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スパイダーマン Spider-Man
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 アメコミの映像化というのはなかなか成功しないものですが、この作品も残念なことにその例に漏れず、ちょっと微妙な仕上がりになってしまっていました。誰でも存在を知っているヒーローを、誕生の段階から改めて描いていくというのは、限られた時間内だとやはり難しいのかもしれません。
 とはいえ見所は多く、幾多ある「失敗作」と単純に同列に並べてしまうほどに出来が悪いわけではありませんが、全体としてはバランスの悪い作品です。

 スパイダーマンが町中を跳ね回るシーンの躍動感溢れるアクションに関しては、文句の付け所がありません。少なくともこの部分を見る価値だけは十分あると思えるくらいです。
 しかし肝心のストーリーのほうがなんともタルい。物語の方向性が見えぬまま、細切れのエピソードがだらだらと続くので、上映時間そのものも実際以上に長く感じてしまいます。
 悪役のグリーンゴブリンが、キャラクター・造形とも魅力に乏しいのも大きなマイナス。単にキレてるだけで平気で弱者も傷つける、美学のない不快な存在なのはいただけません。ウィレム・デフォー自身は楽しんで演じていたかも知れませんが、『処刑人』の彼を見たあとではなおのこと物足りない。悪役が格好良くないとヒーローも引き立たないですよ。
 前半にあったギャグ漫画テイストが、後半以降すっかり影を潜めてシリアス一辺倒になってしまうのも、私としてはちょっと残念。糸を出す試行錯誤のシーンとか、食堂で転ぶヒロインを助けるシーンとか、ああいうノリ、すごく好きなんですけどね。

 ただ、ラストシーンの渋さにはしびれました。普通にハッピーエンドで終わってしまうのかと思いきや、いわゆるアンチヒーロー的な、ハードボイルドタッチの幕切れを迎えるのは素晴らしい。あのラストがなかったら、私のこの映画の評価はさらに下がっていたところです。

 聞いたところによると続編の制作はもう決まっていて、次の悪役はシュワちゃんになるとかいう噂も。クモジャンプ・アクションの新鮮味もそうそう続くものじゃないと思うのですが、そのあたり2ではどうフォローしていくのでしょうか。

(以下枠内、しょうもない話ですがちょっとネタバレ。反転してどうぞ)

 この映画でいちばん笑えたのはなんといっても、プロレスの会場に初めて現れた時の、試作型スパイダーマンですな。わはは、そのカッコじゃまるっきり単なる変質者じゃん! あれは意表を突かれたぞ。
 あと、ヒロインのキルスティン・ダンストに関して少々。いや、悪くはなかったんだけど……『チアーズ!』の時とかと比べると、なんというか瑞々しい可愛さに欠ける感じがしました。撮り方が悪いせいだと断定。それと、雨に濡れてシャツが透けちゃうシーンなんてのもあったけど、あれ、なんか必然性あったか……? 無駄なお色気に思えて仕方ないのだが。監督、悪趣味。

 (以上)



(02.05.26)