北陸本線に長いこと揺られて辿り着いたのは富山の発電所美術館。内藤礼さんの個展「母型」。天井の高い展示室全体が大きなひとつの作品だった。一見、何もない空間。気持ちを落ち着けてしばらくすると、少しずつ見えて来る。内藤さんの作品は年々かたちが無くなって行くように思う。こちら側の心が少しでもざわついていたら、そこに作品があることすら気づかない。しかしそれは、決してどこにあるかを探すゲームではなくて、“見える”ときと“見えない”ときがある、ただそれだけのこと。
靴下の足に美術館の床はひんやり冷たい。でも何か温かくてきれいなものに包まれた気分になった。