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パール・ハーバー Pearl Harbor
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 扱われてる題材が題材だけに、公開前からいろいろと物議をかもしていたこの作品。その出来上がりについてもいろいろと芳しくない評判ばかり聞いていたので、正直なところ、ほとんど期待はしていませんでした。なのに観てしまったのは、ひとえにこれがジェリー・ブラッカイマー製作、マイケル・ベイ監督、そして音楽ハンス・ジマーの作品であるからに過ぎません。「コテコテの熱血映画」をお家芸とするこの御三方のファンである私にとって、この映画の鑑賞は、いわば義務のようなものなのです。

 そんな心構えで観てみた、その感想ですが……
「評判通りダメな映画だった」としか言いようがないですね、残念ながら。
 いくらブラッカイマー信者の私としても、これじゃあ擁護のしようもありませんよ。

 歴史考証のいいかげんさ、日本描写のデタラメさは、評判通り、酷いものでした。ひとつひとつ挙げていったらキリがないほど、突っ込みどころ満載です。
 でもこの映画は、そういうレベルで語るような作品じゃありません。それ以前にまず、「映画として面白くない」のです。

 物語の骨子となっているのは、親友同士の主人公二人とヒロイン一人を絡めた三角関係……の、ようです。少なくとも、そのつもりで撮ったらしいです。
 しかし、このシチュエーション作りがあまりにも陳腐。そのうえ心理描写などもおざなりなため、非常に薄っぺらく安易な恋愛話にしか映りません。
 そしてさらに問題なのは、その恋愛パートが、『真珠湾攻撃』という題材と、まったくリンクしていないということです。恋を引き裂く道具としてしか“戦争”というものを扱っていないので、ぶっちゃけた話、“戦争”でさえあれば何でもよく、そこへわざわざ『真珠湾』なんていうスキャンダラスな戦場を持ち出す必然性が少しも感じられないのです。

 こうなってくると、「なぜ今、真珠湾を題材にしたのか」という点が、いよいよ疑問となってきます。
 日本人から反感を買うことは容易に想像できるはずの『真珠湾』をあえて舞台とするからには、何かこの作品ならではの新たな切り口・語り口を期待するのが普通でしょう。しかし、そんなものはまるでなし。あくまで日本は顔のない加害者、そしてあくまでアメリカは可哀想な被害者という、通りいっぺんの描写がされているに過ぎません。そんな旧態依然の歴史認識、今どきアメリカの中学生でも持っていないと思うんですが……。
 歴史ドラマとしても恋愛ドラマとしても、際だったテーマ性は含まれていない。となれば、なぜ反感を承知で『真珠湾』を描かなければならなかったのか……。その意図がまるで掴めないわけです。

 この映画の“売り”のひとつである戦闘シーンは、確かに迫力充分で見応えのあるものです。また、M・ベイの演出自体はきびきびと小気味良いものだし、H・ジマーの音楽もいつもなから勇壮な雰囲気を盛り立ててくれてはいます。
 しかしなにぶんにも、肝心の脚本が冗長かつお粗末。見どころであるはずの戦闘シーンさえ無闇にダラダラと長いため、初めは衝撃的でも、だんだんと飽きてきてしまいます。後半以降はもう、「いったいこの映画はどこで終わるつもりなんだ」などと思いながら見ている始末でした。
 
 結局のところ、「派手な戦闘シーンを見せたい」という願望がまずあって、一般層にウケを取るために適当なラブストーリーをくっつけ、さらに話題性を持たせるために“真珠湾”という題材を深い考えもなく持ってきた……というのが実状なんでしょうね。
 本来なら2点でもいいところですが、爆撃シーンの迫力に免じて、1点上乗せ。



(01.07.24)