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少林サッカー Shaorin Soccer
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 別にストーリー紹介なんて必要ありません。もうタイトルのまんま、少林拳法でサッカーです。
 ただ、劇中で繰り広げられるのは、もはや「少林寺拳法」とかそういうレベルじゃありませんが。ちょっと想像できるような、凄いジャンプをする、ボールが当たった人が吹っ飛ぶなど、そういったレベルすら突破しちゃってます。
 ワイヤーアクションと特撮をフルに駆使した、破天荒なギャグ映像の連打連打、そして連打。旺盛なサービス精神とテンポの良さで、ツボにハマれば涙が出るほど笑えます。アニメでも再現の難しいギャグマンガの世界を、実写でここまで見事に実現しているのは、とにかくスゴイの一言です。

 ただ、そういったパワフルなギャグではお腹いっぱいになる一方、残念に感じた部分もいろいろありました。
 ひとつには、キャラクターの個性付けが今ひとつ弱く感じられたこと。登場人物が多いわりには、それぞれの得意技くらいしか分からず、描写がおざなりな印象があります。ライバルチームなんてほとんど記号みたいな扱いです。映像の力に頼った笑いがほとんどで、キャラクターや会話の面白さといった、コメディの基本的な部分が弱い。ドラマ面でも、「這い上がる弱者」といった熱いテーマを扱っているのに、今ひとつ感情移入しきれないのは、人物像の薄さのためでしょう。

 また、「汚らしさ」や「女の子の醜さ」といったものをむやみに強調する演出やギャグも感心しません。嫌悪感や悲壮感のほうが先に立ってしまって、笑うよりもむしろ気持ちが引いてしまいます。まあ、香港映画って昔からこういうノリではありますけどね……笑いの文化の差なんでしょうか。陰惨なイジメ描写も見ていて辛かったな。
 そんな中にあって、自らの醜さに悩む女性をギャグでなくシリアスに描いた場面は、物語に奥行きを与えていて良かったと思います。あれがなかったらそれこそ単なる薄っぺらなお笑い映画で終わってしまっていたかも知れません。

 いろいろ文句も付けちゃいましたが、おバカなことを力一杯やろう! というスタンス自体はすごく好きだし、爆笑したのも確かなので、評点としては6点には届かないものの5.5点、って所でしょうか。仲のいい同士で見て、積極的にツッコミ入れつつ楽しんじゃうのが正解。「強えぇぇ〜〜!!」とか、そういうのが好きな人ならまず必見です。
 なお、鑑賞の際は絶対、もう絶対に『吹き替え版』で見ることを推奨します。主人公を「コメディ映画の吹き替えならこの人」とも言える、山ちゃんこと山寺宏一氏が演じていることなどによって、面白さが倍増していますので。



(02.06.10)