンリー・ルースが考案した「アメリカの世紀」という概念が出されてから75年目にあたる。当時、自分の論考を載せた『ライフ』誌の創刊者であるルースが今も生きているとしたら、どのように反応したであろうか。・・・・・
 1941年にルースは、 「世界全体の治安を取り締まる」などと言うのは「断固として」アメリカの任務なのではない、と書いた。その彼が、 CIAとアメリカ軍殊作戦部隊が世界中の150カ国ほどの国々で秘密工作を展開し、アメリカ合衆国が800に近い数の海外軍事基地を保持していることを知ったならば、どのように反応するかは想像することもできない。アメリカの年間軍事予算が1兆ドルほどにもなっており、国防総省の年間「基本予算」の額は、国防予算額で2位以下の8カ国の予算額を合計したものよりはるかに多いということを彼が知ったならば、何と言うであろうか。アメリカ合衆国が武器輸出では世界最大の国であり、 2007年から2014年の間に取引された武器の総額のほぼ半数がアメリカによるものであることを知ったなら、彼は何と言うであろうか。」(P137,P139)
                           (2017年12月24日)
**************************************
 
**************************************
「ロマンス」(柳広司、2011年4月第1刷、文藝春秋、1400円+税)から
                                 
時代設定は、昭和8年(1933年)春
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 「自分を大そうなものに見せる一番簡単な方法は何だと思うね?」
 周防老人は尋ねておいて、すぐに自分で答えを口にした。
 「自分から率先して額(ぬか)ずいてみせることだ」
 事情を知らない者は、それを見てこう思う。この人があんなにも畏(かしこ)まっているのは、額ずいている対象が途方もなく偉い存在だからに違いない。そして、その途方もなく偉い存在の近くにいるあの人も、きっと偉い人なのだ・・・・・・。
 但し、そのためには額ずく対象が一般の目に不可視の存在でなければならない。
 朔日会のメンバーはどうやら、今生天皇を御簾の陰に押し込み、国民の目から見えなくすることで、天皇の藩屏と呼ばれる華族の存在を”大そうな者”に見せようと目論んでいるらしい―。
 「連中はここに来て『陛下は現人神(あらひとがみ)であらせる以上、生身の姿を国民の前にさらしてもらっては困る』などと言い出しておるのだよ」
 周防老人は苦虫を噛み潰したような顔で言葉を続けた。 (P98、99)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
                         (2017年11月16日)
**************************************
**************************************
ところで「華族」とは?
                                
「新・日本のお金持ち研究」(橘木俊詔、森剛志、日経ビジネス人文庫、2014年1月初版)
(P185,186)から・・・
 
「 新政府になって士農工商の身分制度が廃止されて・・・旧支配者、すなわち二大政体(公家と大名)は華族として統合され、その下に士族と平民が置かれた。
 ところで、リブラ(2000)によると、当時の華族が427家(公家136家、大名248家、公家や大名と同格が43家)であった。その後、華族令が明治17年(1884年)に施行されたので、文字どおり華族が法律によって認められた日本の上流階級の象徴となったのである。
 ・・・・最初の頃は華族は公家や大名を中心にした旧支配階級がほとんどであったが、明治17年の華族令によって、国家に貢献の高かった人にも授爵の機会を与えたのであった。これを「勲功華族」と呼び、いわゆる薩長土肥出身の政治家や軍人が華族となったのである。
 華族は公爵、候爵、伯爵、子爵、男爵の5段階の区分となっていたが、授爵というのは国家に大きな貢献のあった人にこの5つの爵位のうちいずれかの新しい位を授けることである。・・・・平民であっても華族への道が開かれたという画期的な制度が導入されたことになる。明治29年(1896年)には経済人や商工業者への授爵も容認された。」
                           (2017年11月16日)
**************************************
 
