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M:i-2 Mission : Impossible II
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 とにもかくにも、主役を張ったトム・クルーズがカッコイイ、まずはこの一言ですね。
 アクション面でも、物語後半になっての敵地潜入以降は、たたみかけるような見せ場の連続。クライマックスのバイク・チェイスはもう凄まじいまでの大迫力で、スローモーションを効果的に多用するジョン・ウー監督お得意のアクション演出を、思いきり堪能させていただきました。

 でも、映画全体の総合評価としてみると……充分に期待に応えてくれた作品とは、ちょっと言い難いんですよね、残念ながら。
 まず、肝心の脚本にもうひとつ、工夫が足りなかったように思います。これといって意表を付かれるような展開もなく一直線に話が進んでゆくので、物語そのものに惹きつけられる魅力が感じられないのです。特に、敵地潜入に至るまでの前半部分は、少々退屈にさえ思えてしまったほどです。
 また、主人公以外の登場人物――すなわちヒロインや仲間や悪役などといった人々の性格付けや人物設定が、どれもあっさりし過ぎの感があります。それゆえ物語自体に、幅や深みといったドラマ性が生まれてきていないんですね。
 「アクション映画なんだから、ドラマ性なんてなくてもいい」という意見もあるかも知れません。でもやはり、アクションとドラマとを高いレベルで違和感なく融合させた作品をこそ、私は望みたいのです。何より、他ならぬウー監督自身が、過去にそれを何度も具現化しているのですから……『フェイス/オフ』などの大傑作で。

 しかしこの映画の凄さは、こういった致命的欠陥をいくつも持ちながらも、それでも観客をある程度以上まで満足させてしまう作品として成立していることです。
 それはやはり、ウー監督ならではの演出パワーあってこそのことでしょう。静と動、ゴリ押しとスマートさとを、巧みに使い分けることのできる彼の演出でなければ、この作品はもっとどうにもならないB級映画に堕していたはずです。

 アクション映画監督としてはすでに至高の域にまで達しつつあるジョン・ウー。願わくば次回作は、もう少し練られた脚本で、その腕を存分に振るってもらいたいものです。



(00.07.17)