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スター・ウォーズ/エピソードI ファントム・メナス
The Phantom Menace
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 3作目である『ジェダイの復讐』からすでに15年以上の月日が経ち、《特別編》などでファンをさんざん焦らしておいた上で、ようやく公開されたこの作品。

 一言で言って、期待外れ以外の何物でもありませんでした。

 今までの三部作が溢れるほど多く持っていた魅力を、そのほとんど全くと言っていいほど、この作品は継承していません。
 物語が散漫かつご都合主義、そのくせ説明不足で分かりにくい。キャラクター造形が薄い。メカやクリーチャーなどのデザインワークに一貫性がない。バトルはどれも決着があっけなくて一向に盛り上がらない。――この作品は、旧三部作が構築してきた独自の世界の、その上っ面ばかりを再利用しているだけで、肝心な部分は引き継いでいないばかりか、むしろ破壊しているとも言っていいくらいです。
 もしこれを、始めから『スター・ウォーズ』とはまるきり別物の映画だとして観れば、ゴージャスな特撮などの力で、それなりに充実した内容のSFアクションとして楽しむこともできたでしょう。でも、私が求めていたのは、あくまでも『スター・ウォーズ』。あの世界ならではのワクワクするような高揚感、ゴツゴツしたリアル感こそ、ファンが待ち続けていたものだったはずです。

 どうしてこんなことになってしまったんでしょう。おそらくは、ルーカス監督始めとする制作者たちのそもそもの姿勢自体に原因があったんだと、私は思います。
 映像技術の向上に寄り掛かって、ただ派手に魅せること、(旧キャラクターなどを登場させて)悪い意味でファンに媚びること、そして何より、いったん「作る」と言ってしまった以上、一応はその義務を果たさなければならないということ。そういった、本来映画を作る上ではさして重要でないことばかりに力を注いでしまっていたために、「単純に観客を楽しませる」といういちばんシンプルかついちばん大事なことが、意識の上からすっぽり抜け落ちてしまっていたように感じられてなりません。
 そしてそれは、「スター・ウォーズならこれでも許される」という甘えの意識の反映とも受け取ることができます。

 もともとは全9作で完結の構想だった、というところが、いつの間にか全6作にスケールダウンしてしまったようですが、それでもあと2本残っています。第1作目からリアルタイムで観てきた世代にとっては、それでもやはり期待せざるを得ないところ。ルーカス監督には、もう一度初心に戻って、作っている自分が楽しいのではなく、観客を楽しませることを目指した作品作りに意欲を燃やしてほしいものです。



(00.06.27)