**************************************
「『日本スゴイ』のディストピア 戦時下自画自賛の系譜
(早川タダノリ、2017年6月第4版、青弓社、1800円+税)     
・・・「テレビや雑誌でやたら目につく『日本スゴイ』の大合唱。/『八紘一宇』や『日本人の誇り』を煽る政治家まで現れた。/実は1931年の満州事変後にも、愛国本・日本主義礼賛の大洪水が起こっていた。/『日本人の礼儀正しさ』や『勤勉さ』などをキーワードとして、/戦時下の言説に、『日本スゴイ』という/自民族の優越性を称賛するイデオロギーのルーツをたどる。」
 
「神国日本のトンデモ決戦生活」
(早川タダノリ、2014年2月第1版、ちくま文庫、950円+税)
・・・「『決戦生活』、『決戦型ブラウス』、『決戦盆踊り』、『勝利の特攻生活』、「アメリカ人をぶち殺せ』・・・・凄まじい戦意高揚キャッチフレーズ群に塗りつぶされていく戦時下の日本を、当時の雑誌やパンフレットをもとにユーモアを交えた文章で楽しく紹介。神がかりプロパガンダと大衆動員・・・・しかし、これは近い未来の日本の姿ではないと言い切れるだろうか?」
 戦争の遂行のために、長い時間をかけて、マスコミ、教育が人々を洗脳していく。
                            (2017年11月18日)
**************************************
 
**************************************
「警察捜査の正体」
(原田宏二、2016年1月第1刷、講談社現代新書、840円+税)   
「終章 市民のためのガイドライン P299〜302 *以下抜粋です
B職務質問を受けたら
・あわてずに冷静に対応する。警察官と口論したり、その身体には触れてはならない(公 務執行妨害とされるおそれあり)
・所持品検査には応じる必要は無い(法的義務はない)
・警察官にバッグ等を手渡さない、探させせない、中を見せない
C同行を求められたら
・逮捕状の有無をを確認する(逮捕状がなければ任意)
・任意なら警察官を不用意に屋内に入れない
・理由を明らかにして、後日出頭する旨を伝える
D物の提出を求められたり、捜索・差押を受けたら
・必ず立ち会って、物があった場所を確認する(証拠の持ち込み阻止のため)
・許可状に記載されていないものは提出しない、写真撮影をさせない
E取り調べを受けたら
・聞かれなくても録音・録画を申し出る
・必ず弁護士へ連絡する旨、申し出る(当番弁護士制度を利用する)
F写真撮影、指紋採取、DNAの提出を求められたら
・逮捕されていない限り、絶対に応じてはならない(抹消不能)
・DNA資料(口内粘膜)は、逮捕されても提出してはならない(法的義務はなし)
                           (2017年6月21日)
**************************************
 
**************************************
「共謀罪の何が問題か」(高山佳奈子、岩波ブックレット、2017年6月第2版、580円+税)                               
「これまで日本はテロ対策として、・・・比較的迅速に国内立法を行って、これらを実施してきました。・・・その結果、現行法の下では、危険性のある物質や手段の取り扱いが、ほぼ網羅的に刑事規制を受けています。・・・予備罪・準備剤の類型も、諸外国に比べて多数存在していますから、テロ対策に穴はないのです。」(P37,38)
近年、犯罪が激減している事は、政府統計でも簡単に入れることができるできますが、・・・2015年の犯罪認知件数がピーク時の2002年の半分未満に減少した一方で、同じ時期に警察職員の数は約2万人増加しています。/ それと同時に、警察は、今まで摘発の対象になっていなかった行為の摘発を始めています。・・・共謀罪処罰を導入すれば、警察の取り締まり権限の範囲が大幅に増加します。・・・犯罪でなかったものを犯罪と呼び、警察の実績を上げる効果がもたらされるのです。」(P41〜43)
「個人の行動が監視されれば、権力側はこれを自己の都合の良いように利用できます。どんな人でも、情報操作を受ければ、正しい判断や行動が不可能になります。・・・人権や民主主義は根幹から失われるでしょう。」(P70) 
**************************************
 
