Text - Ｍｏｖｉｅ
| ストレイト・ストーリー The Straight Story |
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| どこまでも伸びやかで、美しく、そして暖かい。これは、そんな清々しさがいっぱいに満ちた、実に気持ちのいい作品です。まさに“癒し系”という言葉がぴったり来るような秀作ですね。 自分の余命がそう長くないことを悟った老人は、弟との１０年来のわだかまりを消すため、彼と再会する決心をする。しかし、やはり病で倒れたというその弟が住んでいるのは、５００キロ以上も先の田舎町。それでも「あくまでも自分ひとりの力で行く」と主張して譲らない老人が移動手段として選んだのは、時速１０キロも出ないオンボロのトラクターだった……。 この物語で描かれるのは、２ヶ月近くにも及ぶ大旅行の道程で老人が出会う、様々な人たちとの心の交流です。 主人公の老人はかなりの頑固者ですが、情に厚く、人生の機微に通じています。そしてその言葉の一つひとつが深い人生訓と箴言に満ちており、人々の心に道標を与えるのです。 この老人を演じたのは、惜しくもこれが遺作となってしまったリチャード・ファーンドワース。彼の演技がもう、たまらないほど素晴らしい。厳しさの中にも柔らかさと、そしてどこか憂いとを帯びた瞳や微妙な表情だけで、台詞なしでもその存在を雄弁に語ってきます。 この映画は風景描写が美しいのも特徴ですが、そこに彼が居る、というだけで実に絵になるんですね。単にキャリアが長いから、というだけでは語りきれない強いオーラのような貫禄というものを感じました。 ただ、ラスト、ちょっと唐突ともいえるエンディングを迎えてしまうのが不満といえば不満。でもそれさえも、いまこうして思い返している中では、心地よい余韻として残っています。 一本道を進んでゆくだけの旅を、決して退屈させずに最後まで見せる、メリハリの利いた演出の手腕もお見事。ちょっとお説教っぽいところもなくはないけれど、でもいい映画です。オススメ。 |
(01.02.07)