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ロード・オブ・ザ・リング 旅の仲間 The Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring |
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異世界をその目で観て、そして感じる喜び、愉しみ。それを存分に満喫させてくれる作品です。 ファンタジーの伝説的名作と言われている『指輪物語』、その実写化とあって、この映画の映像のこだわり具合は並大抵のものではありません。見事に構築されたその世界は、画面の隅々にまで気が配られているのが分かり、見ているだけで頬が緩んでしまうほど。字幕に視線を移すのがもったいないくらいで、英語のヒアリングの出来ない自分がもどかしく思えましたよ。次に観る時は、絶対に吹き替え版にするつもりです。 映像にも増して素晴らしいのが、キャスティング。フロドを演じるイライジャ・ウッドの、悲哀に満ちた眼差し。ガンダルフを演じるイアン・マッケランの、老練な賢明さと暖かみに溢れた表情。アラゴルンを演じるヴィゴ・モーテンセンの、無骨でありつつも色気のあるたたずまい。そのどれも、この配役ならではという味わいを醸し出して、ストーリーで語る以上の存在感をキャラクターに与えています。もちろんその他の配役も、いかにも異形の者っぽいルックス……といったら失礼かもしれないけど、そういう雰囲気を持った役者を当てているのが実にうまい。 この物語が単なる見せかけだけの冒険ファンタジーに終わっていないのは、指輪の設定に絡んで、人の心の暗い部分も描き出しているからです。指輪を見た者は、その強大な力に魅入られ、誰もが凶暴で邪悪な欲望を引き出されてしまう。持ち主であるフロドは、善良であるがゆえに、そうした人々の姿に直面して苦しむことになる。悩む彼が次第に心を蝕まれていく過程を描くこともおろそかにしていない。ひいては指輪の存在にリアリティを生み、物語全体が奥行きのあるものとなっているわけです。私は原作は未読ですが、この構造はさすがによく出来ていますね。 ただ、3時間というのはやはりいささか長い。内容は充実していると思いますが、物理的に3時間が長いことには変わりません。どっちにしろ1回で語りきれる話ではないのだから、途中に中休みのようなものを入れてもらえれば有り難かった。理想を言えば、もっと細かく連続ドラマのような形でじっくり味わわせてもらいたかったところです。 他に細かい難点として、戦闘場面が繁雑で状況が把握しづらいことや、おざなりな描写で済まされてしまっているキャラクターも中にはいたということ(特に、ホビットの3人の仲間たちは最後まで区別が付かなかった)、などが挙げられるでしょうか。 しかしそうした部分を差し引いても、これだけの世界を具現化してしまったピーター・ジャクソン監督の手腕には、やはり一言「よくできましたっ!」と敬服の念を込めて言いたいですね。いやほんと、惚れ惚れしましたよ。 で、次回まであと1年、その次まであと2年〜? うー、そんなに待たされるのか〜、辛いのう。せめて半年くらいのスパンに修正してくれませんか? ダメっすか? (以下枠内、ちょっとだけネタバレ。反転してご覧下さい)
(以上) |
(02.03.06)