**************************************
「スノーデン、監視社会の恐怖を語る」
(小笠原みどり、2017年4月第2版、毎日新聞出版、1400円+税) 
 著者の小笠原氏は、もと朝日新聞の記者。この本は、朝日新聞のここ20年ぐらいの内部の変化も述べている。日本ではまだ「プライバシー」の重要性が、まだまだ一般的には
認識不足だが、世界の水準は次のようだ。
 「米控訴裁判所は2015年5月、政府の通話記録収集は違法であるという初の司法判断を下した。これはNSAの大量監視は司法上の監督を要しないという一審の判決を覆したものであった。・・・・/ドイツとブラジルは、オンライン上のプライバシーを基本的人権とする決議を国連総会に共同提案し、 2013年末に全会一致で採択された。国連「反テロと人権」特別報告書は2014年10月、電子的な大量監視は複数の国際条約によって保障されたプライバシーの権利に明確に違反すると発表した。米国も批准している「市民的及び政治的権利に関する国際規約」は、個人が国の干渉なしに情報や考えを共有する権利を持ち、通信が意図した相手だけに届く事を保障している。・・・つまりNSAの監視は米市民だけではなく、世界に対して違法であり、国家は自国民だけでなく「それ以外の人々」の人々にも等しくプライバシーを保障する義務があることを、国際法が定めていることが確認されたのだ。」(P174〜177)            (2017年6月10日)
**************************************
 
**************************************
「スノーデン 日本への警告」(エドワード・スノーデン、2017年月初版、集英社新書、720円+税)                        
「メディアは大きな変革をもたらす力を持っています。今回の暴露において本当のヒーローは私のような内部告発者ではありません。ヒーローはジャーナリストたちです。」(P53)
「・・・プライバシーとは、悪いことを隠すということではありません。・・・プライバシーは自身であるための権利です。・・・隠すことがなければプライバシーの権利を気にする必要がないというのは、話したいことがなければ言論の自由は必要がないというのと同じくらい危険なことです。・・・言論の自由やプライバシーの権利は社会全体に利益をもたらすものです。」(P67、68)                   
                            (2017年4月26日)
**************************************
 
**************************************
「自発的対米従属 知られざる「ワシントン拡声器」(猿田佐世、2017年3月初版、角川新書、860円+税)                   
・・・「日本からも,長期にわたって有力シンクタンクへ資金提供が行われている。・・・ブルッキングス研究所には、2016年予算年度に、日本の政府系の資金としては、国際交流基金日本センターおよびJICA(国際協力機構)から各々25万〜50万ドルの資金提供を、日本大使館から10万〜25万ドルの資金提供を・・・・CSISには、日本政府が毎年50万ドル以上の資金提供を行っているが、・・・50万ドル以上との掲載があるだけで実際の金額は不明である。・・・日本に対して安全保障戦略への積極的な取り組みやTPPの締結の推進を勧告してきた『アーミテージ・ナイ報告書』は、日本政府の資金提供を受けているCSISから出版されているわけである。多くの日本企業もこれらシンクタンクに多額の資金提供を行っており・・・」(P95,96)。
 日本政府と多国籍大企業は、自らの政策を後押しさせるために、アメリカのシンクタンクを使い、その発言や提言がまるでアメリカ全体の意志であるかのごとく、マスコミに報道させている。   
 また、沖縄の基地についてこう指摘する。対中国の「一番の抑止力は沖縄・嘉手納の空軍であり、横須賀の海軍である。・・・海兵隊の抑止力というが、海兵隊は現在、1年のうち8ヶ月ほどは東南アジアなどを回っており、沖縄にいるのは年にわずか4ヶ月ほどである。・・・・有事の際の来援を可能にしておけばよいのではないか。・・・辺野古案撤回は・・・容易にとりうる政策変更である。」(P239〜241)           
                              (2017年4月2日)
**************************************
 
**************************************
「自由貿易は私たちを幸せにするのか?」
                                
(上村雄彦・首藤信彦・内田聖子ほか、コモンズ、2017年2月初版、1500円+税)
 
 アメリア大統領選に勝利したトランプ氏は、公約通り「TPPからの離脱」を宣言した。これに対して、日本の主要な新聞は「自由貿易を守れ」と主張した。
 この本は、私たちが思い込んでいる「自由貿易」と、21世紀の「自由貿易」がどれほど違うかを、具体的に示す。現在の「自由貿易」の交渉では、最重要分野は「関税引き下げ」ではなく、多国籍企業のための「サービス、投資、金融の自由化」になっている。
 2月下旬から3月上旬まで神戸でRECPが開かれた。この本は、アジア・オセアニア16カ国による「包括的経済連携協定」RCEP交渉が、TPPとどう繋がっているかを、わかりやすく解説する。(RCEPの報道、少なかったですね)。
 また、多国籍企業の規制をめざし、航空券連帯税や金融取引税など「国境を越えた税」も紹介している。航空券連帯税はフランス、韓国などすでに10カ国が導入している。日本の外務省でも去年11月、国際連帯税についての研究会が創設されたとのこと。これらをご存じでした?「知らないことはヤバイ」と実感してしまう本です。
                           (2017年3月5日)
**************************************
 
**************************************
「武器輸出と日本企業」
(望月衣塑子、2016年7月初版、角川新書、800円+税)       
・・・安倍政権下、2014年4月、武器輸出三原則が撤廃され、2015年10月、防衛装備庁が発足した。日本が「死の商人国家」へと大きく舵を切りつつある。一方、防衛産業の足並みがそろっているとは言いがたい。何が進行しているのか?
また、2015年12月には、武器輸出反対ネットワーク(NAJAT)も設立された。
                              (2016年8月4日)
**************************************
 
**************************************
スノーデン 衝撃インタビュー 
「日本での諜報活動と驚くべき世論操作」=ジャーナリスト小笠原みどり
2016年6月8日 Texts by サンデー毎日(2016年6月19日号)
 
▼1カ月で「メール970億件」「電話1240億件」収集
▼官庁から企業まで大規模盗聴「ターゲット・トーキョー」
▼三沢(青森)〜嘉手納(沖縄)日本に根を張る米国諜報網
▼日本の情報の盗聴源は大洋横断ケーブル
 
 本誌は前号で、元NSA契約職員・エドワード・スノーデン氏(32)への日本初となる独占インタビューによって、米国による世界同時監視システムを暴いた。引き続き今回は、米NSAが民間通信会社を抱き込んで行う監視と世論操作の驚愕すべき実態を伝える。
 
☆☆☆ 元CIA職員スノーデンは、2013年にNSAの世界同時監視システムを、世界に暴露した。それを描いた映画「シチズンフォー」が現在、公開中。   ☆☆☆
                              (2016年6月12日)
**************************************
 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「円安シナリオの落とし穴」(池田雄之輔、2013年12月第2刷、日経プレミアシリーズ、850円+税)から                         
・・財務省が外貨準備として保有している約100兆円(1兆ドル)相当の米国債から発生する年間約3兆円の金利収入である。これは所得収支の2割近くを占めている計算だが、為替インパクトはゼロである。なぜなら財務省は、金利収入をドルで受け取ると、基本的にそのままドル資産に再投資し続けるとされる。受け取ったドルを為替市場で円に換えるという「円転」(・・・)は生じないのだ。」(P99、P100)
 
→年間3兆円は、消費税収入1%強に相当する。この金利収入を使えば、消費税増税を減らすことができる。また、この3兆円を円に換えれば、円安効果も生じる。
日本の財務省は、日本のために仕事をしているか?     (2014年1月19日)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